はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

七草粥とイチゴ

2014-01-18 13:31:37 | はがき随筆

 七草粥の食材を求めにスーパーに入るとイチゴが目に入った。孫娘にと思い、買った。七草粥の食材は買わず、正月の残り物で賄った。2歳3ヶ月の孫娘は目に入れても痛くないほどにいとしい。高価なイチゴが酸っぱいと言っては笑顔で頬張る。
 じいじにも持ち寄るようにと孫娘はすぐに1粒のイチゴを大事そうに走って届けた。一つの小さな人間としての魂や知恵は立派に成長しており驚嘆した。
 イチゴは今は年中物。私には「根の花」。割安の時期に買う。孫娘よ、イチゴのように貴重に人様に愛される純真な道に進むことを望みたい。敬天愛人。
  姶良市 堀美代子 2014/1/18 毎日新聞鹿児島版掲載

ネコは王様

2014-01-18 13:05:26 | はがき随筆








 茶トラの猫「イークン」はメインクーンの血が流れているらしく、見かけた奥さんが「犬かと思った」というほど大きい。野性味たっぷりで、家にいるより外に出ている時間の方が長い。
 食事は一日に5、6回に分けて食べるのだが、その食事の要求の相手は常に私である。普段、イークンはガラス戸を自分で開けて出入りしているのだが、早朝時のオープンも私の役目。多くの場合、早朝4時前後に「外へ出るニャーン」と起こしに来る。ベッドに伸び上がり、私の頬を前足でなでるのだ。
 こうして私の一日は、イークン中心に回っている。
  西之表市 武田静瞭 2014/1/17 毎日新聞鹿児島版掲載 画像は武田さんのブログより

ピンクの喪中はがき

2014-01-18 11:42:16 | 岩国エッセイサロンより

    岩国市  会 員   山本 一

 喪中だが、例年の1割程度の年賀状が届いた。そういえば、あの1枚はどうなったのだろう。昨年11月に郵便局で喪中用のはがきを273枚買った。早速印刷するとなぜか1枚余った。
 パソコンで文面と宛名面を作成し、それぞれ印刷した。枚数は間違いない。やはり1枚多かったのだ。郵便局では数が合わなくて困つておられるだろう。
 翌日、買った窓ロヘ余った1枚を届けたが、「枚数は合っています」と言う。さらに「200枚の包みの100枚のところに、ビンクの紙が挟んであるのを取り除かれましたか」と聞かれた。
  「喪中はがきは書き添えしないほうがよい」と誰かに教えられ、印刷したものは見ないで、そのまま投函した。
 1枚はピンクの紙に印刷し、投函したことになる。慌てて集配局に連絡したが「それらしきものは見当たりません」との返事。
 その後どこからも連絡がない。老いのうっかリミスを思い出し、新年早々悩んでいる。  

   (2014.01.18 中国新聞「広場」掲載)岩国エッセイサロンより転載

陳列棚の仏たち

2014-01-16 10:22:41 | はがき随筆

 私が仏像収集に関心を持つようになったのは、1996年にインドを旅してからである。インドでブッダというと釈迦のことであるが、その像も苦行の像や瞑想の像、悟りを開いて説法する像、あるいは、涅槃像など、その姿に魅せられた。以後再びインドに行き、パキスタン、ネパール、敦煌などにも旅して仏像を収集した。でも、その多くは陳列棚の中で人目に触れることはなかった。ところが、昨年3月、子どもたちのすすめでタブレットを購入し、ブログを始め、連列棚の仏たちを世に紹介する機会ができた。既にアクセス数は5000を超えている。
  志布志市 一木法明 2014/1/16 毎日新聞鹿児島版掲載

ことだま日記一木さんのブログです

命の現場

2014-01-15 22:39:41 | はがき随筆
 私の母(95)は2000年秋から入院、入所の繰り返しで車椅子生活。時折見舞いに行く。すると大喜びで親子の話題は尽きない。「帰るから」と言うと「もっといてよ」と哀願。
 ところが昨年12月、脳梗塞が悪化し脳外科へ緊急入院した。ベッドに横たわり、寝返りもできず、目を閉じ、誰にも反応しない闇の世界へ。回復は望めず、今後の方針を話し合う事に。
 子供たちから感謝の言葉も聞かないうちに、来世と現世の境をさまよっている母。隣のベッドにも同様の方々。対応される医師、看護士様のご活躍に敬服します。正に命の現場である。
  肝付町 鳥取部京子 2014/1/15 毎日新聞鹿児島版掲載

巡る1年

2014-01-15 22:23:18 | はがき随筆


 バラの芽が赤く鮮やかだ。新年という暦が庭の草木を鮮やかに見せる。ビワの短毛に包まれた白い花がほんのり香る。梅のつぼみがふっくら。紫紅色の半球状についたジンチョウゲのつぼみも間もなく芳香を放つだろう。今年も花の香に浸れる年でありたい。幾種類のかんきつの花の香りからクチナシと香りは続く。秋はキンモクセイ。初夏から夜ごと香るヤコウボクは晩秋まで続き、道行く人の足を止めた。鉢や花壇にスズラン、月下美人など花の香りに寄せられてしまう。家庭菜園とこれらの手入れをしながら、今年は更に香りの草木を増やしたい。
  出水市 年神貞子 2014/1/14 毎日新聞鹿児島版掲載

うまい!

2014-01-15 22:17:04 | はがき随筆
 元旦は娘家族と新年を祝って、午後は神社詣でとカラオケに行くことになった。
 暖かく明るい正月で、神社もまだ人が多かった。西郷さんにお参りする人も皆にこやかだった。しかし日没は早く、いつしか小暗くなってしまった。
 カラオケを5人で順に歌い始めると時の過ぎるのが早い。2人の孫の歌を聞いていると、ひいき目もあってかうまい。アニメソングを次々と中2が歌い、今様を大学1年が。母親が3度も「潮騒のメモリー」に挑戦。
 さすがの私は夕焼け小焼け、ふるさと、芭蕉布だけ。皆のうまさに圧倒された。
  鹿児島市 東郷久子 2014/1/13 毎日新聞鹿児島版掲載

心に残る年賀状

2014-01-15 22:09:04 | はがき随筆
 今年も心のこもった年賀状をたくさんいただいたが、随友Tさんのものは特に印象に残った。Tさんはご高齢のためか、筆先やペン先の動きに少し震えを感じるが、はがきの両面に書かれた一文字一文字は丁寧で正確だ。年頭のあいさつの後に「思いやりと心づかい」が今年のモットーだという文に、お人柄がうかがえる。更に朱色で「午」と書かれた太い文字が紙面を飾る。また一つ心に残る年賀状が増えた。賀状に一行でも手書きがあればうれしいし、全てが直筆だと感嘆する。自分の賀状を見た人が〝捨て難い〟と思っていただけるよう工夫してみたい。
  出水市 清田文雄 2014/1/12 毎日新聞鹿児島版掲載

初詣の中学生に和む

2014-01-13 13:44:54 | 岩国エッセイサロンより
2014年1月13日 (月)

    岩国市   会 員   片山 清勝

 数人の男子中学生のグループ。自分のおみくじのご託宣を順番に読み上げている。
 そのたびに仲間同士で、大きな声で笑いながらちゃちゃを入れたり、胸を押したりし合っている。実に楽しそうだ。
 おみくじは、たとえ凶が出ても縁起が悪いと落ち込むな、大吉が出ても有頂天になるなという。
 内容をよく読み、反省すべき点は反省し、励ましの言葉として受け止め、日々努力を怠らないことが大切だ。
 おみくじは読んだ後、どうするのか。家に放置するなど、粗末にしてはいけない気持ちがある。そこで、神社の木に結び、神職の人にその後をお願いする。境内の木におみくじを結わえて帰って行った中学生たちも、3学期が始まった。ご託宣をどう具体的にこなして学年を仕上げるのだろうか。
 初詣の生徒らの生き生きとした姿に、良い年明けを感じた。家内安全を願うかしわ手に、例年よりも力が入った。

     (2014.01.13 中国新聞「広場」掲載岩国エッセイサロン)より転載

清掃

2014-01-11 12:44:11 | はがき随筆
 元日の朝、梁淵に集合との声がかかった。釣友5人で水神様の1年間のアカを丹念に落とした。水神様に焼酎をあげて、5人が思い思いに手を合わせる。私は「去年の大漁に感謝して、今年も5人がけがなく、釣りができること」を祈った。
 そして場所を移して、私たちは新年会を始めた。話題は3月末から始まるマテ貝取りで盛り上がった。アユ掛けの達人のNさんか、マテ貝取りはからっきしなのだ。川で馬鹿にされているTさんが、海では一番の取り頭だから不思議だ。
  出水市 道田道範 2014/1/11毎日新聞鹿児島版掲載

1本のツバキ

2014-01-11 12:35:09 | はがき随筆
 正月、子供の頃住んでいた所を訪ねた。広い庭と大きな家があり、庭には1本のツバキもあった。裏には松林がありその下に田んぼが続いていた。当時、フナ、ドジョウすくい、缶蹴り、かくれんれぼ、こま回しなど夕方暗くなるまで遊んでいた。母の呼び声でやっと家に帰った。
 今は家もなく庭は荒れ、松林もなく、子供の遊び声も聞こえない。静かだ。ただ1本のツバキが少しだけ枝を広げ残っていた。私たちの遊びを見ていたツバキだった。見上げると小さなつぼみをつけ寂しく生きていた。当時を知る唯一の証人。そっとツバキの幹をなでて帰った。
  出水市 畠中大喜 2014/1/10 毎日新聞鹿児島版掲載

サポーター

2014-01-11 12:27:57 | はがき随筆
 朝4時、薄明かりの山道をあえぎながら軽自動車がやって来る。コトリという音を確かめると、私は外に出て朝刊を手にする。「毎日俳(歌)壇」は毎週月曜日。「よしっ!」と小さくガッツポーズをして再び寝室へ……。間髪を入れずに「どうだった?」と妻。「うん。載ってた」「やったあ、バンザイ!」
 眠たい目をこすりながらも、自分のことのように喜んでくれる。投稿の道は、予想以上に厳しい。全国からの投稿者。ボツの日が延々と続く。でもでも、弥生さんという力強いサポーターのいる限り、ほへこたれはすまいと思っている。
  霧島市 久野茂樹 2014/1/9 毎日新聞鹿児島版掲載

冬晴れ間

2014-01-11 12:21:33 | はがき随筆
 昨年の師走は本格的な冬日が続いた。黒い雲が空を塞ぎ、肌を刺す冷たい北風が吹き、音もなく降る雨。
 そんな日が続き、久しぶりの快晴の朝が来た。 雲の蓋が取れ、突き抜けるような澄んだ空と、暖かな太陽の日差し。草木も生気に満ち輝き、家々の閉ざされた窓も開けられた。屋根瓦も光り、どこの家も所狭しと布団が干された。 
 いつもの晴れた日をこんなにも気持ちよく感じたことは、なかった。
 太陽のエネルギーと、優しさに包まれた一日であった。
 万物の深く息せし冬晴れ間
  出水市 塩田きぬ子 2014/1/8 毎日新聞鹿児島版掲載

「追加した願い」

2014-01-11 12:16:56 | 岩国エッセイサロンより
  
2014年1月10日 (金)

岩国市  会 員   片山 清勝

 氏神様の石段は長くて急。子どもは3歳くらい、その父娘の後ろに続いて上る。中ほどまで上がった時、息をはずませ「パパ、神様はどうして高いところにいるの」と聞く。何十年も参拝するが、思ったこともない質問に、これは難問と思った。 
 間をおかず「それは、子どもが仲良く遊んでいるのがよく見えるから」とパパは質問を待っていたかのように教えた。神は身近にいて子どもを見守ると教えたひと言。機に応じて出せる知恵を頓知という。これは物忘れ対策に役立つと直感、家内安全に急きょ、頓知の2字をプラスし初詣の柏手(かしわで)を打つ。


  (2014.01.10 毎日新聞「はがき随筆」掲載)岩国エッセイサロンより転載

「新たな一歩を」

2014-01-09 10:25:50 | 岩国エッセイサロンより
2014年1月 7日 (火)

    岩国市  会 員   吉岡 賢一

お灯明を上げ、打つ柏手になぜか例年以上に力の入るお正月。賀状にはさまざまな表情のお馬さんが新春を祝っている。ここにも1人、干支6巡を迎えたお馬さんがいる。 
 高らかなファンファーレで登場し、大観衆の前でG1レースを駆け抜けるサラブレッドにはなれなかった。白い息を吐きながら雪深い山で働く木こり馬ほどの馬力もなかった。華やかさや力強さとは縁遠い、地道でたおやかな生き方ではあったが、2人の子供を授かり、4人の孫に恵まれた。
 「無事これ名馬」といわれる人生もある。今年も無病息災を誓って……。 
  (2014.01.07 毎日新聞「はがき随筆」掲載)岩国エッセイサロンより転載