この写真を撮った場所は、永久寺というお寺があった場所である。
永久寺は、今から900年前に創建され、奈良では東大寺、興福寺、法隆寺に次ぐ大寺院であった。
規模の大きさと壮麗な伽藍を有することから、「西の日光」とも言われた。
しかし、明治の廃仏毀釈により徹底的に破壊され、遺跡すら残さないほどに、文字通り跡形もなく消失してしまった。
寺の僧侶達は仏教を棄てる証しとして本尊の阿弥陀如来像の破壊を強制されたうえで、還俗させられている。
仏像や絵画など重要文化財とも言える宝物はことごとく略取され、一部は海外にも流れている。
展望台から見る眺めは、ただの農村風景であり、そこに壮麗な伽藍を有する大寺院があったことなど想像もつかない。
明治政府は神仏分離策は出しているが、廃仏毀釈までは政策として出していないとされる。
すると、明治政府の神仏分離策に乗じて寺の破壊活動を行った人達がいたということである。
長い歴史のある大寺院を完全に消滅させるようなひどいことを一体誰がやったのかと思う。
そもそも仏教の普及は、神道の宗家である天皇が仏教を容認したことに始まり、天皇自身も数々の寺を創建している。
奈良時代から明治までの長い間、神仏習合が当たり前であったのだ。
ただ、明治以前から神学者や国学者は日本は神道を尊ぶべきで外来宗教の仏教を廃すべしと唱えており、水戸藩や薩摩藩では既に廃仏毀釈を行っていた。その背景には、大きな寺であればあるほど広大な領地を持ち、独自の権力を有していた仏教界の堕落や驕りもあったかもしれない。
廃仏毀釈により歴史的建造物や国宝級の仏像、絵画の破壊、散逸が進められ、国内に現存する倍以上の歴史的重要物が失われたとされる。
イスラム国が古代遺跡を破壊しても日本人は文句が言えない。
現地の看板を見ても相当大きなお寺だったことがわかる。
展望台に咲いていた藤。