少し晴れたので、7月末以来となる野草園を歩く。朝の寒さにやられたのか、もう首筋や足元をなやます蚊の仲間は気にならない。もう、ツクツクたちセミ一門の声も途絶えた。鳥たちも騒がず、都市の一角の緑地は、あくまでも静かだ。冷たい風を受けると、なんだかさみしい。
萩まつりの期間だというが、もう盛りを過ぎているのだらろうか。公園自体が萩色に燃えていない。ミヤギノハギを中心としたうす桃色と大好きな白萩が、この時期秋風に鮮やかな彩色を揺らしているはずだが、全体にややくすんでいる。
「取り立てて、萩を見に来たわけでもないので・・」とうそぶく。ことしは、アジサイの盛りも見逃した。
うつくしい生き物を発見した。山ウドの大きな葉の上に、同じ緑色でじっと動かない生きもの。葉を食べるのでもなく、翅をふるわせて鳴くのでもなく、天敵を恐れるのでもなく、ただただひたすらじっと動かず時を過ごしている翅の付いた足の何とも細く、後ろ足がとても長い生き物。明らかにバッタの仲間だが、すぐに名前が出てこなかった。(家に帰って調べると、キリギリス科ツユムシ亜科アシグロツユムシ♂♀不明、と分かった。)
姿かたちといい、ふるまいといい、オイラはこのようないきものが好きだ。かみさまは、なんと美しい姿をこのいきものに与えたのだろう。霜が降りる頃には、もうこの世にいないのだという。昆虫にまぶたはないので、眠っているのか、眼を開いて待機しているのか、何を考えているのか分からないが、昼間こうして、葉の色に染まった体で体を休め、天敵をやり過ごし、暗くなったら次の世代への命のリレーに頑張るつもりなのだろうか。
ツユクサの蜜を吸ううチャバネセセリ
マツムシソウの蜜を吸うヒョウモンチョウの仲間
ゲンノショウコに寄って来たハナアブの仲間
ツユムシとおなじこの秋だけのいのちたちに会うことができた。みんなにガンバレといいたい。