栽培・管理の技術も向上 北大大学院農学研究院准教授 川村周三さん
今や道産米は日本で一番おいしくなりました。「根拠を示せ」とよく言われます。私が1991年に全国各地のコメを集め初めて食味試験をした時は「きらら397」が6位に入る程度。ところが、2004年に再び試験をした時には「ほしのゆめ」など道産米が上位を独占しました。1回の試験では信頼性が足りないため、その後3年続けましたが、やはり同じ傾向でした。全国各地の「コシヒカリ」の多くは道産米よりも低い評価でした。ブランド力は絶大でも、特に暖かい地域で作られたコシヒカリは食味に劣るなど、品質のばらつきが大きいのが実情です。道産米の転機となったのは、きららの開発でした。耐冷性を確保したまま、コシヒカリの血統を入れることに成功したのです。また、コメは含まれるタンパクが多いと、硬くて粘りが少なくなってしまいますが、このタンパクを抑えるため、道内の農業試験場が90年代から、肥料を少なくする栽培技術を農家に広めてきたことも奏功しました。道内の農試や大学、農業団体でつくる組織を中心に、収穫後の管理技術の開発に力を入れてきたことも大きい。96年に上川管内鷹栖町にコメを乾燥・貯蔵する大型のカントリ-エレベタ-ができました。そこでは、トラック1台ごとに荷台のコメをタンパク値などで自動選別する装置や、脱穀した玄米を色で自動選別する装置など道内独自の技術を実用化しました。加えて、モミのまま選別・保管したり、冬の外気を使って超低温で貯蔵する独自技術もあり、多くは2002年ごろまでに道内約30ヵ所で順次完成したカントリ-エレベ-タ-に導入されました。味に敏感なコメ卸しの方々から「道産米はおいしくなった」と言われるようになったのはこのころからです。今では北海道を手本に、道外でもこれらの技術を入れる動きが出ています。品種改良に加え、栽培技術、収穫後の管理技術の3本柱があったからこそ、高い評価を勝ち得たと言えます。
かわむら・しゅうそう 83年北大大学院農学研究科博士課程修了後、同年4月から同大助手。97年助教授(07年から准教授)。専門は収穫したコメの管理技術など食品加工工学。広島市出身。56歳