実りの季節がやってきた。植物たちには人の「気」をも結実させる力を秘めているという。漢方に詳しい堀田清・北海道医療大薬学部准教授が同大北方系生態観察園・薬用植物園(当別町)で撮影した写真とともに、「植物エネルギ-」を紹介するシリ-ズ第2部は秋編。
漢方で病気予防の基本は四季を通して自然と調和することです。北海道は春・夏・秋・冬がはっきりしているので、まさに漢方の教えにかなった大地と言えます。秋は「容平」。春に芽生え夏は成長したものが、秋の冷気によって葉は色づ゛き実は熟して1年分のエネルギ-を貯蔵し冬に備える季節です。まさに万物が成熟して結実し、容=かたちが平定する時期なのです。真っ黒に色づいた実を付けるオオアマドコロの秋は、「容平」そのものです。カタクリのような春の短命植物たちは、芽出しから2ヵ月ほどで花を咲かせ種を付けて地上から姿を消してしまいます。オオアマドコロの場合、芽出しは同じ時期ですが、秋までじっくりと時間をかけて実を熟させて、次世代につなぐ種を残すのです。オオアマドコロの春の芽出しは山菜として食べられます。また秋の根茎は、玉竹、葳蕤(いずい)といい、口の渇き、せき、のどの乾燥感を伴う感冒や気管支炎の際に、豆豉(ずし)(大豆の種子を蒸して発酵させ乾燥したもの)・葱白(そうはく)などといっしょに漢方方剤「加減葳蕤湯」に配合される大切な生薬です。
ほりた・きよし 58年、日高管内浦河町生まれ。北海道医療大薬学部卒業。北大大学院薬学研究科修了。95年から現職。