細胞侵入 仕組み解明
東大大学院医学系研究科の畠山昌則教授(微生物学、前北大教授)らが、胃がんの原因となるヘリコバクタ-・ピロリ菌が自ら作る発がんタンパク質CagA(キャグエ-)を胃の細胞の中に送り込むメカニズムを、初めて解明した。今後、CagAの侵入を阻止できるようになれば、ピロリ菌除菌とは別の新たな胃がんの予防法につながる成果と期待される。
畠山東大教授ら 胃がん予防に期待
20日発行の米科学誌セル・ポスト・アンド・マイクロ-プで発表した。北大在職時の2007年、畠山教授らは、ピロリ菌が胃がんを起こすメカニズムを分子レベルで解明した。だか゛ピロリ菌がCagAをどのように細胞に入れるかは未解明だった。今回は、ヒトの胃の上皮細胞による試験管内の実験で、この仕組みを突き止めた。畠山教授によると①ピロリ菌が胃の細胞に触れると、細胞表面を覆う細胞膜の表と裏が一時的に入れ替わる②本来は細胞膜の裏側だけに存在する特殊なリン脂質が細胞の表に現れ、CagAと結合③両者の相互作用でCagAが細胞内へと移る-という。胃がんの死者は国内で年間5万人。畠山教授は「発がんタンパク質の侵入を抑える手法は、抗生剤が効かす除菌できない耐性ピロリ菌感染者に対して、胃がん予防の有効な手段になり得る」と話している。
ヘリコバクタ-・ピロリ菌と胃がん:ピロリ筋はらせん状(ヘリコ)の細菌(バクタ-)。口から感染するとされ胃などの粘膜にすみつく。胃炎、胃や十二指腸の潰瘍、胃がんの原因。感染率は中高年ほど高く若年者は低い。国内感染者は6千万人。抗生剤の服用で除菌できる聞かない耐性菌も増えている。畠山教授らが既に解明した、ピロリ菌が胃がんを起こすメカニズムは次の通り。ます゛、胃に感染した菌が発がんタンパク質CagAを胃の上皮細胞に送り込む。次に、CagAが細胞内の別の2種のタンパク質と結合。細胞同士の結合が壊され、異常な細胞増殖が始まり、がん発症に至る。