最近、以前に増して「ツボ」というワードを目にしたり耳にしたりするようになりました。
コロナ禍において、感染予防としての免疫力維持や、心身の不調に対するアプローチとして、ツボ押しはセルフケアにとして手軽に取り入れやすいからなのかもしれません。
このツボが効く!などと銘打ったネット記事や書籍がたくさん存在しますが、中には、正しくツボのことを学んでいない人が、安易な情報発信していると思われるものがあります。
特に、このツボを押すだけでこんなに効果がある、と断言しているものについては、鵜呑みにしないように気を付けた方が良いと思います。
私は鍼灸師を目指す前、整体を学び練習している頃、ツボは簡単に学べるし押せるものだと考えていました。実際にやってみると、気持ち良さは与えられても、症状の改善はそう簡単にできませんでした。
確かに、ある程度学べばツボの位置や効果効能を知ることはできます。自分の体や家族の体に触れてツボ押しをしたりする分には問題ありません。
しかし、確実に症状を改善させていくためには、東洋医学的な診察所見の元に、どのツボを使うのかを判断し、より正しくツボの位置を探し、適切な刺激量を見極めてから刺激することが大切です。(ツボは東洋医学の考え方ですが、西洋医学の解剖学や生理学の知識も必要です。)
鍼灸師、あん摩・指圧・マッサージ師は、専門学校で基本的な知識を学んだ上で、実際に体に触れてツボを探す訓練をしていきます。私が通っていた学校ではツボを正しく見つけるための授業数が多く、しっかりとした技術を身に付けることができたのはとても大きかったと思います。
それでも、経験を重ねれば重ねるほど、ツボを正しく探りあてることの難しさを実感しています。
効果効能については、1つのツボにおいて幾つもあることがほとんどです。どのように刺激するか、他のツボも組み合わせるのか、等々、用い方によって変わります。何に一番効くのか分からない方もいると思いますが、セルフケアの場合は探しやすいツボに軽めに触れていくのが良いと思います。
いわゆる迷信のようなものの一つとして、「百会」という頭のてっぺんにあるツボが下痢になるという話があります。私も子どもの頃に、押すと下痢になるとお互いの百会を押し合ったことがありますが、私の場合は下痢になったことはありませんでした。もしかしたら下痢になった人もいるのかもしれませんが、「百会」のツボの状態と、そこへの刺激量によって起きたのではないかと思われます。
「百会」は単独で用いても様々な症状を改善できるツボです。
「百会」のツボの状態把握した上で施術しますが、私の場合は不眠症、更年期症状、頭痛などをメインに使用します。中でも一番効果が顕著なのは痔です。
「百会」と肛門周辺の部位と関係があるからです。
※鍼灸師によって解釈は様々ですが、私個人としては指圧や鍼よりもお灸が特によく効くと感じます。
鍼灸師によってツボの解釈や使用目的が異なるため、これだという正解があるわけではありません。また、1つのツボだけ用いることは少なく、幾つかのツボの組み合わせると効き方も様々なのが、本当に奥深く、面白いところです。
だからこそ、安易に押しすぎたり、適当にあちこち押したりすると、症状を改善するどころか悪化することもあり得ます。そういったリスクを知らない人が情報を発信しているケースがあるということを踏まえて、慎重に情報に接して頂けたらと思います。
最後に、ネットや本にはあまり書かれていない、ツボを見つける際のコツを書いておきます。(あくまで私の考えなので、ご参考までに。)
どのツボにおいても、指先を使って触れていきますが、できれば触り始めはツボの周囲を指全体を使って、そっと撫でるように触るのが良いと思います。何度か撫でさするようにしていると、少し冷えていたり、フニャッと柔らかい感じがしたり、あるポイントだけ周囲の状態と異なる部分を見つけられるはずです。なかなか見つけられない場合は、手に力が入っていることが多いので、肩の力を抜いて再度触れてみてください。
同じツボでも、その日の体調や気候によって変化することが多いので、そうした変化を見つけるのを楽しみながら、セルフケアにツボ押しを取り入れて見てくださいね。
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