成育医療研 軟骨分解酵素を抑制
老化や免疫異常により関節の軟骨が破壊され、痛みや運動障害の症状が出る関節炎を防ぐのに重要な役割を果たす小さな分子を見つけたと、国立成育医療研究センタ-の浅原弘嗣システム発生・再生医学研究部長らが12日付け米科学誌電子版に発表した。マウスの実験で、この分子を増やすと関節炎になせにくいことを確かめた。浅原部長らは、人間やマウスの軟骨細胞に、マイクロRNAという分子の一種「mir140」が多く含まれることに注目。遺伝子操作でこの分子をほとんど持たないマウスを作り、人為的に関節炎を発症させると通常のマウスに比べて軟骨が大きく損傷した。この分子を増やすよう遺伝子操作したマウスでは、軟骨の状態が良好だった。関節炎は、軟骨を構成するタンパク質が「ADAMTS5」という酵素によって分解されるのが主な原因だが、mir140は、この酵素の働きを抑えていた。この分子をほとんど持たないマウスは、手足や尾が短くなり、動物が誕生する「発生期」の骨格形成に重要な役割を果たすことも判明した。RNAは通常、DNAの情報を写し取りタンパク質の合成を担う。だがマイクロRNAからタンパク質は合成されず、従来は「がらくた」と考えられていたが、別の働きをすることが分かってきている。