今日、初めて見た、一風変わったレイアウトの、写真。
今日、母親が横浜に写生に行っていたようで、「家にいるなら、帰りにちょっと寄っていい?渡しておきたいものがあるし、その大きなテレビとやらと、自慢のキッチンとやらも見てみたいし(笑)。」とメールがあり、夕方、本当にやってきました。うーむ、どうやらブログ、時々読まれているらしい(笑)。
ひとしきり部屋を見回した後で、
「はい、これ。」
と、テーブルに置かれた十数枚の写真。そこには、僕が。
一番小さい僕は、エコーの写真。まだ生まれてもいない、彼女の身体の中にいました。そして、やっと首が坐った頃や、端午の節句なのか、兜の前で正座してる写真、それにもうすこし大きくなってからの、今日の写真のものなどでした。そして、幾枚かの写真には・・・父親が写っていました。
僕はなぜか、父親の写真は一枚も持っていませんでした。というか、今日、初めて見たような気すらしたんです。でも、そんなことはないんです。昔住んでいた家の仏壇にもあったし、アルバムを見せてもらったことも、一度や二度はあったと思います。でも、どうしても記憶にハッキリと、顔が浮かばなかったんです。浮かばないというか、根付かなかった、というか。まさに、今日まで。
もしかしたら、「父親」というものが、僕の一番古い記憶のどこ探しても見あたら無いので、どうしても自分で存在が実感できなくて、写真を見ても「へー、そうなんだ」位にしか思えなかったからかもしれません。でも、もしかしたら、何らかの理由で、もう写真の中だけに存在しないその人を、父親と認めることを、どこかで避けていたのかもしれないな、とも思います。
今日、この年齢になって、改めて見た父の在りし日の姿を見て、僕は軽いショックを受けました。今までも、母や伯母が「本当に生き写しのように似てるのよ」って言っていた理由が、ようやく実感として解りました。写真の中の父親は、僕が生まれた35歳の時から、突然の死を迎えた37歳までのもの。
「ホラ、この手の形なんかも見て。物を持ったときに親指がちょっと反るのも、同じでしょ」
言われるまでもなく、それにはすぐに気付いてました。もう、どの写真も、まるで自分を見ているようでした。どの写真の父親の目も、赤ん坊の僕をあやしている時のちょっとすぼめた口の形も。「ああ、この顔、やるな」って。「あなたも一緒だったのか」って。・・・いや、順番が逆ですね。僕が、彼と一緒のことを、知らず知らずのうちにしてるんですね。
自分の出自を、今日、やっと自覚できたような気がしています、さっき、ショックを・・・と書きましたが、実はショックと同時に(あまりにそっくりだったので、という意味です)、今、すごい安堵感を覚えているんです。そうだよな、ちゃんと僕にも、父親がいたんだな、っていう。
今日のトップに載せた写真を見ながらも、
「あんたが名前を呼ばれて袖から出てくる時でしょ。その時の歩き方が、また本当にに気持ち悪いくらいに(笑)、あの人そっくりでね。○美(←伯母)と二人で笑っちゃったの憶えてるわよ。」
この写真は、5歳の時、ピアノを習い始めた最初の年のもののようです。写真と一緒にとってあった、という発表会の黄ばんだパンフレットを見ると、僕はまだ最年少で、弾いた曲目はシューマンの「かりうどの歌」と、イギリス民謡の「じゃれるねこちゃん」ということですが、勿論、どんな曲だったのかなんて、これっぽっちも憶えておりません。こんな発表会に出た事すらも、「まるで記憶にございません」、ですから(笑)。
しかもあんまり、ピアノ、好きじゃなかったし。なにが面白いんだか、わからなかったし。練習はめんどくさいし、先生の所にいくのも億劫だし。周りの子たちは、上手に課題曲を弾いてるけど、僕は「なんだーこれー、ヤダー、音符多いー。」でしたから(←口には出しませんでしたけど)。きっと先生からしたら、困った君だったハズです。
しかし、そう考えると、まさか、ですよね。
今、こうしてピアノを弾いているのが。そして、きっとそのそっくりの歩き方で、今も袖から皆さんの前に出ていってるなんて。人生、どこがどうして、どうなるのやら。今までのことも全部小さな点と点細い繋がりで、そしてこれからも、その線の分岐の連続なのでしょう。
ちょっとまた、話があの事件の事になりますが。
・・・だからこそ。
その線を、誰かに、断ち切られるなんてことがあったら。
一枚の、今は亡き父親が撮ったという僕の写真を見ながら、僕の視点はいつしか、父親のものになっていました。
・・・もし、この子供が、殺されたら。
怒りで涙が出そうになったので、写真を伏せました。
母親と駅で待ち合わせて、うちに来る前に一緒にスーパーに寄った時、「あら、これ安いわね。明日の朝ご飯に買って帰ろう」と、鮭の切り身を買った母。うちで、「これ、ちょっと冷蔵庫に入れておいて。帰りに持って帰るから。」と言ってたのに、・・・やはり、と言いますか、今も冷蔵庫にあります(笑)。
おっちょこ・・・は、間違いなく母の遺伝のようです。とか言って、父親が実はもっと凄いおっちょこだったら・・・どうしよう(笑)。ってか、三切れもある切り身、どうしよう(笑)。
ではー。