高科正信先生の三回目の授業は「リアリズムの手法」がテーマです。
前回は「ファンタジーの手法」で、空想世界・非日常の話でした。
今回のテーマ「リアリズムの手法」では、現実・日常の話になります。
まず紹介されたのが『大阪ハムレット』森下裕美 2006年(双葉社)
大阪の岸和田が舞台となった人情話で、映画化にもなっています。
どこにでもいる無名な人々の日常をすくい上げて、丁寧に物語がつくられています。
その気持ち、よーわかる!と思う書き方をされていて、
高科先生も思わず「さすが、森下裕美!」と絶賛されていました。
『わたしが妹だったとき』佐野洋子 1982年 (偕成社)
短編集の中の『汽車』は お風呂を汽車に見立てて、亡くなったお兄ちゃんのことを書いています。
亡くなったお兄ちゃんと汽車に乗って遊ぶというのは、ファンタジーではないと書けないお話です。
『ぼくが弟だったとき』森忠明 作・牧野鈴子 絵 1985年 (秋書房)
こちらはファンタジーではなく、お姉さんが亡くなった実体験を書いています。
森忠明さんは高校三年生の時に書いた作品で寺山修司に見出され、児童文学作家で劇作家でもあります。
高科先生が大好きな作家の一人だそうです。
『ムギと王さま』エリナー・ファージョン 1959年 (岩波少年文庫)
短編集の中の『サン・フェアリー・アン』は第二次世界大戦の頃が舞台です。
お城に住む母が娘に人形をプレゼントしますが、その人形にまつわるお話。
エリナー・ファージョンは多くの作家から人気があります。
高科先生の大好きな絵本作家・片山健さんの作品も紹介されました。
『コッコさんのおみせ』 片山健 1988年(福音館書店)
『コッコさんとあめふり』 片山健 1991年(福音館書店)
『おつきさま こっちむいて』片山令子 文・片山健 絵 2006年(福音館書店)
コッコさんは片山健さんの娘さん。コッコさんの日常が描かれています。
リアリズムの話では、ありふれた日常に潜む幸福を追求できます。
これはファンタジーの話では書けません。
ファンタジーとリアリズム、どちらが自分に向いているか考えて書いてみて下さい。
絵本を書くには、自分に無いものは書けないので、自分に無いものを取り入れるセンス(感性)を身に付けることが大事です。
常にアンテナを広げてくださいね。と 高科先生はおっしゃっていました。
本日は三時間授業です。
最後の一時間で、文章を考える授業をしました。
『ムーミン』に出てくる一枚の挿絵を見て文章を考えます。
絵本作家は先に文章があって、絵を描くことが多いですが、
本日の授業では、絵から文章を考えてみました。
三十分ほど考えて発表しました。
絵を見るだけでは分かりにくい、ムーミンの心情が書かれているといいですね。
前回の課題「くる日もくる日も北風の吹く寒い山の中に、熊の家がありました」という一行から始まるお話を考える。は
安房直子さんの『北風のわすれたハンカチ』の一行でした。
安房直子さんはこの一行から、遠い寒い山にある一見の熊の家と、そこに住む孤独な熊の姿が、はっきいりと見えるようになったのです。
と『ものいう動物たちのすみか』2004年(偕成社)の中 「はじめの一行」で書かれています。
また、はじめの一行がとても大切で、作者も読者も、作品の世界にするりとはいりこみたいのです。ともおっしゃっています。
【次回の課題】1月18日(水)提出
テーマ 「わたしの冬のすごしかた」
衣食住や冬の景色など、お気に入りな冬の過ごし方を書いてください。
枚数は自由です。
次回の授業1月25日(水)は「ナンセンスの手法」がテーマです。
ナンセンスといえば長新太さん。長新太さんの絵本を沢山紹介していただきます。