2月8日(水)☼
2月8日と言えば反射的に「2・8独立宣言書」を思い出します。1910年の「併合条約」から9年、東京に留学していた朝鮮人学生らが神田の基督教青年会舘に拠って独立を宣言したのです。
この宣言書はやがてソウル(当時は京城と改称されていた)の「3・1独立宣言」となり、中国の五四運動にも影響を与えたといいます。
遠い昔、この宣言書を初めて読んだとき、「敵国」の首都のど真ん中で独立の声を挙げた青年らの勇気に深い感動を覚えたものです。
1945年8月、朝鮮は解放されましたが米ソなどの外勢によるもので、独立を自力で勝ち取ったとは言えません。そのために今日に至るまで南北分断を余儀なくされ、「反日」がまるで痙攣のように繰り返されています。
この「不幸」そのものの歴史を知らないため、日本人はただただ戸惑い「嫌韓感情」に支配されたり、「贖罪意識」に絡みとられてしまったりしています。
20世紀初頭の東アジアに身を置いて日本と朝鮮の関わりを学んでみることが私たちには必要です。この文章も歴史的文書として学びの対象から欠かすことはできません。
★「2・8独立宣言書」全文 ★ (1919.2.8 朝鮮基督教青年会館)
朝鮮青年独立団は,わが二千万の民族を代表して,正義と自由の勝利をえた世界万国の前に,われわれの独立を期成することを宣言する。
四千三百年の長い歴史を有するわが民族は,実に世界最古の文明民族の一つである。時には中国の正朔を奉じることがあっても,これは両国王室の形式的な外交関係に過ぎず,朝鮮はつねにわが民族の朝鮮であり,いまだかつて一度たりとも統一国家を喪い,異民族の実質的支配を受けたことはなかった。 日本は,朝鮮が日本と唇歯の関係にあることを自覚していると称し,一八九四年,清日戦争の結果をもって,朝鮮の独立を率先承認した。アメリカ,イギリス,フランス,ドイツ,ロシアなどの諸国も独立を承認するのみでなく,これを保全することを約束した。
朝鮮もその恩義に感じ,鋭意諸般の改革と国力の充実とを図ってきた。
出所)写真は「独立宣言書」が読み上げられた当時の朝鮮基督教青年会館(左)と現在の在日本韓国YMCA会館(右)。
当時ロシアの勢力が南下し,東洋の平和と朝鮮の安寧を脅かしたとき,日本は韓国と攻守同盟を締結して露日戦争を始めた。東洋の平和と韓国の独立保全とはこの同盟の主旨であったから,韓国はいよいよその好誼に感じ,陸海軍の作戦上の援助はできなかったけれども,主権の威厳さえ犠牲にして可能なあらゆる義務を尽くし,東洋の平和と韓国独立の二大目的を追求したのである。
ついにその戦争が終結し,当時のアメリカ大統領ルーズベルトの仲裁によって講和会議が開かれると,日本は同盟国である韓国の参加を許さず,露日両国代表者の任意で,日本の朝鮮に対する宗主権を議定した。日本は優越した兵力を恃み,韓国の独立を保全するという旧約に違反し,ひ弱な韓国皇帝およびその宗主権を威嚇,欺瞞し,国力が充足し独立をえるべき時期までという条件で韓国の外交権を奪い,これを日本の保護国となし,韓国をして世界列国と直接外交する道を断ち,相当の時期までという条件で司法・警察を奪い,さらに徴兵令実施までという条件で軍隊を解散させ,民間の武器を押収して日本の軍隊と憲兵警察とを各地に配置した。甚だしきは皇宮の警備までも日本人の警察を使用するに至った。
こうして朝鮮を無抵抗なものにし,わが明哲の誉れある光武皇帝を放逐して,精神の発達が充分でなかった若年の皇太子を擁立して利用し,日本の走狗をもっていわゆる合併内閣を組織し,ついに秘密裡に武力をもって合併条約を締結した。ここにわが朝鮮民族は,建国以来半万年にして,われらを指導し援助するという友邦の軍国的野心の犠牲となった。実に日本の韓国に対する行為は,詐欺と暴力から出たものであり,このような大がかりな詐欺の成功は,世界興亡史上に特筆されるべき人類の大恥辱といえよう。
保護条約を締結するとき,皇帝と賊臣に非ざる幾人かの大臣はあらゆる反抗手段を尽くし,その発表後も全国民は素手で可能な限り反抗をした。司法・警察が奪われ,軍隊が解散されたときもまたそうであった。こうして合併時にあっては,身に寸鉄の武器を帯びないにもかかわらず,可能な限りあらゆる手段を尽くして反抗運動を試みたが,精鋭な日本の武器により犠牲となった者は数知れない。来十年間,独立を回復しようとする爾運動で犠牲となった者の数もやはり数十万に達した。かの悪毒な憲兵政治のもとに手足と口舌をかんじがらめにされながらも,継続して独立運動の絶えたことはなく,これをみても,韓日合邦が朝鮮民族の意思ではないことを知ることができる。
このようにわが民族は,日本の軍国主義的野心の詐欺暴力のもとに,民族の意思に反する運命に負わされたので,正義により世界を改造するこの時にあたり,その匡正を求める当然の権利がある。また,世界改造の主人公であるアメリカ・イギリスは,保護と合併とを率先して承認したという理由をもって,この時にさいしてその旧悪を贖う義務を有する。
また,合併以来の日本の朝鮮統治政策をみると,合併当時の宣言書に反してわが民族の幸福と利益を無視し,征服者が被征服者に対する古代の非人道的政策を襲用し,わが民族に対し参政権,集会・結社の自由,言論・出版の自由などを許さず,甚だしくは信教の自由,企業の自由までも少なからず拘束している。行政,司法,警察などの諸機関は,朝鮮民族の私権までも侵害し,公私にわたってわれわれと日本人との間に優劣の差別を設け,わが民族には日本人に比して劣等の教育を施することにより,わが民族を永遠に日本人の使役者にしようとしている。
さらに,歴史を改造してわが民族の神聖な歴史的伝統と威厳を破壊,凌辱し,少数の官吏を除いては政府の諸機関と交通,通信,兵備などの全機関において,全部あるいは大部分日本人を使い,わが民族に対して永遠に国家生活の智能と経験をえる機会を失わせた。われわれは,このような武断専制,不正,不平等の政治のもとでは生存と発展を享受することができない。
それだけではない,元来人口過剰な朝鮮に無制限の日本人の移民を奨励,補助したため,土着のわが民族が海外に流離するほかないようにしむけた。また,政府諸機関はもちろん,私設の諸機関にまでも日本人を使用し,その一方で朝鮮人の富を日本に流出させ,商工業においても日本人にのみ便益を与えて,わが民族に産業勃興の機会を失わせた。このように,どの方面からみてもわが民族と日本との利害は相互に背馳し,その被害を受けるのはわが民族なのであるゆえに,わが民族は,生存の権利のために独立を主張するものである。
最後に,東洋平和の見地からみるならば,最大の脅威であったロシアはすでにその軍国主義的野心を抛棄し,正義と自由と博愛とした新国家の建設に従事している最中であり,中華民国もまた然りである。その後に国際連盟が実現して,再び軍国主義的侵略を敢行する強国はなくなるであろう。
そうであるならば,韓国を合併した最大の理由が消滅したばかりか,これにより朝鮮民族が数々の革命の乱を起こしたならば,日本に合併された韓国はかえって,東洋平和の禍根となるではないか。わが民族はただ一つの正当な方法によって,わが民族の自由を追求しつづけるものである。もしこれが成功しなければ,わが民族は生存の権利のために自由な行動をとり,最後の一人に至るまで必ずや自由のために熱血を注ぐであろう。これがどうして東洋平和の禍根とならないであろうか。わが民族は一兵ももたないので兵力をもって日本に抵抗する実力がない。日本が万一,わが民族の正当な要求に応じないならば,わが民族は日本に対して永遠の血戦を宣言せざるをえない。 わが民族は久遠な高尚な文化を有し,半万年にわたって国家生活の経験をもっている。たとえ多年の専制政治下の害毒と境遇の不幸が,わが民族の今日を招致したにせよ,正義と自由にもとづく民主主義の先進国の範にとり,新国家を建設したのちには,建国以来,文化と正義と平和を愛好するわが民族は,必ずや世界の平和と人類の文化に対して貢献するものと信ずる。
出所)写真は「2・8独立運動」の志士たち。
ここにわが民族は,日本および世界各国がわが民族に民族自決の機会を与えることを要求する。万一然らざれば,わが民族はその生存のために自由の行動をとり,独立を期成することを宣言するものである。
西紀一九一九年二月八日
在日本東京朝鮮青年独立団代表
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