【パンドラの鐘】
作 野田秀樹
演出 杉原邦生
Bunkamuraシアターコクーン
演出家の故蜷川幸雄さんの七回忌を迎える今年
NINAGAWA MEMORIALと冠したこの舞台が上演されている
1999年、シアターコクーンで蜷川さんと野田さんが演出を競演したとか・・・
太平洋戦争直前の長崎で古代遺跡の発掘作業が進められている
責任者である教授の優秀な助手オズ(大鶴佐助)が発掘した折れ釘から古代王国の世界がよみがえる
古代王国では狂気の国王を側近たちが幽閉し若干14歳の妹のヒメ女(葵わかな)を王位につかせる
ばらばらに進んでいくかのよな二つの世界を行ったり来たり
早口のセリフと不思議な動きで最初の内はよくわからなくて
一瞬意識を失いそうになった・・・が
どちらの世界でも大きな鐘があらわれ、
それが古代と昭和の戦争の時代をつないでゆく
そこが長崎、と言うことはやがて悲惨で悲しい結末が訪れるであろうことがじわじわとわかってくる
どちらの時代にもいた形ばかりで利用されたリーダーがいた
古代ではヒメ女
太平洋戦争中には・・・
リーダーのよくわからない間に戦局は悪化し、
ヒメ女を王に祭り上げた側近はすべてに責任をヒメ女にかぶせる
彼女を崇拝していたかに見えた乳母(白石加代子さん)や側近ハンニバル(玉置玲央)さんの手のひら返しにびっくり
信じていた人たちに裏切られたヒメ女は
最悪の事態を避けるために自分の身を犠牲にして国を救うが
結果としてその存在はなかったことに
では太平洋戦争での日本のリーダーはどうしたのか・・・
そしてその結果は・・・
ヒメ女のそばで彼女が息絶えるまで寄り添うミズヲ(成田凌さん)
その名前のミズヲの意味が明らかになった時、その先の未来が絶望に変わる
戦いを始める者は未来に戦いを挑んでいる
未来には絶対に勝てない
というようなセリフがあった
まるで今のロシアによるウクライナ侵攻がわかっていたかのようなセリフにドキッとする
20年余り前のお芝居がまったく古さを感じさせずにここにある
その当時ミズヲとヒメ女を演じたのは
堤真一さんと天海祐希さんだとパンフレットにあった
観たかったな~
戦争のこと以外にも
恋愛での裏切り
教授による助手の論文の盗用
など、いつの時代も同じような苦悩がつきまとう
人間て形は少し変わっていても同じことをくりかえしているんだな~
となんだかむなしくなる
ヒメ女の声が聞こえなくなる終盤には
会場からすすり泣きが・・・
どうか一国のリーダーは
自分の野望のために戦うのではなく
自分を信じる国民のために戦いのない世界を作って欲しい
と観劇後、より強く思った
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