アメリカはオバマ政権で変わったのか?
ノーベル平和賞を受賞したくらいだから「戦争」から「平和」へとの舵取りを着実になしているのか?否である。イラク撤兵のスケジュール延期、アフガニスタンへの増派兵と、「平和」とは相反する政策を打ち出し、国民皆保険制度への模索も停滞し、支持率急落と聞く。が、そもそもあのブッシュからオバマになったからといってアメリカという国がすぐに変わるものなのか、すぐに変わっていいものなのか。
堤未果『ルポ貧困大国アメリカⅡ』はさきにⅠで明らかにした(http://blog.goo.ne.jp/kenro5/e/499c1c32efe16ee11fad4293a5f51701)、教育の民営化を基本的人権の範疇外であるとされる刑務所にまで拡げたアメリカの病理を詳しく伝える今最も有益かつホットな報告である。
刑務所の民営化。日本でも山口県の刑務所が民間委託になり議論があったが、堤さんの描くような姿にはなっていないことを望みたい。それくらいアメリカの刑務所実態ははすさまじい。さきに「基本的人権の範疇外」と記したが、刑務所はある程度人権が制約されることが前提とされている(日本国憲法でも通説ではそれは自明の理とされているようである)。
アメリカの受刑者は一生債務奴隷である。塀の外の最低賃金は適用されず、雀の涙の賃金で働かされ、刑務所での備品の利用はすべて有料、トイレットペーパーまで。それも塀の外では考えられないくらいの高額で。受刑者にとって希望のない「極めつけ」はスリーストライク法。軽微な犯罪でも3回有罪を受けたら自動的に終身刑になるというもの。これでは車上荒らしや自転車等を3回しただけで終身刑になってしまう。車上荒らしも自転車等もよくはないが、少年が犯すような罪。18歳で捕まり、それで一生刑務所生活とは。そしてそのような罪を犯すのは黒人、カラードなど多くは下層階級。そして、現在刑務所ビジネスは興隆を極めているという。なにせ最低賃金の適用除外、労働法の範疇外。刑務所で稼ぐ賃金では身の回りの備品や、被害弁償に追いつかないからクレジット契約で支払うが債務は増えるばかり。出所した頃には収監されたときよりも借金を抱えていて、もともと高給の仕事などにありつけない身の上に刑務所出の就職難、さらに手っ取り早く危ない仕事に手を出してまた刑務所へ。スリーストライク法が目指した!低廉労働力の確保に成功というわけである。もちろん反抗も労働争議もない。労働力を安くあげるのにこんなにいい方法はない。刑務所ビジネスに手を出す企業は数多、競争も激しいとまで。
刑務所ビジネスは多岐にわたる。昔ながらの手作業による製造業はもちろん、女性受刑者の現場にはコールセンターまであるという。英語ができるから。
みんながみんな「犯罪者」になるわけではないが、借金が個人をねらい打つというのは現実で、とにかくお金がかかる。いい仕事に就こうと大学出になろうと思えば。大学の入学金、授業料ももちろんローンも組めるし、奨学金もある。しかし、貸与であって給付ではない。その高額たるや。卒業はしたものの全ての人に「いい仕事」があるわけではもちろんない。学費ローンの返済に追われ、スキルアップどころではない。
そしてアメリカの破産をもっとも端的に示しているのが医療破産。国民皆保険のないアメリカでは、医療費はすべて自分持ち。そのリスクを分散させようと民間の医療保険に入れるのは高給層。貧者の医療をになう誠実な医療機関は、こげついた医療費を自ら回収せねばならず、企業経営である医療機関はその重みに潰れていく。もちろん金儲け主義ではない医療機関につとめる医師、看護士らはすさまじい労働過剰のなかで壊れていく。すると競争に勝てない地方の医療機関は減り、ますます医療格差は広がっていく。
おいおい、日本はアメリカを見事に追いかけているのではないか。日本では国民皆保険がせめてのセイフティネットであるが、これもどうなることやら。
堤さんの取材はどれもホットでかつ冷静だ。現実をそのまま伝えるというジャーナリズムの根本を押さえているからだろう。もっともっと現実を伝えて欲しい。そして、日本との比較やこれからの指針(ないかもしれないが)も示してほしい。
でないと、もうこの国はアメリカになっている。辺野古の問題を言うまでもない。ここはアメリカの属国だから。
ノーベル平和賞を受賞したくらいだから「戦争」から「平和」へとの舵取りを着実になしているのか?否である。イラク撤兵のスケジュール延期、アフガニスタンへの増派兵と、「平和」とは相反する政策を打ち出し、国民皆保険制度への模索も停滞し、支持率急落と聞く。が、そもそもあのブッシュからオバマになったからといってアメリカという国がすぐに変わるものなのか、すぐに変わっていいものなのか。
堤未果『ルポ貧困大国アメリカⅡ』はさきにⅠで明らかにした(http://blog.goo.ne.jp/kenro5/e/499c1c32efe16ee11fad4293a5f51701)、教育の民営化を基本的人権の範疇外であるとされる刑務所にまで拡げたアメリカの病理を詳しく伝える今最も有益かつホットな報告である。
刑務所の民営化。日本でも山口県の刑務所が民間委託になり議論があったが、堤さんの描くような姿にはなっていないことを望みたい。それくらいアメリカの刑務所実態ははすさまじい。さきに「基本的人権の範疇外」と記したが、刑務所はある程度人権が制約されることが前提とされている(日本国憲法でも通説ではそれは自明の理とされているようである)。
アメリカの受刑者は一生債務奴隷である。塀の外の最低賃金は適用されず、雀の涙の賃金で働かされ、刑務所での備品の利用はすべて有料、トイレットペーパーまで。それも塀の外では考えられないくらいの高額で。受刑者にとって希望のない「極めつけ」はスリーストライク法。軽微な犯罪でも3回有罪を受けたら自動的に終身刑になるというもの。これでは車上荒らしや自転車等を3回しただけで終身刑になってしまう。車上荒らしも自転車等もよくはないが、少年が犯すような罪。18歳で捕まり、それで一生刑務所生活とは。そしてそのような罪を犯すのは黒人、カラードなど多くは下層階級。そして、現在刑務所ビジネスは興隆を極めているという。なにせ最低賃金の適用除外、労働法の範疇外。刑務所で稼ぐ賃金では身の回りの備品や、被害弁償に追いつかないからクレジット契約で支払うが債務は増えるばかり。出所した頃には収監されたときよりも借金を抱えていて、もともと高給の仕事などにありつけない身の上に刑務所出の就職難、さらに手っ取り早く危ない仕事に手を出してまた刑務所へ。スリーストライク法が目指した!低廉労働力の確保に成功というわけである。もちろん反抗も労働争議もない。労働力を安くあげるのにこんなにいい方法はない。刑務所ビジネスに手を出す企業は数多、競争も激しいとまで。
刑務所ビジネスは多岐にわたる。昔ながらの手作業による製造業はもちろん、女性受刑者の現場にはコールセンターまであるという。英語ができるから。
みんながみんな「犯罪者」になるわけではないが、借金が個人をねらい打つというのは現実で、とにかくお金がかかる。いい仕事に就こうと大学出になろうと思えば。大学の入学金、授業料ももちろんローンも組めるし、奨学金もある。しかし、貸与であって給付ではない。その高額たるや。卒業はしたものの全ての人に「いい仕事」があるわけではもちろんない。学費ローンの返済に追われ、スキルアップどころではない。
そしてアメリカの破産をもっとも端的に示しているのが医療破産。国民皆保険のないアメリカでは、医療費はすべて自分持ち。そのリスクを分散させようと民間の医療保険に入れるのは高給層。貧者の医療をになう誠実な医療機関は、こげついた医療費を自ら回収せねばならず、企業経営である医療機関はその重みに潰れていく。もちろん金儲け主義ではない医療機関につとめる医師、看護士らはすさまじい労働過剰のなかで壊れていく。すると競争に勝てない地方の医療機関は減り、ますます医療格差は広がっていく。
おいおい、日本はアメリカを見事に追いかけているのではないか。日本では国民皆保険がせめてのセイフティネットであるが、これもどうなることやら。
堤さんの取材はどれもホットでかつ冷静だ。現実をそのまま伝えるというジャーナリズムの根本を押さえているからだろう。もっともっと現実を伝えて欲しい。そして、日本との比較やこれからの指針(ないかもしれないが)も示してほしい。
でないと、もうこの国はアメリカになっている。辺野古の問題を言うまでもない。ここはアメリカの属国だから。