ゆるゆるらいふ

とりあえず、今日も一日機嫌よく・・・

【観劇メモ】出口なし

2018年09月09日 | 演劇
「出口なし」
作 ジャン・ポール・サルトル
上演台本・演出 小川絵梨子
新国立劇場

ホテルの部屋のような、それにしてはちょっと殺風景な部屋に初老の男性がボーイっぽい若い男性に案内されて入ってくるところから始まる。

初老の男、ガルサンは段田安則さん。
部屋に入るなり、室内を物色し「拷問道具は?」などと聞いてボーイを失笑させる。

続いて案内されてきたのは中年女性イリス。
大竹しのぶさんだ。
彼女も同じように拷問道具を探す。

そんなものはありません、とのボーイの答えに安堵する。

最後は若くて可愛らしいエステル。
これは多部未華子さん。

3人とも同じように何かに怯えながら入ってきては、何もないことに安堵する。

はて、これは何だろう?
何かの犯罪者?
などと思いながら観ているうちに、実は3人がすでに死んでいることに気づく。

それぞれが生きている間に何かやらかしてしまって、地獄に堕ちたらしい。
地獄にしては快適そうな部屋だ。

時折下界が見えて、自分を覚えている人の姿と声がわかるようだが、相手が自分たちを忘れてしまうと見えなくなるらしい。

よく言われている「誰からも忘れられた時が死んだとき」ということなのかもしれない。

お互いの罪を暴露し、相手を責め、それぞれがこの部屋のメンバーの中に自分の罪を感じ、お互いを苦しめ合う。
そして、この部屋の中の3人の日々は永遠に続くのだ。
だってもう死んでいるから・・・。

最初のうちのやり取りは、「???」って感じで、ちょっと眠くなってくるくらいだったけれど、少しずつ事情が分かってくると、だんだん体が前のめりになってくる。

段田さんと大竹さんのベテラン二人の安定感ったらないけれど、その中にあって、一歩も引けをとらない多部さんがなかなかの存在感だ。

段田さんの振り回される演技と、多部さんの目いっぱい女を使って振り回す演技がベストマッチ

その二人を無視できない大竹さんのイライラ具合もリアル。

この人たちってどうなるんだろう、という含みを残して、バッっと照明が落ちる。

1時間半があっという間で「え?もう終わり?」って感じだった。

よく言われているいわゆる「責め苦」満載の地獄より、こっちのほうがよほど怖い。

失礼ながら「この人と永遠に同じ部屋に入れられたらどうしよう」という人の顔が浮かんだりする。
辛すぎる・・・

こういう部屋に行かないためには、やはり生きている間にちゃんとしてないといけないんだなあと思いつつ、劇場を後にするのでした。




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