来年のことを言うと富士が笑う。
2022年の富士山卒業旅行須走ルートは、標高≒1400mから標高≒2300mを踏破しただけで、それより上部のルートは、降りしきる雨と回復しないとの天気予報により断念した。
だが、2300mの新六合目から吉田口六合目までの緑豊かなトラバース道や富士吉田市街までの緑深い古道を12時間近く歩いて、今回は十分満足した。
なので、「もういい、須走ルートの良さも分かったので、もう卒業だ。」と富士山卒業宣言を発出しても、まったく後悔はない。
だが、夕刻、河口湖の宿に辿り着くころには、雲の切れ間から富士の頂上近くの青い影が現れ始めたのを見て、「ああ、あそこの稜線を歩き損ねたな」とため息が出たのだし、翌日、天下茶屋までの御坂みちを登りながら太宰くんも見ただろうすっきりとした富士の姿にあらためて対面したときに、「ああ、富士はやっぱりいいな、またあの3000mを超える稜線で苦しい呼吸を体現したいなぁ。」と、さらに深くため息をついた。
「そうだ、今年の富士山卒業登山は、残念だが失敗に終わったんだ。また、来年チャレンジするしかないか・・」という結論を自分に言い聞かせた。
家に帰った、12日は、十六夜の月が木星と並んで輝いていた。「ああいいな、お月様。」
じつは今年の富士山閉山時期は、10日が「中秋の名月」と、晴れていれば月が輝いていたはず。
「ああ、そうかお月見登山を富士でやっていなかった!」とひらめいた。
さっそく来年のお月様カレンダーを調べると、残念ながら「中秋の名月」は9月29日であり閉山後となってしまうが、8月末はスーパームーンで晴れていれば、大きな月に照らされながらの明るい登山となる。
「十三夜から十六夜まで、8月29日から9月1日までの間の天気の良さそうな夜に月あかりを受けて、こんどこそ苦しい苦しい卒業旅行に挑もうではないか!」
と決意した。
それと、時間の関係で今年やり通せなかったことが、
「太宰くんが井伏鱒二さんに連れられてドテラ姿で登った天下茶屋からのルートで、三つ峠に登ること」
① お月見富士卒業登山
② 太宰ドテラルートから三つ峠登山
もっともらしい、2023年の課題がうかんだ。
来年のことを言うと富士が笑う。
9月8日、雨が晴れた雲間から、三つ峠の山上を望む。(富士山五合目、佐藤小屋から)