ベルリンは、東西に分かれていたときそれぞれの美術館を持っていたため、統一した時には互いにテーマや時代が似たような美術館が数多くあった。現代都市として変貌するベルリンの課題のなかにこの重複する美術館の整理があった。世界遺産として登録される博物館島にあるいくつかの美術館群も含め、これらの美術館が整理統合、改修されるのは2015年を待たなければならないという。そのすべての作業が終わるまでは待っていられない。それで5年ぶりにベルリンを訪れたのだ。そして今回のベルリン訪問で一番行きたかった美術館が国立絵画館(ゲマルデガレリー)である。
と言うのは、もともと近現代美術が見たいがためヨーロッパまで行くようになったのだが、西洋絵画はキリスト教(聖書)がわからないと全然面白くない。そして、この絵画館で大げさに言えばキリスト教美術に開眼したのだった。ちょうど前回訪れた際、美術館中央のホールで女性が聖歌を朗々と歌い上げていて、美術館全体にその澄み切った声が谺していたく感動したのだ。そして眼前に居並ぶ数々のキリスト教絵画。この時、もっとキリスト教のことを勉強しておればよかった、また来るぞと誓ったのだった。
なかでもあまりにも作品数が多く、見疲れてきた時に小さな作品であったが、はっと眼を覚まされた一品があった。レンブラントの「スザンナと長老」である。旧約聖書続編(外典)に出て来る美しい女性スザンナと、彼女に邪な気持ちを持った長老らがスザンナの拒否にあい、裁判官も兼ねていた長老らが死刑判決を下すが、ダニエルが長老らの矛盾を暴き彼らを死刑に処すという物語である。純血を守ったスザンナを讃えるお話ではあるが、もちろん水浴するスザンナを覗き見する長老らという主題で、画家らが裸婦を描く口実としてきた選ばれた格好の題材である。
この「スザンナと長老」のすぐ近くにあり、これも眼を開かされたのが風俗画フェルメールの傑作の一つ「真珠の首飾り」であった。国立絵画館の展示は18世紀以前の絵画に固められており、ルネサンス、バロック、ゴチックそしてロココまでである。場所がら北方ルネサンスも充実、ブリューゲルの「ネーデルラントの諺」はじっくり見たいのに一人の男性が一つ一つの諺を確認しているのだろうか、容易には絵の前を離れずいらいらしたものだ。ほかにもデューラー、クラナッハの充実ぶりは言うまでもなくそこで過ごした4時間が足の痛みさえなければ感じられないほどの魅力にあふれている。次ベルリンに来るのがいつになるかわからないが、絶対にここへは来るだろう。そして、中央ホールは本来彫刻スペースなのだが、今回は現代アートのインスタレーションが1点飾ってあっただけでバロック彫刻が展示されていなかったのは残念であった。
ヨーロッパのある程度の規模をほこる有名な美術館はたいてい訪れたが、国立絵画館はルーブルやプラド、ナショナルギャラリーに比べると規模は小さいがとても好きな美術館の一つである。ポツダム広場近辺のクルトゥーア・フォーラムには国立絵画館のほか、ノイエ・ナツィオナールガレリー(=新美術館。今回は旧館中だった)、クンストゲヴェルベムゼウム(美術工芸博物館)、銅版画ガレリーまであって全部回っていたらとても一日では終わらない。ノイエ…が開館する時を見計らってまた来ることにしよう。
ノルウェー、ドイツの美術めぐりもこれで終わりである。(写真はシャルロッテンブルク宮殿)
と言うのは、もともと近現代美術が見たいがためヨーロッパまで行くようになったのだが、西洋絵画はキリスト教(聖書)がわからないと全然面白くない。そして、この絵画館で大げさに言えばキリスト教美術に開眼したのだった。ちょうど前回訪れた際、美術館中央のホールで女性が聖歌を朗々と歌い上げていて、美術館全体にその澄み切った声が谺していたく感動したのだ。そして眼前に居並ぶ数々のキリスト教絵画。この時、もっとキリスト教のことを勉強しておればよかった、また来るぞと誓ったのだった。
なかでもあまりにも作品数が多く、見疲れてきた時に小さな作品であったが、はっと眼を覚まされた一品があった。レンブラントの「スザンナと長老」である。旧約聖書続編(外典)に出て来る美しい女性スザンナと、彼女に邪な気持ちを持った長老らがスザンナの拒否にあい、裁判官も兼ねていた長老らが死刑判決を下すが、ダニエルが長老らの矛盾を暴き彼らを死刑に処すという物語である。純血を守ったスザンナを讃えるお話ではあるが、もちろん水浴するスザンナを覗き見する長老らという主題で、画家らが裸婦を描く口実としてきた選ばれた格好の題材である。
この「スザンナと長老」のすぐ近くにあり、これも眼を開かされたのが風俗画フェルメールの傑作の一つ「真珠の首飾り」であった。国立絵画館の展示は18世紀以前の絵画に固められており、ルネサンス、バロック、ゴチックそしてロココまでである。場所がら北方ルネサンスも充実、ブリューゲルの「ネーデルラントの諺」はじっくり見たいのに一人の男性が一つ一つの諺を確認しているのだろうか、容易には絵の前を離れずいらいらしたものだ。ほかにもデューラー、クラナッハの充実ぶりは言うまでもなくそこで過ごした4時間が足の痛みさえなければ感じられないほどの魅力にあふれている。次ベルリンに来るのがいつになるかわからないが、絶対にここへは来るだろう。そして、中央ホールは本来彫刻スペースなのだが、今回は現代アートのインスタレーションが1点飾ってあっただけでバロック彫刻が展示されていなかったのは残念であった。
ヨーロッパのある程度の規模をほこる有名な美術館はたいてい訪れたが、国立絵画館はルーブルやプラド、ナショナルギャラリーに比べると規模は小さいがとても好きな美術館の一つである。ポツダム広場近辺のクルトゥーア・フォーラムには国立絵画館のほか、ノイエ・ナツィオナールガレリー(=新美術館。今回は旧館中だった)、クンストゲヴェルベムゼウム(美術工芸博物館)、銅版画ガレリーまであって全部回っていたらとても一日では終わらない。ノイエ…が開館する時を見計らってまた来ることにしよう。
ノルウェー、ドイツの美術めぐりもこれで終わりである。(写真はシャルロッテンブルク宮殿)