根から実まで漢方効果
10月中旬。森の植物たちの多くが、来春までの長い眠りにつこうとしています。後は白い季節の訪れを告げる初雪を待つだけです。いつものように森の植物たちに会いに大学の薬用植物園を通り過ぎようとしたら、つやのある真っ赤に熟したクコの実がいくつもぶら下がっているのを見つけました。短い秋の日差しを楽しんでいるかのようです。クコは北海道には自生していませんが、漢方ではとても大切な薬用植物です。世界最古の薬草に関する書「神農本草経」の中でも、上位にランクされて枸います。薬用部分は根皮(地骨皮)、葉(枸杞葉)、実(枸杞子)と、根から実まですべてが重要な生薬となります。特に枸杞子は、漢方では肝と腎の気を補い、視力低下予防、目まい、腰から下の倦怠感、性機能障害に効がありますから、太古の昔から不老長寿、抗老薬とされてきたこともうなずけます。中国の薬膳料理には欠かせなぬ植物でもあります。(堀田清・北海道医療大准教授=写真も)