木片使って電力自給
バイオマス発電所の前で「化石燃料に頼る時 代は近く終わる」と話す欧州再生可能江ネルギ- センタ-のラウシェルさん、右下は発電の材料 となる木切れ
オ-ストリア東部、ハンガリ-との国境に近い 人口4千人のグッシング町。かつては林業や穀 物栽培のほかに、これと言った産業もなく、同国 で最も貧しい町と言われていた。その辺境の地 が今、「地球温暖化防止の最前線」として、世界から注目されている。 ペ-ダ-・ワダス町長(63)は、「空気がおいしいでしょう?グッシン グでは石油を使わずにエネルギ-を生産し、脱化石燃料を実現しま したからね」と胸を張った。
CO235%減
同町は2001年、木片から電気や温水をつくる「バイオマス発電所」 を世界で初めて実用化。今では町内で必要な年間1億4千万㌔㍗ 時を生産し、全世帯に供給している。出発点は、唯一の財産とも言 える豊富な森林資源の有効活用を探ることだった。同町内に広がる 森林は19平方㌔発電には、北海道にも大量に存在する間伐材や、 製製材業者がごみとして捨てる木切れを使う。火力発電に比べて 二酸化炭素(CO2)の排出量は4割少ない。発電時の余熱で温水 もつくり、8割以上の世帯に供給する。この結果、町のCO2排出量 は1990年比で35%も減少した。経済活動の拡大に伴って、工場 や発電所、車両など温室効果ガスが増加し、その結果、気温が上 昇して壊滅的な気候変動を引き起こす-。この最悪のシナリオを防 ごうと、97年、各国にCO2排出量の削減を求める京都議定書が採 択された。その前年の96年、森林の活用から一歩進め、グッシング 町は、環境問題を意識して、ウイ-ン大の研究者らとともに研究機 関「グッシング欧州再生可能エネルギ-センタ-」を設立した。「スト ップ温暖化」が国際社会の潮流となる前に、この小さな町は「CO2 削減」をキ-ワ-ドに走り始めていた。同センタ-の事業責任者ワル タ-・ラウシェルさん(48)は「石油は有限。自然エネルギ-の時代が 到来すると信じてやってきた」と振り返る。
税収が3倍に
町はこれまでの約10年間、新技術の研究に一千万ユ-ロ (約十六 億円)を投資。うち8割を国や欧州連合(EU)からの補助金、銀行か らの借金でまかなった。一方、この間、温暖化対策関連の企業立地 や売電収入が増え、税収は3倍に。「脱温暖化」の試みが、地域社 会も再生させたのである。地域ぐるみで温暖化防止に取り組む例は、 欧州のあちこちで見られる。スエ-デン南部のベクショ-市(人口五 万人)も、その一つ。同市も96年、「脱化石燃料」を宣言。石油使用 への課税強化を図る一方、廃材を熱源とする暖房技術を開発し、暖 房の石油利用はほぼゼロになった。グッシングやベクショ-には、世 界各地からの視察が続く。暖房や発電の次に来るCO2の削減対象 は自動車。グッシング町は、同じく木片を原料とし、既存のディ-ゼル 車にそのまま使える新しいバイオ燃料を開発した。新燃料の生産技 術は本年から実用化される見通しで、「地球にやさしい理想卿づくり」 (ワダス町長)はまた一歩前進する。
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