商機拡大「普及進む省エネ住宅」
ドイツ南部のエアランゲン市では、冬本番を前 に、あちこちの住宅で改築工事が進んでいた。 工事は、断熱材や太陽光パネルの設置が目玉。 暖房用の灯油使用量を大きく削減する目的だ。
光熱費大幅減
「省エネ住宅だと分かれば、借り手がすぐ見つかるんです」。同市の 住宅供給公社ゲボバウのカ-ルハインツ・カンプ社長はこう力説し、 「他社との競争に勝つためにも改築は欠かせない」と続けた。同社の 住宅8千戸のうち、すでに9割は省エネ住宅に生まれ変わった。改築 後は灯油使用量が三分の一に減少し、光熱費の大幅削減が可能に なるという。北海道と同様、欧州は冬の寒さが厳しく、暖房用に灯油 を大量消費する。その際に排出される二酸化炭素(CO2)による温暖 化促進が大問題となり、欧州連合(EU)は2003年、「エネルギ-パ ス」制度を導入した。ドイツで住宅改築が進む背景にも、この制度の 存在がある。エネルギ-パスは、住宅やビルなどで一年間に使用され る一平方メ-トル当たりの灯油使用量を証明書(パス)に明記し、賃貸 や売買の際に提示義務付ける仕組みだ。ドイツは現在、パス取得を新 築住宅に限っているが、09年からは既設住宅も対象になる予定で、 それを見越して工事を施す業者が増えている。
カンプ社長は「一戸当たりの改築費用は平均6万 ユ-ロ(約960万円)もかかる」と明かす。それでも 投資を惜しまないのは、改築によって住宅の価値が 高まり、5割程度の賃貸値上げができるからだ。 しかも、20代~30代を中心に温暖化問題への関心 は極めて高く、入居者からの改築要望も途切れない。「住宅革命」 は、他のEU加盟国でも急ピッチで進んでいる。オランダやデンマ-クな ども、住宅の売買や賃貸に関し、ドイツと同様の仕組みを導入。一方、 イタリアやスペインのバルセロナ市は、新築住宅での太陽光発電パネ ルの設置義務付けに踏み切った。北欧諸国では高断熱・高気密の「無 暖房住宅」が実用化され、普及が進んでいる。
車を共同利用
温暖化対策を軸に、新技術や新サ-ビスが広がっていくのは、住 宅部門に限らない。独ハンブルグ市のレンタルカ-会社グリ-ンウ ィ-ルズは、市民が自動車を共同利用する事業に取り組む。車は すべて小型の低燃費車。これがガソリン消費削減の方法として注 目され、会員2万人を超えた。ビルガ・ホルム社長(43)は「車は温 暖化の主因とされるからこそ、環境対策に取り込まないと商売にな らなくなった」と強調する。EUは5月、風力や太陽光発電など新エネ ルギ-事業に限っても、2013年までに加盟国全体で百二十億ユ- ロ(約一兆九千億円)もの巨費が投資されるとの見通しを公表した。 欧州では、環境対策に消極的な企業には融資しない、という金融 機関も登場。温暖化対策への高い関心を背景に、欧州企業は続々 と「環境」へかじを切っている。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます