模型王国静岡県に在する老舗模型メーカー”富士見模型”が、550マラネロのバリエーションとして575Mに続いて市場に送り出した1/24プラスチックインジェクションキット、それが目下製作中のフェラーリ・スーパーアメリカ、当ブログでは法拉利超亜米利加と称されるそれである。
製作作業としては、前回までに外殻たるボディーに関しては、研ぎ出しと呼ばれる日本の模型市場独特の”漆仕上げ”的技法まで済ませている。又、無機質なる機械と食物連鎖の頂点に君臨する霊長類最強の種族”人間”との唯一無二の接点を掌る”コックピット”に関しても、メーカー側による勝手な解釈による「ユーザー側が施さねばならないディテールアップ」の名の下にその負担を強いられる改修作業には、右往左往を伴いながらも外殻同様に佳境を迎えている事である。
約二か月、一日24時間という時間的に有量なる我等にとっては、実に1704時間という貴重なる時間、その製作からは放置されていた本キットであるが、漸くここに来て”機は熟した”とでも言おうか、兎も角も製作再開の運びと相成った。外殻・内装と来れば、今回は当然基盤、即ち軸上重量千数百kg、車両価格約2000万の車体を、僅か葉書四枚の接地面積で支えながら、500psの出力さえも支えきってしまおうというシャーシを再現するパーツ群の構築に突入した。残念ながらキットは完成させても動力源が存在しないので動きはしないのだが・・・・
キットのインストでは、シャーシの構成に関しては、全て図解で指示されている。即ち、シャーシパネルに先ず、付属の鈍色に輝くビス二本を使用し、フロントアッパーアームの役を担うアッパープレートをシャーシに固定。その際左右アップライトパーツを上下で挟み、左右アップライトのトー角に関しては、ステアリングロッドパーツを左右間に介在させる事にて固定する、と、いう構造にて再現されるのである。
設計の方向性は、実車の懸架装置のスケールダウンには無く、如何に簡単に且つ確実に固定でき、更に加えて尚かつステアリング構造を持たせるかに有るのであり、その意味では合理的すぎて、スケールモデルらしさは大幅にスポイルされていると難じざるを得ない。
ただ、こうした再現性の低さは、インナーフェンダーというパーツにより、恰も亀や鼈といった生物が、自身の甲殻の中に弱い部分を隠匿し自己防衛手段とするかの如く、完成後は灯下にて凝視しない限りは、恐らく如実に露呈することは無いと考えられ、その意味では、メーカー側が安直にパーツ数の削減に走っているとは言い切れないのかもしれないという、筆者自身の印象としての好意的解釈を少なからず有し見ることも可能であることを、念のために付記しておく。
さて、その小人(一部の大人も含む)男性の生殖器隠蔽機能付余乗包皮の如きインナーフェンダーパーツの固定であるが、実に正確に固定用の凹凸が設置されており、そこに填め込むことで、メーカーが意図した位置に正確に固定することが可能になっている。
ただ、今回作業したところ、将来的に完成した後に固定されるべき展示台(ケース)への固定用ボルトを受けうる六角ナットを、シャーシの前後二箇所に設置したのであるが、この装着位置が丁度インナーフェンダーの固定位置と交錯したので、やむを得ずインナーフェンダーパーツの後部隔壁(丁度コックピットダッシュボードにモールドされたオーディオの裏辺り)の一部を、電動切削工具ことリューターのカッタービットを用いて、約5000rpmの回転にてパーツの一部を切削し、先述のナット部との干渉を回避させてある。
尚、凹凸をハメ合わせることが、インナーフェンダーとシャーシとの組み立てに於ける重要な作業ではあるのだが、これを更に確実に固定すべく、今回はシャーシとインナーフェンダーの接合面の隙間に、流し込み系接着剤と呼ばれる有機溶剤100%にて主剤はアセトンという接着剤を流し込んで固定してある。外殻にこの接着剤を用いると、時として経変でへこみ・歪み・肥大等のトラブルを招く可能性があるが、今回は完成後は殆ど(或いは全く)見えない部部での使用故、接着するパーツの接着面に接着剤が流れ込み、二つのパーツを溶かしながら融合される事から来る接着強度の頑強さを優先して使用している。
さて、フロントセクションの作業を終え、今度は後部サスペンションの製作であるが、簡略されすぎたフロントサスペンションの更に上を行く簡素化が図られており、左右独立懸架構造の再現性などは微塵も為されておらず、単に左右後輪を接続する銅棒(シャフト)を正確に且つ簡単に装着する事に主眼が置かれており、インナーフェンダーの装着以外に作業というものは存在しない。
簡素化は、キット製作に挑む際のスキル差から来る難易度を、良くも悪くも低くすることが可能となり、それによって初心者や入門者にとっては、確実に完成する可能性が大幅に上がること故に、そういった向きには歓迎されうる要素かも知れないが、一方で簡素化することで失われるものも沢山存することに留意せねばならない。即ち、精密感やリアリティ、或いはユーザー自身の「組み立ててる感」という要素がスポイルされてしまうのだ。東西冷戦下の核ミサイル発射の仕組みしかり、合コンで一番注目され得た美女との一夜限りの倒錯的交いしかり、ロボコンがロビンちゃんを差し置いてガンツ先生から100点の評価を受けることしかり、簡単ではあってはならない、簡単であることで逆に不都合が生じる事象も世間には多数存するのであるから、メーカーには、キットという製品にユーザーが何を求め金銭を投じるのかを、今一度吟味していただくよう強く求めたいところである。
次に今度は、シャーシ裏面、即ち完成後に車体を天地逆に顛倒させると露出し得る各種モールドが施されている面の処理である。一昔前の富士見模型が、最も開発に勤しんだ企画に”エンスージアストシリーズ”というものが存在したが(今も製品としては存在しているが、新規開発品はランチャストラトスが最後であったと記憶している)、かのシリーズに於いてはボディー製作の数倍の労力を要するセクションであったシャーシ製作も、ここまで簡素化されてしまうのかと、製造発売共に同じメーカーでありながらの激しいギャップに驚愕さえ感じる構造を為している。あたかも、同じ人物でありながら、結婚前はガードルだ紐パンだ赤だ黒だと凝りに凝ったアンダーウェアで、夜のベッドという名の闘いのジャングルに誘って来た猛獣が、月日が経ってみれば今時小学生でも履かないようなデカパンにらくだ色のババシャツ着込んで、本来闘いの四角いジャングルたるクイーンサイズのWベッドでさえも、ゴビ砂漠のプロトケラトプスの卵の化石位しか話題が無いが如き荒涼とした空間へと変貌させてしまった私の伴侶の如きである。
而して、その作業であるが、その簡素さに併せて、下塗りも無しに塗装を施したのみである。後部デフケースカバーのみ別パーツとなっているが、それ以外はマフラーでさえ一体パーツで構成されているだけなので、本来はその煽りで塗装、即ちマスキングを施しての塗り分け作業が必須となり得るのであるが、メーカーに敬意を表してフリーハンドで塗り分けたのみである。フリーハンド故に「手作業故の味わい深さが漂う」と感じていただければ幸いである。順序としては、先ず排気管レイアウトに沿って、0.5mm径のブラシにて3倍希釈のGSIクレオス・スーパーメタリックのスーパーステンレスをo.1kPa程度で吹き付け、遮熱板部分にはアルクラッド2のアルミニウムを原液のママやはり0.1kPa程度でノズルをやや絞り気味に吹き付け、更にテールエンド近くのマフラーの消音材(タイコ)部分には、先述のステンレスの上にタミヤエナメルのチタンシルバーを使い古したナイロン毛の平筆にてドライブラシし、加えて仕上げに前作ムルシエラゴに於いて初使用し好印象だったウェザリングマスターを使用し、若干の焼け表現も加えている。
簡素すぎる構造へのささやかなるアンチテーゼというと大袈裟であるが、単純だからこそ一寸した工夫によってでさえ独自性を醸し出すことも可能になるものである。尚、完成後は排気管関係は、その90%以上が可視領域から隠匿されてしまう故、今回のような工夫は自己満足を通り越して、単なる取り越し苦労と言えるかも知れない。
シルバー系の塗装を済ませたら、今度は0.2mm径のブラシにて、先のシルバー系のはみ出しを消していくようにエア圧を0.04kPaに落として4倍希釈のGSIクレオスのスーパーフラットブラックを吹き付けていき、最後に大きな面積は0.5mm径のブラシにてエア圧を0.08kPa程度に上げてスーパーフラットブラックを塗布して完了と相成った。尚画像のように若干のカブリや色斑の発生は、メーカーの意向に併せて、ユーザー側としての見愚思斉的に粗雑な作業の結果である。
さて、最後に残るはタイヤとホイールである。本来の超亜米利加のホイールは、575Mに装着されたものとは異なり、2ピース構造の18インチホイールが採用されているのだが、キットでは残念ながら575Mと同じ1ピース構造のホイールが用意されるのみ。こういった抜け目の在り方が、富士見模型の富士見模型たらしめるところなのであるが、自動車模型に於いて「タイヤ&ホイール」「マーキングデカール」の二点は、非常に改修難度が高い部位である。本キットにはマーキングが殆ど存在しない為、後者の難点は存在しないに等しいが、前者のタイヤ&ホイールに関しては、複製技術や旋盤等の工具を用いての同形状同サイズのものを複数用意する必要がある点で、難度が高いと言える。筆者も、そうした高度な技術や専門的なツールは有しておらず、やむを得ずキットのパーツをそのまま利用することと相成った。ただ、そのまま利用したのでは、それはそれで未消化感が不可避となることは明白であり、そうした事情から一旦パーツに施されたメッキを剥がし、塗装することによってキットノーマルとの差別化、575Mとのパーツの差別化を図ることとした。と言ってもスポークやディッシュの形状を変更するわけではないので、結局はパーツの共有化の呪縛から逃れられるわけではないのだが・・・。こうした事情から、ホイールはノーマルのシルバーに対して、今回はゴールドに塗装されているのである。
ゴールドは、塗料にての再現性が非常に難しい色の一つであるが、昨今は各社から様々なゴールドがリリースされており、またシルバー系の上にクリアーオレンジ+クリアーイエローを吹き付けることでのゴールド表現も含めれば、選択肢は意外と多い。各種検討した結果、今回はフィニッシャーズの青金と呼ばれるゴールドにて塗装を施してある。黒にゴールドと言えば、かのJPSロータスのキャラクターカラーでもあり、そうしたイメージを彷彿とさせてしまう可能性が有ることは否めないが、配色のバランスとしては、個人的に無難な組み合わせであると考える。
また、タイヤホイールと共に脚下と呼ばれる部位のしての一員を担っているとも言うべき「ブレーキローター&キャリパー」のパーツの存在を忘れてはならない。キットではホイールのスポークから露呈する事を見越し、パーツの表側のみキャリパーパーツがモールドされている。一旦全体をクレオススーパーメタリックのスーパーステンレスを吹き、乾燥後にキャリパー部分に表側だけ、タミヤエナメルのチタンゴールドにて塗装してみることにした。
余談であるが、よくアクリル=水性系・ラッカー=油性orラッカー系・エナメル=エナメル系と模型分野では大雑把に区別されることが多いのだが、タミヤのエナメル塗料は、実際にはアルギド変性アクリルと呼ばれる樹脂を主成分とする塗料であり、数十種類にも及ぶ塗料の一つに過ぎず、又、カテゴリーとしてもエナメル系ではなくあくまで合成樹脂塗料の一つである。ついでに言うと、タミヤの缶スプレーは一般にラッカーと呼ばれ、水性塗料はアクリルと称されるが、実はどちらもアクリル樹脂を主体とする合成樹脂塗料であるのだが、ラッカーと称される缶スプレータイプの方には、塗料の世界でラッカーにカテゴライズされ得るニトロセルロースが含有されているところから、ユーザーレベルでの混同を避ける意味も含めて、水性をアクリル、缶スプレーをラッカーと称することが一般的となっている。尚、他の模型用途に特化している塗料に関しては、タミヤ以外のメーカーは概ねその主成分を「合成樹脂塗料」と表示するのみで、ユーザーレベルでは中に何が入っているか知る由もない。これは情報開示が企業の必然的姿勢として求められる現代社会に於いては由々しき問題の一つであるといえなくもない。是非とも全盛期の愛染恭子の如く、公衆の前にては何事も隠匿することなく開示していただきたいものであるが、開示されたことによってユーザー側の環境に何かしらの異変が起きるかと言えば、やはり愛染女史のそれが環境を変えうるには至らなかったこと同様、大した影響はないと推察されるので、そういう意味に於いてはどうでも良いことと言えるかも知れない。
少々余談を交えてしまったが、上記の如き工程を経て、漸くシャーシの製作が終了した。
改めて今回の作業を回顧してみて思うのであるが、果たしてメーカーサイドは「ユーザー」側が何を求めているのかを考究しているのであろうか。まさかとは思うが、車種先行でユーザーに興味を持たせ、出荷した以上後は問屋任せ、利益が上がればそれで良いという考え方に堕してはいるまい。そのそも、今回購入し製作を開始した超亜米利加に限らず、製品はメーカーとユーザーの関係を、相互にその存在を認識させうる重要な接点である。ユーザーがモデラーとしての自分を認識すると同時に、その製作するキットに施された数々の情報から、それを設計したメーカー側の開発者、更にはシャフトを鋳造した金属加工業社や、パッケージやインストを製造した印刷会社やそれらを二次元情報化させたデザイナーやキーパンチャー等々の諸人の存在を認識することが出来るのである。それは言うなれば出遭いの一つであり、否、出遭いそのものであると言え、袖触れ合うも多生の縁という仏教語から来る格言もあるように、マルティンハイデッガーが「mitsein(共同存在)」と表現した様態というものかもしれない。しかしながら、そこには、やはりハイデッガーが指摘するように、ユーザーが大手掲示板のような巷に流布される様々な流言飛語や、或いはメーカーが自分の立場のみを優先させるかの如き態度で居るならば、決して双方の共同なる様態に於いて、真の意味での妥当な線へ着地することは難しいのでは無かろうか。
斯様なことをふと考えるとき、筆者としては、今後も存続し続けて欲しい模型製作という趣味のカテゴリーが、今後益々衰退していくのでは無かろうかという不安に駆られるのだが、製品としてのインジェクションキットのパーツの簡素化合理化も、そうした一部マニアと呼ばれる愛好家の方ばかりに目を向けず、初めて作る人でも完成させる喜びを知って貰いたいという、或る意味ファミレスのウェイトレスへの、そのコスチュームから誘われる潜在的コスプレ婦女子趣好の琴線を弾くことから始まって、キャバクラ→乳揉みパブ→ピンサロ→ヘルス→イメクラ→マットヘルス→特殊浴場と最終的な目的地へと誘わんとするかの如きメーカー側の努力の表れが、売れ線車種だからこそ簡素化合理化という姿勢であると、取り敢えずは好意的に解釈して、今回の結びとさせていただくことである。
次回は、再び行程を外装に戻して、完成に向かって地道に歩を進めたいことである。
以上。
え~、実際にはですね~、今回の作業は、
インストの指示通りパーツをくっつけて塗っただけです。
あまりに簡単すぎて、自分が組み立ててるのがプラモなのか分解したミニカーなのか判らなくなりそうなくらい簡単です。今回の作業の中で、最も時間が掛かったのは
エアブラシの洗浄
だったりするってのは嘘のようなホントの話。ネタにもならんので無理矢理原稿用紙10枚でレポートしてみましたが如何でしょう?日光の猿でも出来そうな作業を、あたかも物凄いハイレベルな作業のように錯覚していただいたでしょうか?wそんなもん書く暇有るなら製作進めろよって感じですが、仕事場にプラモ持ち込めるんならねぇ(笑。