はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

神のみそ汁

2009-05-04 21:05:33 | はがき随筆
 「腫瘍マーカーが高いですね」。医師の言葉に不安をぬぐいきれないでいる。2年前、胃の不調を訴える夫に食道がんが見つかった。「このままだとあと1年…」。今は、もう存在しなかったかもしれない時を生きている。心配性の私を尻目に、楽天家の夫は超ポジティブに日々を楽しんでいる。花をたくさん植えてめでている。病院帰りに求めた花鉢も、昨年より多くの花をつけた。不安を打ち消すように見事に。容体を案じる私に、先生の言葉。「『神のみぞ知る』です」と。最近少しばかり耳の遠くなった夫は「神のみそ汁?」。私は吹き出した。
  出水市 伊尻清子(59) 2009/5/4 毎日新聞鹿児島版掲載



ハープよ響け

2009-05-03 22:08:47 | はがき随筆
 ハープ奏者で、友のMさんがつい、左腕を複雑骨折された。
 以前「頭の手術で視野が挟くなったみたい」と話されていた、難病だった彼女。腕の痛さはもちろん、心の衝撃や無念さはどれほどだったことだろう。
 私は彼女に、永遠の力と命を持つという「火の鳥」の詞を一心に書いて、贈った。
 かつて主催した出水市音楽ホールでの音楽・芸能祭や、国立病院などで「野ばら」「口ーレライ」などのすてきなハープ演奏をしてくださったMさん。「火の鳥」に込めた思いがかない、再び元気なMさんのハープ演奏が聴けるよう祈るばかり。
  出水市 小村忍(66) 2009/5/2 毎日新聞鹿児島版掲載


08年度のはがき随筆年間賞

2009-05-02 18:44:03 | グランプリ大会
年間賞に馬渡さん 見つけた病とのいい距離感

 08年の「はがき随筆」年間賞に鹿児島市慈眼寺町、馬渡浩子さん(61)の「腫瘍に命名」(昨年7月23目掲載)が決まった。表彰式は5月17日午後1時から、JR鹿児島中央駅前の鹿児島市勤労者交流センターである。馬渡さんに喜びの声を聞いた。

 受賞の一報に「冗談と思い、信じられなかった。はがき随筆はいつも気落ちする私を励ましてくれた」と話す。
 受賞作中の腫瘍は、30歳過ぎごろから馬渡さんの視界を脅かし始めた。視力低下や視野狭さくが進んだが原因が分からず憂うつな日々が10年以上続いた。
 視神経に癒着する腫瘍が見つかった時は既に6㌢大。「苦しくていつも死ぬ方法を探していた」。手術で約半分を取り除き症状は安定したが「まだ残っていることがずっと受け入れられなかった」という。
 手術から15年、還暦を迎え「よくここまで生きられたな、と。腫瘤をもう敵みたいに思いたくない」。何気なく命名した。
 デパートで呼ばれた時は腹を抱えて笑った。「憎くてたまらなかった腫瘍に助けられた気がして」。病とのいい距離感が見つけられたと思った。
 手術後に始めた投稿は10年以上。毎日ペンクラブ鹿児島の発足にもかかわった。「つらい時期に新しい友人ができ、生活に広がりをもたらしてくれた」と感慨深げた。
 2月に左ひじを骨折し、最近は気分がふさきがちだったというが「受賞で吹き飛びました。天の助けのよう」と相好を崩す。今後は「長い間、迷惑をかけ続けた夫への感謝をつづろうかと思います」と夫婦並んで話してくれた。【村尾哲】
 
病気との共生軽妙に
  馬渡さんの文章は、視神経にできた腫瘤に名前をつけて共生しているという、軽妙な内容です。
 私たちの「生・老・病・死」の悩みのうち、死は意識できませんから一応別にすれば、大変なのは老いとともに増してくる病気の苦しみでしよう。その病気といかに折り合いをつけながら生きていくかは、高齢者社会において避けては通れない問題だといえます。そのような大きな課題への対処を短くまとめられたところに感心しました。
 忌むべき腫瘍にお名前をもじった可愛い名前をつけ、デパートではぐれて、ご主人から、その名前で館内アナウンスされたというのもに微笑ましく、老夫婦の充実した生き方をほうふつとさせられました。
 文章は、大変なことを「大変だ」と表現すると案外、効果が薄れます。大変なことを相対化して表現されたところで成功しました。
 (日本近代文学会評議員、鹿児高大名誉教授・石田忠彦
  2009/5/2 毎日新聞鹿児島版掲載

年間賞作品
「腫瘍に命名」

 視神経に癒着した腫瘍と長期間、共生している。立ち退く気配など全然ないので、名前でも付けて仲良くしていくことにした。小さい存在であってほしいとの願いを込めて、本名から「子」を削りワタリ・マヒロと命名。何か「いわさきちひろ」風で、本名より良い感じ。
 先日、デパートで買い物中、夫とはぐれた。特売日ですごい人出。携帯は通じない。呼び出しを頼みたいけれど実名では、とためらっていた矢先「ワタリマヒロさん、お連れれの方が………」とアナウンスが。おお!
 よもや、こんな時こんな形で腫瘍の名前が役に立つとは。
  鹿児島市 馬渡浩子(61)










ダイエット

2009-05-02 18:16:35 | はがき随筆
 ダイエットに挑み、望んでいた結果が得られました。身長184㌢、体重74㌔。一時は91㌔あった体重も17㌔減で安定です。特殊なことはしませんでした。8分目の食事をとりダラダラと間食をしない。酒は断つ。夕食は軽くし、7時以降は飲食をしない。毎朝40分のウォーキング。デジタルの体重計を購入し朝晩欠かさず計量しました。地道に継続し半年から1年で成果が出ました。このダイエットで、思っていたほど自分が飽き性でなかったことと、大幅にやせたため余剰になった腹部の皮膚が象のように垂れてしまったことに複雑な思いでいる私です。
  霧島市 久野茂樹(59) 2009/5/1 毎日新聞鹿児島版掲載