齢を重ねると人は爬虫類に戻る。カラパゴスのイグワナ同様、太陽の日を浴び暖機運転をしないと動かない。古希を迎えた老人の心は青春、まだ暗く寒い5時に家を出てトボトボと歩いて岡崎駅に向かう。6時11分発の電車で四国への旅立ちである。
青春キップで四国遍路、自分で決めた題目。延々9時間を越える列車旅、人生は苦なる釈迦の哲学を知るなら楽しみ、7回目になる。
大垣までは新快速、国鉄時代なら急行なる優等列車で駅停車を間引き快適に走行する。大垣から米原は各駅に停車するが駅間距離が長いので各駅に停車しても快速と変わらないと善意に解釈。JR東海の新幹線誘導経営戦略が見えるが口外しない。
交通の難所は不破の関のあった垂井・関が原界隈、不帰茶なる美濃茶の産地、役所の壁には朝井リヨウの直木賞受賞の垂れ幕が見える。
米原から姫路は新快速、相生で乗換え12時38分岡山、定番のマリンライナー31号で13時20分四国坂出に到着。瀬戸大橋線には独特の車内雰囲気を感じる、巨大橋を完成させた西洋科学理論に対する一抹の不安なのだろうか。
13時30分の予讃線下り快速サンポート南風リレー号で観音寺、伊予西条で乗換え15時55分に石鎚山駅到着、富士山・月山・立山・白山・大峰山・御嶽山・釈迦ヶ岳・大山と共に霊山である石鎚山の役小角山岳修験の総本山・64番前神寺を打つ。自宅を出てから10時間は越えている。無事到着できた事に感謝感激。
17時3分のワンマンカーで一駅の伊予西条に戻り、駅前の四国鉄道文化館・十河信二記念館の硬券入場券を300円で購入して見学、JR四国の駅長帽子を被り〇系新幹線の前で満面に笑みを湛え写真に納まる。賛否両論の嵐の中、青春時代の夢の200キロ東海道新幹線を完成させた西条市長だった国鉄総裁の業績を讃える。
320キロはやぶさ、500キロ超伝導磁石浮上式中央新幹線は神を恐れぬ万物の霊長の暴挙でナイトメア、他に成さねばならぬことがある。己唯足るを知る仏教思想が大切と思うのである。
コンビニで焼酎と弁当を調達、駅前旅館のホテル青木に投宿、弥生25日の夜が深ける。