「ミンマ(巳午)」とは、「仏さんの正月」とも言われ、十二月の巳の日に、その年に亡くなった人のための正月を祝う行事である。意外と知られていないが、この行事は、四国以外では見ることのできない全国的に珍しいものである。四国内でも全域で行われているのではなく、愛媛県内では全市町村で行われるものの、香川では愛媛県寄りの西讃地域、徳島県、高知県でも愛媛寄りの四国山地や幡多郡にて行われているといった分布域がある(分布図参照)。名称については地域差があり、中・南予では「ミンマ」、東予では「タツミ」と呼んでいる。これらは、行事が行われるのが巳と午、辰と巳の日であることに起因するものである。また、越智郡では「ミショウガツ」といい、この行事が巳の日を中心に行われていることが理解できる。また、上浮穴郡や周桑郡では「カンニチ」ともいい、これは陰陽道でいう凶日である「坎日」からきているものである。十二月巳の日は坎日とされており、ミンマが陰陽道の知識から発生したと推測できるのである。
ミンマの行事内容は、地区や家々によって異なるが、八幡浜地方の一般的な内容は次の通りである。①本来は十二月に行われるが、八幡浜地方では十二月が忙しいからといって、十一月に行うことが多い。②自宅に簡単な祭壇を設け、位牌を祀り、餅、注連飾り、菓子、果物などを供える。③家族、親族が墓参し、墓前に柿の木枝を二本立て、注連縄をはり、一升餅、みかんや干柿などを供える。注連縄は左ないのものを使う。④墓前にて、死者の身の近い者が餅を後手に持ち、鎌で切って、墓参者に配って食べる、⑤その餅を食べると病気をしないという俗信がある、といった内容である。なお、双岩では、仏さんが女性の場合は巳の日に、男性の場合は午の日にミンマを行うとされ、これは四国内でも確認できない珍しい事例である。
ミンマは、仏さんの正月を祝うとされるものの、実際の正月とは異なる点が多い。門松ではなく、柿の木枝を用いること、注連縄は逆のない方であること、餅は塩あんの餅であること、餅は順手ではなく、肩越しに渡さなければいけないなど奇妙な作法があること等である。これは、正月の類似儀礼ではあるものの、あえて逆のことをして、死者のための儀礼であることをあらわしているのであろう。そして、ミンマを祝うことで死者のケガレと決別し、忌明けとするのである。この行事は家族、親族がその年の不幸を断ち切り、新たなる年を迎えるための知恵から生まれたものと言えるだろう。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます