治りかけてはいるが、左ふくらはぎの恢復と秋雨前線による憂鬱の払しょくを兼ねて鳴子温泉のもう一つ先の駅中山平温泉駅まで出かける。降りた客はオイラと若い女性一人だけ。風は秋のものだが日差しは強い。ミンミンゼミに交じってエゾゼミが鳴いている。街中では決して出会えない山あいのなつかしい秋蝉。
ヒトの気配のない駅前の街並みから国道に出て、鳴子峡方面に歩いて20分、坂を下りて3分。お目当ての旅館の湯に2時間ほど。湯舟がいくつもあり、硫黄を含んだアルカリ温泉の名湯を楽しむが、行き会った男性客はオイラを入れて3人のみ。大きな湯宿だが、平日の昼はあくまでも静かだ。
この湯宿のさらに坂下に東蛇の湯(ひがしへびのゆ)とラドン温泉があって、かつては200円ばかりで入れる東蛇の露天風呂が気に入って、折を見て通っていたのだが、どちらの温泉も今はなく、東蛇は震災のせいで廃業、更地となり、ラドン温泉は別経営者の日帰り温泉となっている。
震災後の温泉地の状況もだいぶ変わったと見え、古い施設は、震災で破壊された施設の修繕費用が捻出しきれないので、廃業や譲渡に追い込まれたのだろう。震災だけの影響ではないが、よく通った東鳴子の田中温泉、鳴子の農民の家も今はない。お湯の質とレトロな感じが好きだっただけに、この10年、20年の地域の衰退ぶりにさみしさを覚える。
湯上りの後、せめておいしい蕎麦でも楽しんでいこうと、東蛇の近くにあった藤治朗という店に下りるが、何とここも更地に。ネットで確認したら2018年3月末で閉店したとのこと。何があったか知らんが、山あいの蕎麦屋はひとり店主が脱サラ後のたしなみで開業しているところが多く、人気店でも高齢化など廃業せざるを得ないのだろう。東蛇の界隈、中山平のなかでも結構にぎわっていただけに残念無念。
いささかの淋しさをこらえ、駅に戻り、駅前でなんとか頑張っている酒屋でビール、ワンカップ、おつまみなどを購入し、こぎれいなエキナカの自由ノートを開く。全国からここのお湯を目当てにやってきた旅人の書き込みを読んで、オイラも一筆。午後の、列車にこの駅から乗ったのは、オイラひとり。
廃れ、消えゆくような名湯を、探し、はやめに、訪ね歩かねば・・・
東北の閉鎖温泉リストのHPさんから
https://tavitan.com/onsen/higaeri31.html
YouTubeでかつての東蛇に出会いました。ありがとう。