現場取材をしていると「職人」は寡黙だ
その寡黙な口から話を引き出すには同じ空気を一緒に黙って吸う
だからノートなど持たない、もちろん録音もしない
そして質問をさりげなくする
そうするとぽつりとしゃべってくれる
そのぽつりの言葉を広げていく
広げるうちに「職人」は饒舌になり
自分の作ったものの解説を際限なくしゃべってくれる
「ちょっといいところに行こう」
と誘ってくれる
ここからが本当の取材になるのだが、それでもノートは持たない
ただひたすら聞いて、ときどき合の手を入れる、この時は核心に触れる合の手だ、そうすると「わが意を得たり」と話が飛躍していく
この瞬間がいい
この時を至福に感じるので「現場取材」が好き
本人の生きた年月、かかわったモノとの対話を努力もなく聞いていく身分は捨てがたい。これで人間勉強が山とできる
作り手は「哲学者」であり「思想家」だといつも思う
生きた本人からの体験経験思いをとことん聞けば、自分自身の人間力にもなる。人間力が付くと少々のことには動じない
モノづくりの人を商業的に祭り上げ、有名にしてその人のモノの値段を上げ、結局はその有名モノづくりの人を、つぶしてしまう光景をたくさん見てきた
人は金で動く、そして金でつぶれる
昔の金持ちはモノづくりの人たちを育てることに邁進した。絵画や什器、建築、農業、もちろんきものも芸術品として後世まで残る
いいものを作りたい!と渾身な力を持ってモノ作りする人が、いい暮らしができる世の中こそが本当の平和
第一次産業こそが国の基礎
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