はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

流される妻

2011-03-08 11:07:39 | はがき随筆
 冬ソナのドラマ。燃え立つ熱気で始まった韓流ブーム! 我が家は、今も熱気むんむん。
 主人公は還暦を飛び出た妻。朝、新聞でドラマをチェック。ドラマは字幕スーパーで声の吹き替えはダメ。じかに韓国語を聞きながらでないと「ドラマにひたれない」と語気を強め、そばには韓国語必携会話ブックと韓茶、韓菓を用意。だれも寄せ付けない1人の世界にはまる。
 韓ドラに興奮した日は、足早にストアに駆け込み、キムチ鍋、ビビンバ、チヂミの韓国料理三昧でニンニクプンプン。
 近々、3度目の韓国上陸をもくろんでいるのです。
  鹿児島市 鵜家育男 2011/3/4 毎日新聞鹿児島版掲載

春よ

2011-03-08 09:47:31 | ペン&ぺん
 弥生3月。めっきり春めいて日差しが暖かくなりました。支局に、うれしい話題が届きました。
 県立隼人工業高校の電子機械科2年、橋裕太郎君(17)が今年1月のニュース検定で2級に合格したという話です。
 ニュース検定、略してN検。正式名称はニュース時事能力検定試験。新聞やテレビニュースを読み解く力を認定するもので、毎日新聞などが主催しています。1級から5級まであり、政治経済、暮らし、国際問題、社会・環境など幅広い分野から出題されます。
 2級は大学生・社会人の中級レベル。橋君も一度は不合格だったそうです。もともと、工業高校は普通高校に比べて社会科や公民の授業時間が少ないというハンディがあります。今回は自分でテキストに取り込むと同時に、1、2週間前から放課後1時間、社会科の先生と、過去の出題を解く特訓を続け、本番に備えたそうです。
 N検事務局は「団体受検した工業高校は、全国で3校。受検者は各級合わせて8人。工業高校の生徒の受検は少なく、2級合格は極めて珍しい」と話しています。
 N検2級の合格率は、通常4割から6割とされていますが、今回は2割強で、難易度がやや高かったようです。
 橋君本人は「見たこともない問題もあって、合格できるとは思わなかった。先生から『合格おめでとう。頑張ったね』と言われてもピンとこなかった」と言います。さらに「いつか将来的にはN検1級にもチャレンジしてみたい」と言っています。まずは、難関の2級を突破して、一足先に春をつかんだ橋君に拍手をおくりたいです。
 高校生の活動といえば23日にはセンバツ高校野球が始まります。まさに「球春近し」。
 鹿児島実業は、昨年秋の明治神宮大会で準優勝した実力校。思い切り力を出し切る姿を見守りたいと思います。
  鹿児島支局 馬原浩 2011/3/7 毎日新聞掲載

「小さな騎兵隊」

2011-03-07 19:05:05 | 岩国エッセイサロンより
2011年3月 3日 (木)

岩国市  会 員   林 治子

 散歩の途中。なんとなく道を右折した。しまった。向こうから7、8人の小学生が自転車に乗ってやってくる。ガヤガヤと大声でしゃべりながら、道幅いっぱいになっている。これでは避けようがない。胸がドキドキ。

 向こうも私に気が付いたのか、急に右端に一列になった。すれ違うちょっと手前でさっと敬礼し「こんにちは」と言った。後ろに続く子供たちも「こんにちは」と敬礼。あっという聞のさわやかな出来事。

 私も返礼し「ありがとう」と言っていた。みんないい子。私の思い過ごしたった。垣根の梅のつぼみも膨らんでいる。
 (2011.03.03 毎日新聞「はがき随筆」掲載)岩国エッセイサロン より

ガンダーラ回想

2011-03-03 10:07:56 | はがき随筆
 インド旅行に当たって、前回実現できなかったガンダーラ美術の代表の一つ、シャカ苦行像を拝顔するため、パキスタンのラホールに行った。街の喧噪とは裏腹に、静寂な展示室には、悟りを求めて断食し、極限の修行をしたシャカ像が待ち受けていた。この像だ! 身の引き締まる思いで感無量であった。
 売店にはシャカ苦行像のレプリカがあった。紙で覆い、布で丁寧に包んで持ち帰った。
 あれから5年。見るたびに、あの時の感激がよみがえってくる。それと、日本語の上手な学生ガイドは、どうしているのかそれも気になる。
  志布志市 一木法明 2011/3/3 毎日新聞鹿児島版掲載

ATMのぼやき

2011-03-02 17:00:22 | はがき随筆
 私はU銀行のATMです。時々カードや、通帳などが変な入れ方をされてメカが狂います。
 先日もトラブルがあり疲れました。ニット帽をかぶり、マスクをした客が、払込用紙を斜めに入れたので、機能停止です。私は「係員が来ます!」とアナウンスをして“使用中止”を点灯します。通報で2人の行員が駆け付け、1人がボックス内を見張り、責任者が数個のカギを使ってケースを開けます。
 わびる客に用紙は無事返りましたが、私は彼に内蔵をばっちり見られて悔しい思いです。
 客が入れ直した払込書には、清田と書いてありました。
  出水市 清田文雄 2011/3/2 毎日新聞鹿児島版掲載

春ですねぇ

2011-03-01 15:42:32 | アカショウビンのつぶやき
年明けから雑用に追われ、長い間ごぶさただったた「ひとりごと」。
やっと復活です。

気がつけば庭が賑やかになっています。
油断してるうちに、大好きなクリスマスローズは盛りを過ぎていました。


古株で名前も忘れましたが、淡いピンクで一番好きな花です、今年は花が少ないのが残念。


矮性で毎年この状態です。葉っぱ1枚で夏を過ごし、それでも健気に花をつけました。踏みつけそうで、今年は鉢に移したところ珍しく花芽がみっつになりました。


一昨年購入した株のうち、ただ一つ花が咲かなかった株「イエローシェード」。
緑がかった優しい黄色の花が咲きました。


一番元気なパープル系の「オリエンタリス」盛りを過ぎていました。


去年は真っ赤な花弁(実は萼)が見事だった「レッドシェード」何故でしょう…今年は色褪せた感じ。

名前は「クリスマスローズ」なのに、咲き始めるのは2月頃、不思議だなあと思っていたのですが、やっとその意味をネットで見つけました。

クリスマス・ロ-ズはノイガ-(ニゲル)と言う品種のものが早咲きで、クリスマスの頃に咲き、私たちが「クリスマスローズ」と言う品種は、キリスト教のレント(受難節)の頃に咲くので英名で「レンテンロ-ズ」と言われています。
レンテンローズの由来として四旬節(レント)の頃に咲くからなのですが、日本ではまとめてクリスマスローズと呼んでいます。

と書いてありました。なるほど、納得です。

クリスマスローズは、ガーデニングの本家である英国では、バラの次に人気が高い花らしいですが、寒さに強く強靱なクリスマスローズは、万年ビギナーの私にも育てられる有り難い花です。

by アカショウビン

友のお見舞い

2011-03-01 15:04:41 | はがき随筆
 鹿児島市に住む友が難病を悪化させ、救急車で福岡の大学病院に運ばれた。出水の友と2人で会いに行った。
 病室のドアをノックすると、彼女自ら迎えてくれた。部屋に入るなり二人の友は抱き合い涙した。「遠い所をありがとうねえ。あなたは、まあちゃんを亡くしたばかりなのに」「入院したと聞いて、ほっとけるもんね」。出水の友は4ヵ月ほど前に息子さんを長い闘病生活の末、亡くしていた。2時間近いおしゃべりに「疲れなかった?」「楽しくて明日にも退院できそうな気がしたよ」。
 じきに手術が待っている。
  いちき串木野市 奥吉志代子 2011/3/1 毎日新聞鹿児島版掲載

もうそこに春が

2011-03-01 14:53:29 | はがき随筆


 赤い実をいっぱいつけて自己主張していたナンテンやマンリョウが一粒もなくなりました。日に幾度となく飛んできては私を楽しませてくれるヒヨドリやツグミが見事に食べ尽くしてくれたのです。
 大木のクロガネモチも葉だけになっています。サザンカにはメジロが群れて来ては飛び立っています。ガラス戸越しのバードウォッチングにけりを付け、庭仕事に取りかかりました。土いじりを楽しんでいると、発芽のタイミングを計っているシャクヤクを見つけました。
 もう春は、そこまで来ているようです。
  鹿屋市串良町 角倉キヨ子 2011/3/1 毎日新聞鹿児島版掲載 写真はフォトライブラリより

ナマコ

2011-03-01 14:44:07 | はがき随筆
 隣からナマコをいただいた。陶芸に親しんでいたころ、釉薬のナマコを使って焼いた器の色と、目の前にあるグロテスクな姿の茶褐色の違いに疑問を持った。夫は酢ナマコがいいと料理をせがむ。つかみどころのないなまこに塩をふりかけながら洗う。ぬめりが抜けた下から、青みを帯びた灰色の美しい色が現れた。イボのような斑文もあるが、ナマコ色とは、これかと、しばし眺めた。
 薄切りにし、もぎたての橙酢で食す。夫は焼酎がうまいと顔をほころばせた。私はおいしさ以上に本物のナマコ色がみられたことがうれしかった。
  出水市 年神貞子 2011/3/1 毎日新聞鹿児島版掲載

ソバの収穫

2011-03-01 14:27:03 | はがき随筆
 去年9月、夫がソバをまいた。我が集落では作る人はいない。でも人のしない事をしたいと意気込んではじめた。楽しいはずもなく、苦労は覚悟の上。耕した畑に芽が出、白い花が咲く。やがて黒い三角の実になり収穫。太陽に5日間干す。
 年末、年越し用に精米所で粉に出来た。年が明けた今、跡継ぎ息子から「父ちゃんが入院したので、粉はひけない」と。
 さあ大変。別に探したが、どこもだめ。純粋の粉と評判が良く注文は多いが、利益は少ない。
 やっと遠方に粉ひき場があり、車で出発。今年もまた、ソバの収穫を夢見て奮闘する事でしょう。
  肝付町 鳥取部京子 2011/3/1 毎日新聞鹿児島版掲載 写真はフォトライブラリより

旅の抄その4

2011-03-01 14:01:34 | はがき随筆


 夜明け前、アブシンベル大神殿に向かう。近道は砂と岩で娘のペンライトに助けられる。
 4体の巨大なラムセス二世像に訪ねる。「何を考えておいでなの?」。けれど夕べ、めくるめき音と光のショーで怒濤の人生をうたいあげた王は、3000年の瞑想の世界に戻ってしまっていて口を開かない。
 右の方、王妃ネフェルタリの小神殿の奥で小鳥がさえずり始めた。いよいよだ。
 ナーセル湖から緋色の太陽がゆらゆら昇り始める。
 大神殿の至聖所に光が届く。
 「おーっ」。四方八方から声があがった。
  鹿屋市 伊地知咲子 2011/3/1 毎日新聞鹿児島版掲載 写真はフォトライブラリより

記憶

2011-03-01 12:50:07 | ペン&ぺん
 滑稽であり、かつ悲しい。
それが人生。
   ◇
 認知症施設の話。やや古い話だと聞いた。
 あるおじいちゃんは夕方になると、沈みゆく太陽に向かって敬礼するのが日課。「××一等兵、ただ今、戻りました」。すると、ヘルパーさんたちも、それに合わせ整列し「気をつけ」の姿勢をとる。ピンと伸ばした右手の先を、こめかみに当て「△△二等兵も戻りました」。居合わせた人の証言。
 「あたし、ショート・コントが始まったかと思いましたがよ」
 別の老婦人は、生命保険の外交員を長らく勤めていた。彼女の日課は、こうだ。
 パジャマ姿。左腕には現役時代に使っていたバッグ。朝から順番に施設内の各部屋を回る。「こんにちわ。わたくしは……」。外交員時代と同じ口調で、保険の勧誘に回る。毎日、毎日。まるで儀式のように。
   ◇
 映画「明日の記憶」をご覧になっただろうか。渡辺謙と樋口可南子が夫婦を演じた。若年性アルツハイマーになっていく夫。アフター・シェイブ・ローションを買って帰宅する。妻は「えっ?」と驚く。洗面台に夫を連れていく。戸棚を開く。同じローションが7、8本並んでいる。自分で買ったことを忘れ、何度も買い続けている。
 ラストシーンは、ひどく切ない。夫は妻の顔さえ忘れ、他人のように、あいさつする。
   ◇
 私事。
 先日、帰省した。実母は独り暮らし。74歳。買い物に出た。母はカートにゴマ風味ドレッシングを入れた。自宅に戻った。冷蔵庫を開けた。同じゴマ風味のドレッシングが2本入っていた。
   ◇
 忘れてしまいたい記憶は消せない。
忘れてはいけないことを忘れる。
それも、また、人生。

 鹿児島支局長・馬原浩  2011/2/28毎日新聞掲載

心に光を

2011-03-01 12:40:19 | はがき随筆
 今年1月、歌のうまい全盲のSさんに、マッサージをしてもらった。彼は「空や花の色も分かりません。歌うのがただ一つの楽しみです」と、肩を揉みながら話してくれた。私は話を聞き、彼の51年間のつらい人生に心を打たれた。
 彼の歌う機会を願う両親と本人に、私は「Sさんを主にした音楽会を計画したい」と相談。目の見えない彼は、顔を紅潮させ、頬が輝いて見えた。
 11月6日、薩摩川内市の国際交流センターで音楽会を開く。私は多くの人に支えられて生きてきた。Sさんの心に光をともす手伝いが出来れば、と思う。
  出水市 小村忍 2011/2/28 毎日新聞鹿児島版掲載

夢のミカタ

2011-03-01 12:30:29 | はがき随筆
 先日、鴨池小学校で立志式が行われた。講師は、薩摩川内市宇宙館の安藤和真さん。「夢のミカタ」という題で、講演された。その時のミカタの一つが、夢の味方という話だった。君たちの夢を応援してくれる人が周りにいっぱいいるよ、君の夢を語れば必ず助けてくれる人がいるよ、というメッセージは、私の心に強く響いた。そういえば、私も祖母や両親をはじめ、たくさんの方々に味方になっていただいた。よし、これからは私が、14歳になった娘の一番の夢の味方だ、と思った。
 夢の味方……たぶんたくさんの方々の胸に残ったと思う。
 鹿児島市 萩原裕子 2011/2/27 毎日新聞鹿児島版掲載

花の苗届けよう

2011-03-01 12:25:11 | はがき随筆
 昨年10月、花の種をいっぱいまいた。芽が出て、年末には小さな苗が育った。ポピー、ひなげし、ストック、カーネーション、ルピナスなどなど。
 郷里、隼人の実家に花の苗をリンゴ箱2個分送った。年末に妹もビックリした贈り物。亡き母に仏前に供えてもらうために。妹に花の苗を育てて咲かせてほしいと思った私の作戦。
 今、脊柱管の病気で両足がしびれている。Ⅰ年3ヵ月、毎日リハビリ通いだ。
 下半身、泥まみれになって育てた苗。元気になって墓参りに帰りたい。
  山口県光市 中田テル子 2011/2/27 毎日新聞鹿児島版掲載