人生ブンダバー

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東フィル特別演奏会「グレの歌」 『きけ わだつみのこえ』 『日本文学史序説』 etc.

2013-03-04 05:00:00 | 音楽

2月23日(土) 生来うっかりミスが少なくないが、加齢のせいかさらに増え
ている、かもしれない。朝目覚めて、うつらうつらしていると、突然「そういえ
ば(東急電鉄の)通勤定期券がそろそろ切れそうだったが、更新しただろう
か」とひらめいた。あわてて調べたら、案の定、切れて1日を経過していた。
最近は定期券とPASMOが1枚のカードになっているので、定期券が切れ
ても気づかない(笑)。

13時半過ぎに最寄駅で無事(--自動販売機で)定期券を購入。13時
43分発大井町行き急行に乗る。二子玉川で押上行き普通に乗り換え、一
路渋谷へ。二子玉川でボーっとしていると自由ヶ丘へ行ってしまう(笑)。

14時8分渋谷着。この日のマチネは渋谷文化村オーチャード・ホール、シェ
ーンベルクの大作「グレの歌」である。

尾高忠明指揮、東京フィルハーモニー交響楽団「グレの歌」(シェーンベル
ク1911年作曲)は、当初、平成23(2011)年3月20日に同楽団創立100
周年記念公演として企画されていたが、東日本大震災のために中止とな
った。この日ほぼ同じメンバーで復活公演されることになったのである。

この日はまた、「グレの歌」(世界)初演からちょうど100年目に当っている。
オンステしたのは、オーケストラ151名、合唱120名、ソリスト5名である。
これだけの大作は、マーラーの8番同様、めったに演奏されない。私は(東
フィルの)定期会員ではないが、発売と同時にA席(2F-2-20。2階正
面最後列)を購入した。

14時45分、自分のシートに着席。ステージには山台がオケ用4段に加え、
コーラス用7段だろうか、ハープが下手寄りに4台、コントラバスが上手寄
りに12台見える。

プログラムに掲載の編成表を見たら、1stヴァイオリン20、2ndヴァイオリ
ン20、チェロ16、ヴィオラ16、コントラバス12という弦楽5部。フルート8、
オーボエ5、クラリネット7、ファゴット5、ホルン11、トランペット6、バス・トラ
ンペット1、トロンボーン7、テューバ1、ティンパニ2、パーカッション9、ハー
プ4、チェレスタ1だった。これで151人かな~。


ヴァルデマル王(Ten);望月哲也
トーヴェ(Sop);佐々木典子
山鳩(Alt);加納悦子
道化クラウス(Ten);吉田浩之
農夫(Bass);妻屋秀和
合唱;新国立歌劇場合唱団
合唱指揮;三澤洋史
指揮;尾高忠明
東京フィルハーモニー交響楽団
コンサートマスター;新井英治
字幕;岩下久美子

<第1部>
序奏
第1の歌「今 黄昏に 海も陸も」(ヴァルデマル王;以下V)
第2の歌「月が滑るような光を投げ」(トーヴェ;以下T)
第3の歌「馬よ なぜ こうも歩が遅いのだ!」(V)
第4の歌「星は歓びの声をあげ)(T)
第5の歌「天使たちの舞も」(V)
第6の歌「今 初めて告げる」(T)
第7の歌「真夜中だ」(V)
第8の歌「あなたは 私に愛の眼差しを向け」(T)
第9の歌「不思議なトーヴェよ」(V)
間奏
「グレの鳩たちよ」(山鳩)
--休憩--
<第2部> 
「神よ 自分のなさった事をご存じか?」(ヴァルデマル王)
<第3部>
荒々しい狩り
「目覚めよ ヴァルデマル王の臣下たちよ」(ヴァルデマル王)
「柩の蓋がきしみ 跳ね上がる」(農夫)
「王よ グレの岸辺に よく来られた!」(ヴァルデマル王の臣下たち)
「森は トーヴェの声で囁き」(ヴァルデマル王)
「鰻のような 奇妙な鳥」(道化クラウス)
「天の厳格な裁き手よ」(ヴァルデマル王)
「雄鳥が鳴こうと 頭を起こし」(ヴァルデマル王の臣下たち)
夏風の荒々しい狩り
序奏
「アカザ氏に ハタザオ夫人よ」(語り手)
「見よ 太陽を!」(合唱)



当日のプログラム


以下、プログラム解説要旨といつもながら私のつたないコメントを。
<第1部>
序奏
 「おとぎ話」が始まるような、後期ロマン派の音楽。これだけでも楽しめる。
第1の歌「今 黄昏に 海も陸も」(ヴァルデマル王;以下V)
 <薄明にたたずむ王の歌>ヘフリガー最後の(?)弟子の望月さん、今年
 40歳になり、脂がのっている。さすがよく通る(響く)頭声。歌い終わると
 イスにすわって、ミネラル・ウォーターを飲む。
第2の歌「月が滑るような光を投げ」(トーヴェ;以下T)
 <王の恋人、トーヴェは、いまグレ城にいる>女性としては大柄な佐々木
 さん。ステージ映えする、碧いような緑のようなドレス。望月さんも佐々木
 さんも譜面を譜面台に乗せての歌唱。歌い終わると同様にミネラルを飲む。
第3の歌「馬よ なぜ こうも歩が遅いのだ!」(V)
 <トーヴェに会うべく、グレ城へと馬を駆る王>オケのヴォリュームが大き
 く(強く)なると声(歌詞)が聴こえにくい。オケの熱演が続く。
第4の歌「星は歓びの声をあげ)(T)
 <目に映るものすべてが、王に会える喜びに染めぬかれている>トーヴェ
 は幸福感いっぱい。
第5の歌「天使たちの舞も」(V)
 <愛する人についに会えた歓び。その高揚した気分をゆったりと歌い上
 げる>
第6の歌「今 初めて告げる」(T)
 <女性の側からする返歌>"Ich liebe dich"とロマンチックな音楽。
第7の歌「真夜中だ」(V)
 <死せる者と、生の充実を生きる自分たちとを対比させ、王が歌う>
第8の歌「あなたは 私に愛の眼差しを向け」(T)
 <死して美は再生するのだと説くトーヴェ>「燃える眼差し、愛の口づけ」
 と歌い上げる。歌い終わると譜面台を上手方向にずらし、退場した。(あ
 ら、いなくなった。)佐々木さんの出番はここまでである。
第9の歌「不思議なトーヴェよ」(V)
 <恋人との愛の歌もこれが最後>
間奏
「グレの鳩たちよ」(山鳩)
 <グレの山鳩の歌。トーヴェの死と葬送をともにする王について報告>
 間奏の間に白いドレスの加納さんが下手から登場。「トーヴェを殺害し
 たのは王妃ヘルヴィッヒなり」と暗譜で子音を立て、入魂の歌唱。加納
 さんはいつ聴いてもうまい。

演奏が終わるとソリスト、指揮者とも客席へのおじぎもなく(拍手はパラパ
ラ)、静かに退場した。

--休憩--
2階喫茶でコーヒーブレイク。ここのワインは1,000円とやや高め(--普
通音楽ホールのロビーでは600円だが)。
「演奏中にしゃべっているのはつまみ出すべきだねー」と怒っている70歳
くらいの老人の声が耳に入った。(お怒り、ごもっとも!)

<第2部> 
16:18、合唱が女性から入場--出てくる出てくる120人の、プロにして
は大合唱団。
16:21、オケが真ん中の人たちから入場。
16:22、大柄な(180cmあるかな?)妻屋さん、望月さん、
「神よ 自分のなさった事をご存じか?」(ヴァルデマル王)
 <自分のもとから「最後の明かり」トーヴェのを奪った神に怒りをぶちま
 ける王>テノールソロの短い第2部。5分ほどで第3部へ。
<第3部>
荒々しい狩り
 まさしくワーグナー風の音楽で始まった。
「目覚めよ ヴァルデマル王の臣下たちよ」(ヴァルデマル王)
 <亡き臣下たちに向けて、王の亡霊が「目覚めよ」と呼びかける>
「柩の蓋がきしみ 跳ね上がる」(農夫)
 <臣下たちの亡霊を見ておびえる農夫が登場。途中で亡霊の掛け声が
 はさまる>妻屋さんはスバラシイ声。男声合唱(譜面持ち)が立ち上がり、
 「ワ~」。
「王よ グレの岸辺に よく来られた!」(ヴァルデマル王の臣下たち)
 <結集した臣下たちが、轟然(ごうぜん)と声を交わす>男声合唱、オケ
 ともに f の演奏。合唱は何を歌っているのか聴こえない(笑)。字幕があ
 ってよかった。録音にも入らないかも。
「森は トーヴェの声で囁き」(ヴァルデマル王)
 <愛しいトーヴェに寄せるカンティレーナ(哀歌)>オケが p の中、「あな
 たに逢いたくてたまらない」と歌い上げる--いいところ。
「鰻のような 奇妙な鳥」(道化クラウス)
 <王に向かって皮肉やいさめ言をいう道化。音楽的にはスケルツォの役
 割を果たす>下手から足早に吉田さんが登場。譜面台の譜面を見なが
 らだが、子音ハッキリでうまい。5分ほどで下手に下がった。
「天の厳格な裁き手よ」(ヴァルデマル王)
 <神をふたたび告発する王>「私とトーヴェは一体だ」。3分ほどで下手
 に退場した。男声合唱団立つ。
「雄鳥が鳴こうと 頭を起こし」(ヴァルデマル王の臣下たち)
 <夜明けが近づき、亡霊たちは平和を願いつつ、墓に帰る>「ああ平和
 のうちに眠ることができたら!平和のうちに!」と最後は歌いながら座る。

夏風の荒々しい狩り
序奏
「アカザ氏に ハタザオ夫人よ」(語り手)
 <夏風の到来を語る>手振りを交え、実にいい声、いい発音(ドイツ語)!
 迫真の語りだった。
「見よ 太陽を!」(合唱)
 120人の大合唱(--ここで初めて混声になる)。女声は50人くらいか
 しらん。「見よ!この太陽を!地平線は色鮮やかだが、東に美しい朝が
 訪れる」と歌う。尾高さんもタメたっぷりの指揮。最後は f からさらにクレ
 ッシェンドして終わった。

最初の拍手がパチパチとやや早かったが、ブラボーと大きな拍手に包ま
れた。カーテンコールには佐々木さん、加納さん、望月さん、吉田さん、妻
屋さん、合唱指揮の三澤さん、尾高さんが登場。ブラボーが飛びかう中、
会場は大きな拍手で盛り上がった。私の右隣の男性(おじさん)はスタン
ディングオベーション。
尾高さんは最後に1stヴァイオリンの3人に握手してお開きとなった。

「グレの歌」は19世紀のワーグナー音楽(「トリスタンとイゾルデ」、「パル
ジファル」)から20世紀の音楽への橋渡しとなるものであった。

なお音響面では、2階正面(後方)はまずまずよかったのではないかしらん。



渋谷駅より3a文化村通りへ


キャデラックが駐車してあった


昔からある くじら屋


東急百貨店本店


Bunkamura入口


<2月のBunkamura>
ル・シネマの映画「東ベルリンから来た女」が気になった。「マリーゴールド
ホテルで会いましょう」もおもしろそう。


オーチャード・ホール入口で開演を待つ人々


入口で配られた大入り袋


Bunkamura Orchard Hall Award 1993
右から二人目 戸田弥生さん(受賞時25歳)


休憩中


松濤側出口


松濤方面


帰り道 渋谷を松濤方面へ走る消防車



演奏会の帰りに東急デパート本店7階ジュンク堂で『きけ わだつみのこえ』
(岩波文庫)と『ドナルド・キーン自伝』(中公文庫)を購入。



日本戦没学生記念会編『きけ わだつみのこえ』(岩波文庫)

大きくいえば、「戦没学生」の学生は、大学進学率が5%以下という当時の
大学卒ということであり、大正時代に生まれた人たちであった。
以前にも書いたかもしれないが、当時いわゆる「大東亜戦争」(太平洋戦争。
当時の「支那事変」(日中戦争)を含む。)では、明治生まれの指導者(将校)
の下、大正生まれの兵隊が戦った。

本書に掲載された人(72人)を調べてみると、大正11(1922)年生まれが
最も多く(19人、25.7%)、次いで大正12年生まれが多かった(11人、
14.9%)。
大正11年生まれは畑中良輔先生の世代であり、大正12年生まれは私の
母と同世代だった。大正12年生まれは今年90歳になる。

大正7年生まれの父は美術学校受験に落ち、一浪後、これ以上落ちると徴
兵だということで、一般の大学(経済学部)に入ったラシイ。当時、大学生は
徴兵が猶予されていたのである。私の父は昭和18(1943)年11月1日入
隊となっているが、学徒出陣組ではなかった、と思われる。父は生きて終戦
となったが、運悪くシベリア抑留に。しかし運よく無事帰国できた。

私の母は、ある時、戦争中にあんなことを考えている人がいるとは知らなか
った、といっていたが、本書には編集者にとって都合の悪い箇所は削除され
ていることが分かっている。

私にいわせれば、それは「情報操作」にあたるといっていいのではないかし
らん。動機がいかに純粋であったとしても、それが「善」だと仮定しても、「歴
史(的事実)の改ざん」といってもいい、カナ。




『ドナルド・キーン自伝』


2月25日(月)~27日(水) フレッシュアップ特別休暇。詳しくはまたあら
ためて。

2月26日(火) 梅の花の季節である。梅の花は桜より「寿命」が長い。梅
林に行けば、外国語が上手になる?--バイリンガル?(以前書いたか
しらん。)

駅前の小さな梅林より

2月28日(水)

6時15分の朝焼け この日の日の出は6時13分 
日の出の遅い1月上旬はは6時51分だった。


8時7分の本郷通り 日差しが明るい



夕食は大戸屋 
四元豚とたっぷり野菜の蒸し鍋定食(ご飯にとろろ)900円


OB練習(東京芸術劇場地下2階)

この日は「草野心平の詩から」の「5.さくら散る」をたっぷり(65分)と「1.石
家荘にて」を少し(15分)。

21時13分池袋発副都心線から渋谷経由22時15分自宅着。
副都心線は、3月16日より東横線とつながる。これにより横浜から池袋ま
で40分足らずで行けることになる。

3月1日(土) 朝、ベローチェにて加藤周一『日本文学史序説 下』(ちくま
学芸文庫)「第11章工業化の時代」を読む。

この章で比較的ページが割かれているのは、石川啄木、谷崎潤一郎、志
賀直哉、長塚節、中里介山、木下杢太郎、斎藤茂吉、萩原朔太郎、小林
多喜二、中野重治、芥川龍之介、川端康成、井伏鱒二、大仏次郎、宮澤
賢治、中原中也、林達夫、石川淳、小林秀雄などである。





加藤周一『日本文学史序説 下』(ちくま学芸文庫)

著者50代の力作にして大作。文章力がすばらしい。
著者にきいてみたいことは
1.取り上げた作家はどのような基準で選別したのだろう?
2.取り上げた小説などはどれくらい読んでいるのだろうか?
3.助手とか秘書などのは協力はあったのだろうか?

著者は平成20(2008)年89歳で亡くなった。


3月3日(日) 『文藝春秋』(平成25年)3月号の「同級生交歓(麻布中高)」
にワグネルの2年先輩が載っているというので、同誌を買ってきた。

「安倍政権大論争」がなかなかおもしろい。


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