kenroのミニコミ

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韓国の民主主義にならう  「共犯者たち」と「スパイネーション 自白」

2019-03-10 | Weblog

1980年代、韓国はまだ軍事独裁政権そのものだった。80年は光州事件。民主化を求める民衆に全斗煥政権は軍隊を持って「鎮圧」した。後に大統領になる金大中氏にはこの民衆デモの「首謀者」として死刑判決を受ける。そのような国が、現在、民主主義の現実化という面では日本より一歩も二歩も先んじているように見える。それはなぜか。

朝鮮戦争という同じ民族が殺しあった戦争が終わったわけではなく「休戦」という状態にあって、北朝鮮は資本主義を否定する、韓国から見れば極端な王朝国家。しかし、文在寅(ムンジェイン)政権になって一気に雪解けの感がある。そもそも韓国の民主化がこのように一気に進んだのは何故か? それは軍事政権の後、金大中、盧武鉉と民主大統領がその下地を作り、李明博、朴槿恵と保守政権の揺り返しに対する批判が大きい。李明博政権の時は、アメリカ産牛肉のBSE疑惑隠しや4大河川事業汚職が、朴槿恵政権ではセウォル号事件に際順実ゲート事件。これらの政権にとっての大きなマイナス材料であるのに、KBSやMBCといった大手放送局に政権の息のかかった経営陣を送り込み、報道する記者を次々に解雇、取材の現場から放逐した。政権を脅かすスキャンダルは平穏なニュースに「着色」されて報道された。極めつけはセウォル号事件における「全員無事」報道。解雇された記者らが設立したのが調査報道専門の「ニュース打破」。そして解雇されなかった記者らは、ストに打って出、ある者は政権が送り込んだ社長を出ていけとSNSで拡散させる。そしてニュース打破記者による執拗な取材と責任追及。ロウソク革命で朴槿恵政権を倒したことは記者と市民ががっちり結びついた結果に他ならない。

一方、40年前の「在日同胞スパイ事件」から朴槿恵政権の時代に至るまで、繰り返し、北朝鮮のスパイをでっち上げてきた。拷問、虚偽自白を強要、中には自死した者、精神を病んだ者。脱北支、ソウルで公務員をしていた者をスパイ容疑で拘束し、妹に虚偽自白させる。妹は兄が無事帰ってくることを望んだが、兄が無罪を勝ち取り、釈放された時にはすでに国外退去処分の後。自死した被拘束者は氏名さえ書き換えられ、無縁仏にされる。取り調べ側=検察、証拠をでっち上げ、中国の公文書さえ偽造する。それらの事実をこれもまたニュース打破の記者はしつこく取材する。しかし、捏造を指揮した国家情報院の幹部は、誰も知らぬ、存ぜぬ、一切責任を取らない。でっち上げられた人たちが無罪となった後も。

公共放送の復活を描いた前者「共犯者たち」とスパイでっち上げを追及した後者の「スパイネーション 自白」。これらが描くのは正義とは何か、正義はいつまでも追い求め続けなければならないものだということ。韓国の最高大法院(日本の最高裁みたいなもの)を訪れたことがある。正面に大きく「民主、公正、正義」とあった。韓国の司法が、この3つを本当に体現しているかどうかは不明だが、これらのスローガンに反対する者はいないだろう。

しかし、文在寅政権以降、スパイにでっち上げられた人たちが次々に無罪となっているのは事実だ。民主主義の現実化は、市民のデモだけでも、報道の権力監視機能だけでも、司法の独立だけもない。これらの重層的な権力包囲網があってはじめてなし得るものだ。翻って、辺野古や高江などで座り込む老人らを屈強な警察官が弾圧、「公共放送」NHKは安倍政権の提灯持ち、菅官房長官は特定の記者を差別、数々の冤罪事件(そこには横浜事件などの戦前の権力犯罪も含まれる)を無視する司法と、日本の現状は韓国の民主主義より一歩も二歩も遅れていると思える所以である。

 

 

 

 

 

 

 

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