はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

感謝の会計

2012-06-05 16:04:40 | 女の気持ち/男の気持ち
 親友といえる友が私には4人いる。20代の頃の職場の仲間たちだ。それぞれが結婚してからは、自然と付き合いが遠のいてしまったが、定年を迎えた主人と一緒に私が宮崎に帰郷してから、また交友が始まった。Mさん、Jさん、Hさんはずっと宮崎、Kさんは福岡在住である。全員、70代になった。自営業あり、バツイチあり、夫婦2人暮らしあり、私とKさんは寡婦である。
 先日、私の退院祝いで久しぶりの食事会をすることになった。福岡のKさんは、御主人の墓参りもかねて参加してくれた。入院中、親友には本当に御世話になった。足を向けて寝られないと思うほど感謝している。料理上手のMさんはお節料理を届けてくれた。病院食に閉口していた私には、涙がでほどありがたかった。「買い物があるときは電話して。遠慮せんでいいのよ」との言葉にすっかり甘えてしまい、パジャマ、リハビリ用の運動靴など、あっという間にそろえて届けてくれた。
 仲間で決めたルールがある。費用は必ず割り勘にすることだ。しかし私の退院祝いのこの食事会は、お見舞いのお礼として自分に会計をさせてほしいと願い出た。少しもめるかな、とも思っていたが、すんなり受け入れてもらい、気持のいい食事会を終えることができた。
 「みんな元気にしていてね」とお互いに手を振って別れた春の宴だった。
 宮崎市 十河三和子 2012/6/2 毎日新聞k気持欄掲載

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