はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

三つの花

2011-03-01 12:19:29 | はがき随筆
 毎年12月に、親せきのSさんが贈ってくださる洋ランの花。今年は濃い桃色の花で、美しく玄関を飾っている。
 ひょんなことからいただいたバラの花束。つぼみのバラは、薄赤と薄桃の花びらを少しずつ開き始めた。茶の間に飾って、その鮮やかな開花の様子を眺めている。小さなつぼみをいっぱいつけている庭の梅の木。一つ二つと小さな白い花びらを開き始めた。満開の日を楽しみに眺めている。
 玄関、茶の間、庭。それぞれの場所で厳しい寒さの冬も花を咲かせている。力強く一生懸命生きている。
  出水市 山岡淳子 2011/2/27 毎日新聞鹿児島版掲載

寒風摩擦

2011-03-01 12:12:58 | はがき随筆
 少年のころから「寒風摩擦」だと思いこんでいて、ある年齢まで気付かなかった。冬になると、海軍上がりの亡父は「遠州の空っ風」を物ともせず、やせた上半身もあらわに、文字通り乾いたタオルでせっせと肌をこすった。そんな姿を見るにつけ「大人の男とは常に己を厳しく鍛錬し、いざという時に備えるものなんだ」とおそれた。悪さをすると、しばしば平手打ちも食らった。そんな少年も還暦を過ぎて妻と朝のウオーキングの後に、首まわりを中心にキュッキュッとこすり始めた。半世紀を過ぎ、亡父の「乾布摩擦」がよみがえったのだろう。
  霧島市 久野茂樹 2011/2/27毎日新聞鹿児島版掲載

梅の散るころ

2011-03-01 12:07:30 | はがき随筆
 雨が上がり珍しく暖かい朝。散りこぼれた梅に2月の暖かい陽がさしている。
 妻の三回忌を迎えて一日二日にぎやかになった我が家はまた自分ひとりの過疎に戻った。85歳となり、まだ現役の開業医だが、余生をどう生きるか正直なところ、まだ迷っている。
 老いゆく日々の中で、体力はないし、それにつれて気力も衰えてくる。平均寿命も過ぎたことだし、納得はできるのだが、人生そう簡単に割り切れるものではない。
 毎日最高を尽くし悔いのないように生きたいと思うこのごろである。
  志布志市 小村豊一郎 2011/2/27 毎日新聞鹿児島版掲載