森づくりで地域活性化 関 満博(せき・みつひろ=一橋大教授)
2007年夏の参議院選挙以降、地域の問題が急浮上している。 今年こそ「国土を丁寧に使う時代」のスタ-トとなることを期待した い。戦後の日本は荒廃した国土の再建のために植林を進めてきた。 だが、その後、安価な外材が大量に輸入され、林業は衰退していく。 それは山村の人口減少、高齢化を促していった。全国の中山間地 域を眺めると、いずれも人口はかつての三分の一から五分の一に 減り、高齢化率は40%前後に達している。山を保全する担い手も 少なくなり、豪雨の際には土壌流失を起こし、下流に水害をもたらし ている。また漁場を赤土で埋め、沿岸漁業にも大きな被害をもたらし ている。山の問題は国土全体の問題なのである。これまで、このよ うな中山間地域は、山林は山林組合、農産物は農協、加工業等の 産業や人びとの暮らしは町村役場と役割が分断されていた。だが、 それらの問題を統一的に取り扱っていく視点が求められている。
森林組合が加工も
島根県の飯石森林組合が所轄する面積は五百四十九平方㌔、人 口約二万人、林野率は86%を数えている。組合の代表理事の立 石幸氏は、開口一番「われわれの対象は『山』。仮に行政や農協が 引いても、自分たちは絶対に撤退できない。人がいても、いなくても、 管理する責任がある」と切り出した。組合は組合員からの委託を受け て、森林を管理する。だが、近年、二つの大きな変化が生じている。 一つは、1997年に森林組合法が改正され、加工業を営むことが可 能になったこと、もう一つは、林業労働者不足に対して興味深い取り 組みを重ねてきたことであろう。飯石森林組合は製材品、キノコ栽培 などにも取り組んできた。職員は22人、加工場が40人、そして林業 労働者が60人の構成であった。山村に約120人の雇用が創出され ていた。
担い手を確保育成
従来、林業労働者は「半農半林」であり、3月から山に入り12月に は終える。飯石管内では96年には108人を数えていたが、激減が 予想されていた。このような事態に対して、組合は正規の通年雇用、 健保、年金、退職金を用意し、96年から全国募集をかけた。その後、 応募者が増え、39人が新たに加わてきた。この飯石森林組合は07 年、「地域と森づくりプラン」を作成した。「森づくり目標」は「バランス のとれた循環林を造成し、持続可能な状態での木材生産を増大させ る」としていた。また「地域づくり目標」は「地域と森づくりの担い手を 確保育成します。産業の振興と安定の促進を図ります」としていた。 飯石森林組合の取り組みは始まったばかりだが、地域の主要な担い 手として新たな可能性を切り開いているのであった。中山間地域問 題の最大の焦点は「働く場」がないことである。成熟した日本では、 国土を丁寧に使い、より豊かなものとして次の世代に引き継いでい かなくてはならない。08年がそうしたことに踏み出し、新たな知恵を 生み出すスタ-トの年であることを願いたいと思う。
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