増田 俊也 著 「シャトゥーン ヒグマの森 」を読みました。
マイナス40度も珍しくない極寒の北海道・天塩研究林。
そんな土地に立つ小屋に集まった、学者や仲間たち。
そこへ雪の中を徘徊する体重350キロ、飢えて凶暴化した手負いの巨大ヒグマ、“シャトゥーン”ギンコが襲いかかる!
次第に破壊される小屋。
電話も通じない孤立無援の状況下から抜け出すことは出来るのか!?
北海道・天塩は実はHさんの故郷の近く。
天塩研究林は日本最北の森林帯に属し、国内研究林としても最大級の面積を誇っています。
そんな大自然一杯の地で育ったHさんは、小さい頃に「三毛別羆(ヒグマ)事件」と云うのを聞いた事があります。
それは北海道留萌苫前村三毛別六線沢で発生した日本史上最大最悪の熊害(ゆうがい)事件。
大正4年12月、冬眠の時期を逸した一頭の羆が民家を襲い、僅か2日の間に男女7名が死亡、3名の重傷者を出すという凄惨な事件です。
その事件は後に吉村昭の小説「羆嵐」として出版されました。
その事件を彷彿されるような小説です。
実話ではありませんが 、ヒグマの習性や厳冬の北海道の自然環境もよく調べてられていて充分にその恐ろしさが伝わってきます。
特に熊の”執念深さ”が際立って描かれています。
ストーリー展開に常に「スリル」があり、読めば読むほどに次の展開が気になってしまう構成です。
さらに、もう一つ。
野生動物に関わる人間の生き方もテーマとして盛り込まれています。
かなりショッキングな描写もありますが、確実に「面白い!」と思わせる一冊です。
第5回『このミステリーがすごい!』大賞優秀賞受賞作。