山本 兼一 著 「いっしん虎徹」を読みました。
越前で名を上げていた甲冑鍛冶・長曽禰興里(のちの虎徹)には、壮大な夢があった。
自らが鍛え上げた当代随一の兜を一刀のもとに叩き切る刀を鍛える―。
興里は、己を超えるべく、重病の妻を伴い江戸に出た。
鉄と共に生きた伝説の刀鍛冶・虎徹の波乱と葛藤の人生とは・・・。
久しぶりの山本兼一作品です。
一冊目に読んだ「火天の城」 は信長から巨大な安土城築城を命じられた岡部又右衛門と以俊の天下一の棟梁の父子の物語
二冊目の「白鷹伝―戦国秘録」では織田家鷹匠小林家次が伝説の白鷹「からくつわ」を捕らえ心を通わすまでの物語
いずれもその道のプロをしての意地と情熱と創意工夫に圧倒されました。
そして本作は長曽禰興里(おきさと)、後に虎徹と呼ばれる刀鍛冶の一代記です。
虎徹と言えば、
「今宵の虎徹は血に飢えている」という台詞で有名な、
新撰組局長・近藤勇の愛刀としても知られています。
(これには諸説ありますが・・・)
その虎徹の作者である長曽袮興里の情熱が熱い!
己のこしらえし兜を己の刀で断ち割る。
天下一の刀を目指してただひたすらに鉄を打つ。
命を賭けるに値する道を見出だし、ただひたすらと精進する。
刀というものに真っ直ぐに熱い情熱をかたむける姿はまさに感動モノ。
重病の妻との愛情や身内の問題、さらに名刀の強盗事件や中央の権力争いなどを絡ませて、ストーリーも飽きさせません。
技術屋さんにお勧めの一冊です。