枯雑草の写真日記2

あの懐かしき日々を想いながら・・つれずれの写真日記です。

壮大な飛翔・・ 安芸、安国寺不動院金堂

2012-02-20 | 古い神社や寺で
          広島市東区牛田新町にある親日山安国寺不動院。
          境内の中心にある金堂は1540年頃の建立のものを、戦国時代、この寺の住持
          であった、恵瓊(えけい)が山口より移築したとも伝えます。
          この安国寺恵瓊と呼ばれる僧、羽柴秀吉の毛利攻めの際、毛利の使僧として、
          秀吉と渡り合った人物。関ケ原では、西軍に組したため、悲劇の最後を辿りますが、
          この安芸の国の中心に、多くの文化財と思いを残す運命を担うことになります。

          今にも天に飛び立つような、美しい反りをもつ屋根、複雑な軒下の組物、花頭窓、
          波形欄間など、東京東村山の正福寺地蔵堂、鎌倉、円覚寺舎利殿、下関、功山寺
          仏殿などとともに共通の特徴をもつ、禅宗様の代表的な建物です。(いずれも国宝)
          それらの中で、この金堂は正面一間通りを吹き放しとした珍しい様式とともに、
          最も壮大な規模を誇ります。

          恵瓊の後、芸備の大名となった福島正則の時代に真言宗に改め、寺号も不動院を
          名乗ります。歴史の変遷と数々の夢を秘めたように、緑に囲まれた静かな境内。
          地元では、不動院とのみ呼称されるこの寺の中央に座る金堂は、広島市内にある
          唯一の国宝建築物でもあります。
          市の中心に近い立地ですが、山陰にあるため、原爆の火からも守られました。
          67年の前、その日は、市中心から負傷した避難者の列が絶えず、この寺の境内で
          絶命した者も数多かったと聞きます。多くの悲惨な歴史を見続けてきた、お堂なのです。












































































湖南三山を巡る、その3 常楽寺本堂、三重塔

2012-02-15 | 古いもの、昔の人
          湖南三山の三つ目、常楽寺です。湖南市西寺。長寿寺とともに、嘗て阿星山
          五千坊と言われた多くの寺の一つ。
          山号も同じ阿星山。長寿寺の東寺に対し西寺と呼ばれます。
          この寺も和銅年間(710前後)良弁僧正の開基と伝えます。
          現存する本堂は1360年(室町前期)の建立。桁行7間、梁間6間、入母屋造、
          檜皮葺きの大堂。3間の向拝、蟇股を有します。柱上の組物は二手先組。
          (当初の出三斗に肘木1枚加えたものと言われます。)
          この本堂も、檜皮葺の屋根が柔らかな曲線を描き、魅了されますが、私にとって
          嬉しいのは隣に三重塔を持つことです。湖南三山では唯ひとつ。
          この三間瓦葺の三重塔は、1398年の再建という記録を持ちます。前時代から
          引き継がれた古風な趣を持つ和様の塔で長さ7.6mの相輪を含めた全高23.3m。
          初重から三重まで組物寸法、垂木間隔とも同じ、上層に行くほど垂木の数を
          減らしています。木組の密度が高い塔で、その中に吸いこまれて行くような感覚
          を覚えます。

          本堂と三重塔を囲む裏山の道には、西国三十三観音仏が点在します。
          紅葉が去り、彩りの少ない季節でしたが、
          春になれば、花咲く山と緑の田園に包まれるであろう寺々・・
          そんな時を思わせる素朴な湖南三山を巡る旅でした。

















































































水の橋の幻想・・琵琶湖疎水、水路閣

2012-02-10 | 古いもの、昔の人
          京都左京区の南禅寺のすぐ傍に、煉瓦造のアーチ橋があります。
          明治時代に進められた琵琶湖疎水事業の一環として造られた
          水の橋、「水路閣」と呼ばれます。
          古いお寺の傍の西洋風の煉瓦橋・・不釣り合いだという声もあった
          ようですが、今は木の緑を装って、その存在を誇示しているようです。

          京都を舞台にしたテレビドラマ、特にサスペンスものにはよく登場
          してくるんだそうです。事件の発生場所が多いらしい・・

          水の道であったかどうか、今もそうだ・・なんてことは別にして、
          この煉瓦のアーチは幻想を掻き立てる格好の素材ではあります。
          さて、アーチを覗き見て、何を想いましょうか・・




































































湖南三山を巡る、その2 長寿寺本堂

2012-02-05 | 古い神社や寺で
          湖南三山の二つ目、長寿寺です。湖南市東寺。善水寺とは野州川を隔てて
          南側の山中にあります。山号は阿星山(あぼしさん)、次の常楽寺と共通です。
          近江の地で活動し、東大寺の実質的創建者と言われる良弁僧正(華厳宗)により、
          天平年間(730前後)に開かれたと伝えます。後に天台宗に改まります。

          現存の本堂の建立年代は、明らかではありませんが様式、手法から、鎌倉前期
          と見られています。
          桁行5間、梁間5間、寄棟造、檜皮葺き。三間の向拝は、1366年に付け加えられたとの
          記録があるそうです。向拝には蟇股を有します。
          内部は内陣、および外陣、後陣部は大屋根の中に夫々の化粧屋根を持つ形式。
          純和様を基としますが、中央三間は桟唐戸の入口、左右は連子窓、禅宗様を加味します。
          柱は丸柱、柱上の組物は鯖尾付き三斗組。
          照り起くりとも呼ばれる檜皮葺屋根の微妙な局面、全体の形状の見事さから
          密教本堂の代表的な建築と言われるお堂です。

          本堂後ろの丘に上ると、苔生した屋根の拡がりと回廊の美しさが見てとれます。
          このお堂の隠された美点に出合うことができるのです。
          なお、長寿寺に隣接して白山神社があります。格子を巡らした珍しい拝殿(国重文)
          の整った形にも目を惹かれます。