人生ブンダバー

読書と音楽を中心に綴っていきます。
現在は、暇に飽かして、日々更新。

『田中清玄自伝』

2008-05-28 05:34:11 | 読書
福田恆存(つねあり)が人間50歳を過ぎたら本を厳選して読むべきだという趣旨の
ことを言っていた。小泉信三はできるだけ大書を読むべきだと書いていた。

しかし、『戦争と平和』、『カラマーゾフの兄弟』など世界文学全集の作品は読ん
だことがない。現実には依然として、大書とはいえない本の濫読(らんどく)であ
る。

5月23日(金)(給料日である。)昼休みに三省堂で物色するうち、「昭和史を駆
け抜けた男の<夢と真実>初の文庫化」という帯に惹かれて『田中清玄自伝』(ち
くま文庫)を購入した。

自伝といえば『福翁自伝』--これは読み応えがある!自伝文学の傑作である。近
年読んだものでは『ダライ・ラマ自伝』がおもしろかった。


さて本書は平成3(1991)年から5(1993)年にかけて行われた、インタビューの聞
き書きである。インタビュアーは大須賀瑞夫(当時毎日新聞編集委員)。

目次は、第1章会津武士と武装共産党、第2章昭和天皇と玄峰老師、第3章オットー
大公と田岡一雄、第4章世界の石油と小平、第5章ハイエク教授と今西錦司教授
から成る。

一種のオーラルヒストリーであるから、順番に読むのがいいのだが、気に入った
章から読んでも問題ない。どんどん惹きこまれてしまう。物言いがハッキリして
いるだけにおもしろい。

田中清玄(きよはる、せいげん)は、明治39(1906)年函館近郊の生まれ。明治
生まれの大正育ち。函館中学では亀井勝一郎と同級だった。(亀井勝一郎といっ
ても、今の若い方は知らないだろう。田中は弘前高校、亀井は山形高校へ進学す
る。)

田中は60年安保では全学連を支援するなどいろいろなことをやってきたが、一貫
しているのは「行動家」(何かに向けて行動するとでも言うべき。)であるとい
うことではないだろうか。「正義感が強い、血の気が多い」という言い方もでき
よう。彼の一生は、波乱万丈、活劇に勝るとも劣らない。(司馬遼太郎も田中清
玄に興味を持ったらしい。)読み物としては本当におもしろかった。

元々の初版は平成5(1993)年文藝春秋社。あらためて文庫化した筑摩書房に喝采
を送りたい。

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2 コメント

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想い出 (瘋癲読書人)
2008-06-17 01:02:39
 面白いから一気に読めますね。とくにアラブ石油外交やスペインのアンダルシアの車泥棒がおかしい。私は、全共闘世代を見ていた次の世代ですが、よく学生を叱責と激励していた。瀬島竜三ほどではないが、自己陶酔と記憶の混乱が多少あるかも知れないが、昭和裏面史を語る資格がありますね。
 地方私大には、元革マルで今、学長て言うのがいるけど、清玄翁は何て言うだろうか。
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はじめまして (katsura1125)
2008-06-18 22:45:16
癇癪読書人さん、はじめまして!
コメント有難うございます。
60年安保で活躍した全学連(ゼンガクレンという英語もあったかと。)幹部はもう70歳を過ぎていますが、大学教授、政治評論家で名を成した方が何人もおられますね。(既に故人になれれた方もいますが。)
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