東北大などのチ-ム フェロモン味見して求愛
ショウジョウバエの雄は雌に求愛する際、雌のフェロモンを味見した上で、雄にしかない脳の神経回路を使って味覚情報を処理していることを、東北大などの研究チ-ムが突き止めた。求愛という、生物の本能に基づく行動を生み出す脳のメカニズムの一端を解明したのは初めてという。山元大輔東北大教授(行動遺伝学)は「(求愛のメカニズムに関して)人でも性別で脳に違いがある可能性があり、男女の求愛でも似た仕組みが働いているかもしれない」と指摘している。ショウジョウバエには、口だけでなく前脚にも味を感じる味覚細胞がある。雄の求愛行動は①前脚で雌の腹部を触り、体表の油脂を味見②片方の羽を真横で震わせ羽音で、“ラブソング”を演奏③雌が気に入れば交尾-の順。油脂がフェロモンの役割を果たすといい、山元教授は「雌の体に響く歌を奏でられるかが、雄が選ばれる重要な基準」と話す。前脚の味覚を脳に伝える神経細胞が働かない雄をつくり観察したところ、雌の味見はするものの両方の羽をだらしなく震わせラブソングに失敗。正常な雄は約9割が交尾に至るのに対し、約6割の成功にとどまった。チ-ムはこれまでの研究で、ショウジョウバエの脳の神経回路に性差があることを見つけている。正常な雄を解析したところ、味見したフェロモンの情報は雄特有の神経回路につたわっていた。この回路が羽の動きを制御することが正しい求愛につながるとみている。山元教授は「雄にしかない神経回路が、フェロモンの情報に刺激されて求愛のために働いている。脳の中の性差が何のためにあるか分かった」としている。一方、研究チ-ムは前脚の味覚細胞で味覚センサ-として働くタンパク質も発見。農作物の害虫に応用できれば、このタンパク質の働きを妨害することで、害虫を不妊化させながら人には害の少ない農薬の開発につながると期待している。