この年になって説教食らうのは幸せものだ
3か月ぶりに友人の所へ
「比佐子さんマスクしなさい」
「呼吸困難になるのよ」
「全世界でマスクをきちんとしている国は死者が少ないとテレヴィで言っていたわ、何千人と亡くなってるのよ」
「お正月お餅をのどに詰めらせて亡くなった方は10万人ですって」
「コロナで死にたくないでしょう?」
「癌でなくなる人の方が多いよね」
「まとにかくマスクはしなさい」
「はい」
「それから○○さんには注意しなさい、あなたを利用するだけだもの」
「利用されるうちが華ね」
「利用されてもいいけどきちんと稼がせてもらっていないでしょう?大体あなたは脇が甘い、だから騙されるのよ、今度も見ていて心配」
「どういうところが心配なの?」
「いいように使われて騙されそうだから」
「ハイそうならないように気を付けます」
「もうひとつ注意をしておくわ」
「へっ まだあるの?」
「そう、あなたは自分がどんな人間かわかっていないっ!」
友の声がだんだん大きくなる、テーブルをポンとたたいて
「あなたはこんなすごい本を書ける人なのよ」
とそばに置いてあったチャ子ちゃん先生の「着物解体新書」をスーと差し出す
「だから?」
「自分を軽んじている、自分の才能に感謝していない、自分に誇りを持っていない、誰にも書けないものを書いているのに自信を持っていない」
「そんなの持ってなんぼのもの?」
「そういうと思った!!だから自分の価値に見合った稼ぎ方が出来ていないのよ、私はそういうあなたを見ていて悔しい」
「ありがとーーー」チャ子やん先生の声が沈む
「この前あなたがNHKのニュースに出ていたのよね、久しぶりにあなたのりりしい姿を見て嬉しかった」
「あああれ」
「心から愛を持って着物のことを語っていたわ、あの姿が本当の比佐子さんなのよ、堂々と軽やかに自信ある姿」
「着物のことを話しているとそうなるんだ」
「私が言いたいのは、あの姿をいつも持っていなさい!ということなのよ、日常にも」
友の声が高くなり、うっすら目に涙、それを見て小さい声で
「わかった、ありがとう」
「朝から鳥の手羽と朝鮮人参を煮込んだスープを作っておいたので食事にしよう?」
友の説教が心にしみた新月の夜