冷えた胃腸を温め回復
漢方でいうところの粛殺の気(冷気)が入り込む秋。多くの植物たちが、地上での活動を終えようとしています。冷気漂う晴れた早朝、大学の薬用植物園では、朝露にぬれた白いオケラの花が朝の日に輝いていました。道内では自生していないオケラの根茎白朮といい、体の中に滞った水をそばき、胃腸の元気を取り戻す作用があります。国土が森林におおわれている日本は、きれいな飲み水が豊富な世界でもまれな国です。しかし、漢方では、「水を多飲する」=「胃腸が冷える」=「元気が出ない」ことになります。さらに日本は四方を海に囲まれているため、常に湿気で胃腸に水が貯留(水滞)し、胃腸が冷える(脾虚)ことになります。白朮はチョウセンニンジンといっしょに用いるとさらに効果的で、これらが配合された六君子湯は胃腸を温め、元気が全身を巡るようになります。漢方薬の代表選手で、胃腸が冷えている多くの日本人にとって最も適した漢方方剤方剤の一つです。(堀田清・北海道医療大准教授=写真も)