チャコちゃん先生のつれづれ日記

きものエッセイスト 中谷比佐子の私的日記

布は生き物

2013年07月08日 11時12分31秒 | 日記
お父様の二枚の羽織を何とかしたいというMさん
おばあさまの留め袖を今に生かせないものかとHさん
二人の思いを見事に仕上げた東京友禅の染色家上田環江さん

「どうしたら良いかと考えているときに布からいろんな思いが伝わってくるんですよ」
二枚の羽織は両方とも縦縞でしかも渋い色合い
それを上田さんは縦縞に縫い合わせて見事な滝縞のような
一枚のすてきな縞模様が出来上がった
どんな織り手もココまでは考えないだろうな

そしてHさんの留め袖
当然おばあさまのものだから黒地は色が変わり羊羹色になっている
そこに元々裾模様の中で飛び散らしてある小花を一つ一つ手描きし
上半身の無地場を全部埋めてしまっていた
更に裾模様の金箔に手を入れて新品同様に

荷物を解いて出て着たその二枚のきものにセキドとチャコちゃん先生喚声!
そして胸が熱くなり涙がこぼれてきた

きものを心底愛している人でないと
こんなにスバラシイ再生は不可能
何という心の温かいお人なのだろう
早速お礼の電話を入れるがもう声にならない

「手を入れる度に布が生きかえっていくんですよそれを見るのが楽しみでーー」
さすが女流作家何回も自分の身体に布をまいて
ココをもう少しテを入れようという感じで仕上げたらしい

「白地に描く方が簡単だったでしょうに」
「それはその方がやりやすいけど、おばあさまやおとうさんも喜ぶきもの作りですもの
やりがいがありました」
パズルのように頭を使ったのでぼけ防止になったと明るく笑って下さった
有難う御座いました
コメント (2)
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