Kuniのウィンディ・シティへの手紙

シカゴ駐在生活を振り返りながら、帰国子女動向、日本の教育、アート、音楽、芸能、社会問題、日常生活等の情報を発信。

駐在員家庭における「日本人学校か現地校か」という永遠の課題

2008-08-20 | シカゴ日本人学校全日校
今日は、ここシカゴ駐在員家族における永遠の課題、「日本人学校全日校か現地校か」というかなり繊細な問題について書いてみる。うちの息子2人の場合のケースなので、さまざまな性格の子供たちがいるだろうから、あくまでも参考として受け取られてほしい。

うちは、上の息子が小学1年生の2月にシカゴに赴任。すでに日本語はそこそこ固まり、日本語の速読もできるようになっていたので、現地校に入れようと思えば入れられたのだが、「急激な変化は子供にとってストレスになるだろう。」との私たちの判断から、迷わずシカゴ日本人学校全日校に編入させた。

私は、日本で英語をこつこつ勉強して、お金を貯めて若い頃留学して、その後仕事も通して英会話や英語の読み書きは楽にできるようになった。まったく英会話ができなかった主人も、20歳過ぎに若くしていった海外勤務で自然に英語力は取得。英語嫌いだった主人が、2年海外勤務しただけで、帰国後TOEICで800点後半をマーク。私をびっくりさせた。私たちは、英語は大きくなってからでも、いつでも勉強すれば取得可能ということが経験上わかっている。しかし、日本語はそういうわけにはいかない。

上の息子は、本当に心底日本語が好きだ。というか、日本語活字中毒なのだ。暇があれば、本を読んでいる。現在、1ヶ月普通の大人が読む本を40冊ペースで読む。新聞の1ページなんて、一瞬で読み込む。小学校のときに、全日校で力を入れている「読書マラソン」を通して、だんだん身についた速読のおかげた。

こちらにきてすぐに入ったリトルリーグで、アメリカ人の友達もできて、英語にもじょじょになじみ、本人も現地校に興味がでてきたので、小学3年生の夏に、私もチャンスとばかり、親子で現地校に見学に行き、ポースクールという現地校に変えることを真剣に考えた。しかし、本人がどうしても全日校で日本語を勉強して、英語も頑張るというので、無理強いはできなかった。

上の息子の速読の力が増したのは、その後の小学4年生のときであった。1年に10万ページの本を読み続けた結果だ。そして、ありとあらゆる歴史の本も読み漁り、あらゆるジャンルを網羅した読書のおかげで、さまざまな知識が彼の血となり、肉となっていった。

そして、現在中学2年で、その培った速読のおかげで、他の人の勉強時間のおそらく3分の1ぐらいの少ない時間で、野球と両立して、テスト勉強などが楽にこなせるようになった。数学の文章題などもすらすら解け、むつかしい問題も答えを見れば、すぐに理解できるという。去年入学した中学部から全日校の勉強内容がかなり濃いため、スポーツと両立するには、この地では塾に行くのがなかなか大変。しかし、中学部の先生たちの日々の熱心なご指導のおかげで、塾に行かなくても、業者の実力テストでは、目標の偏差値に達するようになった。親孝行の息子である。日本語の読書のおかげでもある。

英語に関しては、全日校にいるので、どうしても語彙は少ないが、野球のチームできたえた会話力で、長年やっているアメリカ人家庭教師、アイリーンとは、普通に大人の会話ができるようになった。アイリーンは、息子の成長を見て、涙を流さんばかりに喜んでいる。(しかし、本人いわく、英語はそんなに好きではないらしい。)

現地校は、現地校の素晴らしいプログラムがあると思うし、「せっかくアメリカにいるのだから、現地校に入れないともったいない」と普通思うだろう。しかし、息子があのまま現地校に行っていたら、今のような絶対的な日本語の力はつかなかったろう。長男のきまじめな性格として、日本語と英語を両方できるだけ頑張っただろうが、補習校との兼ね合いで、野球が思い切りできないストレスで、情緒的に不安定になっていたかもしれない。

「せっかくアメリカにいるのに、どうして現地校に入れないの?」という疑問はいつもあり、私たちの背中に常につきまとう、「アメリカに来たからには、現地校に行って、英語を吸収しなければいけない!」そういう強迫観念がある。うちが来た当初、「どうしてお母さんが英語がしゃべれるのに、現地校に行かせないの?」とよく聞かれた。「親が英語ができる=子供も現地校」という安易な考え方。私たちは、さまざまな子供の性格、目標、興味を考えて、悩みに悩んで、日本人学校全日校を続けることを選んだ。全日校に通っているから、いつも日本人だけで固まっていると思われるのも悲しい。息子は、多くの親しいアメリカ人の友達が野球を通してできたし、おそらく日本に帰国してからも努力すれば交流は続くだろう。

そして、全日校に入って、一番の財産は、日本語英語という言語上のことではなく、年齢年齢ごとに日本人として備わらなければならない規律や集団として各自何を優先してやらなければならないかなど、精神的な成長がきちっとできたことだ。つまり、シカゴ日本人学校全日校というのは、日本にもアメリカにもなかなかない素晴らしいこなれた教育プログラムがある学校だということだ。

下の息子にいたっては、日本語と英語と両言語をこなすのは、むつかしいタイプで、小学校1年4月に入学して、1言語にしぼってから、論理的に物事が考えられるようになり、ようやく頭の回転が速く回るようになったような気がする。1年生のとき、懇切丁寧に担任の先生が、一時一句ひらがなの形を時間をかけて指導してくださったし、毎日日本昔話などの読み聞かせを面白く工夫してやっていた。アメリカにいながら、こういう環境があるということがすごい!

しかし、とくに女の子など、両言語を器用にこなせるお子さんにとって、現地校のさまざまな面白いプログラムを経験するのも素晴らしいし、将来の財産となるだろう。私自身も同じ立場なら、絶対現地校を経験したいと思うに違いない。

というわけで、各子供たちの性格を十分把握しながら、慎重に全日校か現地校が選ばれてください。