不朽の名作『ハスラー』(1961)
から。
オープニング間もなく、エディ
(ポール・ニューマン)とチャー
リーの二人組は伝説の世界最高
の撞球師であるニューヨークの
ミネソタ・ファッツ(ジャッキー・
グレースン)と対決する為にカリ
フォルニアから車で旅を続けて
いた。
ピッツバーグに向かう道中、車の
メンテで立ち寄った町で、二人は
ビリヤードテーブルがあるグリル
で客と店主を騙してカモる。
さもど素人が酒に酔ったふりを
して、難球を取れるか取れないか
で掛けるのだ。
何度も失敗する。わざと。
そのたびに掛け金を上げて行く。
エディの相方のチャーリーは
「もうよせ。見てられない」と
小芝居を打って更に客と店主を
騙す。
エディはグデングデンの風を装っ
て「これで持ち合わせ全部だ。
どうだ。次の球に掛けてみろ」と
芝居を打つ。
店主が大金を掛けた。
だが、撞球師エディにとっては、
難球に見えるその配置などは、
なんなく取れるくせ玉でしかなか
った。
キューを構えるエディは不敵な
笑いを浮かべながらキューを出す。
そこから物語が始まるのだが、
この作品のメインの舞台となる
NYの大型プールホールのエイムス
は現在は存在しない。
1910年頃のビルで、店内は吹き抜
けで贅沢な階段で上のフロアのプ
レーエリアにも行ける。
全部で玉台は50台近くある大型
店舗だ。今は無い。
日本の東京でも、建物こそ新しい
が似たような超大型店舗があった。
それは国電飯田橋駅のそばで、
ビルの7階まで全階ビリヤード店
だった。今は無い。店名はビリヤ
ード・ジャパンといった。
新宿の風林会館もサムタイムも
スポーツランドも高田馬場の
山水さえも今は無い。
老舗大型店は軒並み閉店している。
昔からの店で現在も存続して
いるのは池袋のピンクビルの
ロサ会館と馬場山水本店と新宿
アシベと渋谷のCUEくらいか。
早大前のビリヤードイナホは
まだやっているようだ。
大昔は箱台だったが、今はブラ
ンズウィックの模様。イナホさん
は1954年創業。
映画『ハスラー』(1961)のオープ
ニングでエディがカモる店。
イリノイ州のワトキンスという町。
そのグリルの建物は現在は空き地
になっている。隣のビルはそのまま
だが廃墟。
駅の待合室で知り合った年が
いった女子大生サラの高層
アパート。
現在。入り口部分は地下に改造されている。エディがサラと恋人関係になり、食事に行ったレストラン。現在。入り口は1961年のままだ。
レストランでサラはシェリーを
頼む。
するとエディは「シェリー!?」
といぶかしがる。そんな気取った
物を頼むのか、という風に。
インテリのサラはふっと笑う。
学校にも行ってなかった無学な
エディはシェリーの酒言葉が
「私をこのあと好きにして」と
いうものである事を知らなかっ
たのだ。
だが、サラはそんな無学だが
自分に正直で直情型のエディ
を愛していたのだった。
このレストランのシーンはかなり
重要。
大勝負の大舞台となる伝説の
撞球師ミネソタ・ファッツ
(ミネソタのデブ)が常連の店、
シカゴのプールホール。
だが、原作と違い、映画ではNY
の実在巨大店舗がロケに使われた。
1961年当時でもかなり古い建物
と古い形式の撞球場であり、映画
製作者はロケハンで玉屋を見つけ
た時には大喜びしたという。
店名は映画でも実名と変更せずに
AMES(エイムズ)としていた。
2階部分まで直線の階段で外から
入ってくる。このバーバードアの
ようなドアは、日本でも凝った
古めかしいバーや撞球場には多
かったのだが、最近とんと見ない。
右側に女優さんのようなご婦人が写っているが、そういう街。この建物、ホテルクラリッヂはニューヨーク州マンハッタンのタイムズスクエアにあった。ブロードウェイと44番街の南東の角にある16階のビルで、最初はホテルレクトルとして1910年に建築され1911年にオープンした。レンガ建築だ。最初立てられた14階建てのビルには240の客室があった。1972年にビルが解体されるまで61年間稼働していた超老舗ホテルビルだった。1940年時のホテルクラリッヂ。現在はプールホールAMESがあった
クラリッヂホテルビルの跡地には、
1500ブロードウェイビルが建って
いる。ここは映画と演劇と音楽の街だ。
ニューヨーク、ニューヨーク。よろしかったらこちらもどうぞ。『ハスラー』について、私が原作小説とシナリオと映画作品を比較考察したものです。
原作・シナリオ・映画作品、その差異 ~映画『ハスラー』(1961年)~ - 渓流詩人の徒然日記
映画『ハスラー』(1961)について、原作(日本語訳)、シナリオ、映画作品(英語版、日本語吹き替え版)の四者の描写の違いを検証してみる。とい...
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