深田さんの百名山から、思い出に残る高原、草原、湿原を挙げれば、ほとんどが東日本から北日本に限られる。西日本でいえば、加賀白山、四国剣山、久住の坊ガツルくらいか。
北から拾うと
① 大雪山 (周囲全体が、高原、草原、湿原だ)
② トムラウシ(五色ヶ原、沼の原、日本庭園)
③ 八甲田山(上毛無岱、下毛無岱、櫛ヶ峰周辺)
④ 八幡平(黒谷地、鏡沼周辺、裏岩手縦走路)
⑤ 鳥海山(御浜周辺)
⑥ 月山 (弥陀ヶ原、山頂周辺)
⑦ 朝日岳 (稜線一帯)
⑧ 飯豊山 (稜線一帯)
⑨ 吾妻山 (山上一帯)
⑩ 越後駒ケ岳(駒から中の岳)
⑪ 会津駒ケ岳(山頂から中門岳、山頂から大津岐峠)
⑫ 平ヶ岳 (池の平から山頂一帯)
⑬ 燧ケ岳 (尾瀬沼周辺、熊沢田代)
⑭ 至仏山(尾瀬ヶ原一帯、山頂一帯)
⑮ 火打山(黒沢池から山頂一帯)
⑯ 苗場山(山頂一帯)
⑰ 谷川岳(稜線上の草原)
⑱ 奥白根山(五色沼周辺、白根隠までの稜線)
⑲ 大菩薩嶺(稜線一帯の草原)
⑳ 八ヶ岳・蓼科山(北八一帯)
㉑ 白馬岳(栂池から山頂まで、山頂から雪倉 朝日まで)
㉒ 立山(雷鳥沢、大日岳まで、弥陀ヶ原周辺)
㉓ 薬師岳(北薬師から太郎兵衛平、薬師沢)
㉔ 黒部五郎岳(北の俣から山頂、カール、雲の平)
㉕ 笠ヶ岳(抜戸岳から山頂)
㉖ 乗鞍岳(山上一帯・位ヶ原)
㉗ 御嶽山(山上一帯、三の池周辺)
百名山のうち30座ほどが、大好きな高原、草原、湿原の山、さてこれからの生涯で再訪できるのは何座か。ゆくゆくは、ホームグランドとして、数座は通いたい。候補地としては
八甲田
八幡平
月山
鳥海
吾妻
尾瀬
と東北になるのだろう。それでよし。百名山以外でも栗駒や秋田駒、焼石と、まだまだ東北には候補地が並んでいる。
栗駒の湿原
日本百名山 MY SONG
36 男体山(なんたいさん・2486米)
37 奥白根山(おくしらねざん・2578米)
*ヤマケイは、日光白根山(にっこうしらねさん)と山名表示をしているが、深田さんに倣い奥白根山と呼びたい。
【深田久弥・日本百名山抜粋】
(男体山)
「わが国の名山には偉い坊さんによって開かれたものが多いが、たいていは伝説めいている。その中で記録の一番実証性のあるものは、日光の男体山である。その初登頂は、今から千二百年前の天応二年(七八二年)三月、勝道上人によって果たされた。この登山のことは『性霊集』という古い本に出ている。筆者は僧空海である。(中略)その時のさまを空海の文章はこう記している。「終にその頂を見る、恍惚恍惚として夢に似たり、悟めたるに似たり・・一たびは喜び、一たびは悲しむで心境持ち難し」
一たびは喜び、一たびは悲しむで心境持ち難しーこの最後の言葉がまことに簡潔適切である。」
「すべての湖はその傍にそびえ立つ山の姿で生きてくるが、中禅寺湖と男体山という取り合わせほど過不足なく、彼我助け合って秀麗雄大な景色を形作っている例も稀である。天の造詣の傑作というほかない。中禅寺湖が男体山登山の表口となるのは当然であって、湖畔に二荒山神社が祀られている。」
初登(はつとう)は夢にも似たり悟りにも悲喜こもごもの二荒山上
(奥白根山)
「この山をよく眺めるには、男体山や皇海山、あるいは武尊山や燧岳、それらの東西南北の山々から望んだ時、真に日光群山の盟主にふさわしい威厳と重厚をそなえた山容が得られる。かつて平ヶ岳の頂上から眺めて、連山を抜いて一きわ高く豪然とそびえている、その立派な姿に驚いたことがある。上信越国境では最高の峰である。浅間よりも高い。」
国境の高かる山に立つきみに奥白根山「厳」の姿見す
【深田日本百名山登頂の思い出・再掲】
日光の男体山と奥院ともいわれる奥白根山を登りに行ったのは、2004年か5年の9月の初めころだったか。当時仕事のため住んでいた沖縄の石垣島から大きなダイビング用のキャリアバックにテントなどの登山用具をつめ込んで初日はまず中禅寺湖畔の宿に泊まった。バスで宿に着いた頃にはすっかり暗くなっていた。たぶん羽田までの直行便でも1日がかりの移動だったのだろう。
翌日は、荷物を宿に預けて、軽装のまますぐ近くの二荒山神社を登山口として男体山頂を往復した。たしか500円か1000円の入山料を神社に支払うことになっていたが、早朝だったので誰もいなかった。帰りに支払ったかどうか記憶にない。
山頂近くまで標高差1200m、ほとんど展望のない針葉樹林帯の登り一方であまり楽しくない登山だったと記憶しているが、山頂からの中禅寺湖や爆裂火口の風景を楽しんで駆け下りたと記憶している。
男体山を下りた後、中禅寺湖畔から湯元温泉にバスで移動し、環境省管理の湯元キャンプ場に二泊することにして、奥白根山を翌日日帰りで往復してきた。奥白根山には昨年(2020年)再訪したが、15年前は元気が余り過ぎていたせいか、前白根山経由の往復がまったく苦にならなかったが、昨年はえらい時間がかかって、夜明けとともにテント場を出たのに、テント場に帰った時は黄昏時だった。奥白根ってこんなにきつい山かとキツネにつままれた気分だった。
コースは前白根からいったん下ってまた登り返すというアップダウンもあるが、帰りに瑠璃色の五色沼に立ち寄るなど変化に富んで眺めも良く、男体山登山の数倍楽しめる山だ。
前白根から気持ちのいい稜線が白根隠山(2410m)まで伸びて踏み跡もあるようなので、またこの山域に行ってみたいが、山頂付近まで増えすぎたシカさんが跋扈しているせいか、ヤナギランはじめ貴重な高山植物が食い荒らされているのが気になる山域ではある。。
キャンプ場から歩ける距離に日帰り温泉が多数あり、なかなかの立地だ。奥白根に楽に登れる丸沼方面へのバスも走っていて、ここから尾瀬へと繋ぐのもいいのだろう。
戦場ヶ原から男体山を望む。この原特有のホシザキシモツケが満開。
夏盛り 原より男体山問へば ホシザキシモツケ あかき指さす
前白根から奥白根と眼下の五色沼を仰ぐ
鹿群は 食い荒らしけり 花の園 奥白根山 道なほ遠し