1980年代の押江(おさえ)さん。
オサ坊のペンネームで専門雑誌
ベストバイクのライターもやって
いた。
劇画『バリバリ伝説』のモーター
サイクルアドバイザーでもある。
バリ伝主人公のグンのヘルメット
はグンヘルではなく、オサ坊の
ヘルメットが原型。本当はグン
ヘルではなくオサヘルなのだ。
2023年の今から40年前の話。
この下の記事を2014年に書いた
直後、オサ坊こと押江さんご本人
から突然連絡をいただき、「バリ
伝についてこれほど正確に書いて
いる文章は見たことがありません。
ありがとう」との旨言われた。
Gus Szamboti Legend Cuemaker
ザンボッティ本人が自ら解説して
いる歴史的にとても貴重な映像。
長曾祢虎徹が説明しているよう
なもの。
ガス自身が説明しているが、この
ガスザンボのファンシーモデルが
950ドルである。1ドル200円台と
しても20万円程。一般的キューが
5万円の時代、適正価格だ。
1980年代中期あたりまではそんな
値段。
その後、日本人と中国人台湾人が
買い漁り、また、アメリカ人も
「投資目的」でサプライヤーが
市場価格を大幅に吊り上げた。
今ではガス・ザンボッティのキュー
は1,500万円程する。
ハギがまともに綺麗に作れない
息子のバリー・ザンボッティで
さえ1本700万円ほどする。
誰が買うのか。
誰が使うのか。
ゼニカネ目的の連中によって、
素晴らしいプレーアビリティを
持っていたガス・ザンボッティ
のキューは、投資目的の飾り物
にされてしまった。
最近ではTADのキューもそうされ
て来ている。
1本20万円ほどで買えたTADは、
どんどん値上がりした。40万円
時代が長く、その後は70万円時
代が続いた。
そして今ではTADキューは1本が
180万円程する。
とてつもなく馬鹿げた話だ。
1980年代にはプレーンの中古TAD
は個人売買で5万円程だった。
それでもまだTADはキューとして
プロやアマがプレーに使っている
からよい。
ザンボッティに至っては、もう
ただの飾り物の高額オブジェに
されてしまっている。
キュー製作者はそんな事を望んだ
だろうか。
バリー・ザンボッティは望んでい
るのかも。年間数本しか作らなく
てそれで生活できているし、それ
以上は作りたくないようだし。
卸値が1本500万円のキューを6本
作れば3,000万円の年収。充分に
暮らしていける。
要するに、多くの人に自分の作った
キューを使ってほしいという気は
バリーには無いようだ。
TADコハラは多産だった。
プロのトッププレーヤーの意見を
真剣にいつも聞いて、そしてそれ
をキューに投影させて多くのキュー
を作るようにしていた。とても廉価
で。
そしてTADキューは優れた性能に
よって多くの腕利きたちに求めら
れた。それがTADだった。
日本刀もそうだが、投資目的という
金銭換算価値で日本刀やキューを
捉える感覚や行為は、それは日本刀
やキューを愛しているのではなく、
金と利益を愛している。別に日本刀
もキューも好きではない銭ゲバで
あるだけだ。
本質的には、そうした人間は日本刀
やキューの世界とは無縁な者なので
ある。部外者。