お盆も過ぎたのに、酷暑の日は終わりそうにない。今年は異常に早く、精霊様トンボを見つけたので、何か変と思いながら、子供の頃を懐かしんでいた。
お盆が近づくと、たくさんのトンボが、庭を低く飛ぶ。私はそのトンボを竹ボウキを持って追いかけるのが楽しかった。
そばで見ていた祖父がきまって「そんトンボは、とったらいかんど、精霊様を乗せて帰って来っとじゃかい」と言っていた。
祖父は末息子を20歳の若さで戦地で亡くし、遺骨も帰らなかった。そんな祖父の悲しみも分からなかった遠い夏。私はトンボと無邪気にたわむれていた。
宮崎県日南市 永井ミツ子(72) 2020/9/5 毎日新聞鹿児島版掲載
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