万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

安倍首相の平昌五輪開会式出席は“危険な賭け”

2018年01月25日 15時03分13秒 | 日本政治
自民党内では反対論が噴出したもの、マスメディアの報道ぶりからしますと、安倍首相の平昌五輪開会式への出席は本決まりの模様です。しかしながら、今日の日韓関係からしますと、首相の出席は、日韓関係を決定的に悪化させるリスクを孕んでいるように思えます。

 米韓同盟の当事国でありながら、韓国の文政権の外交的な軸足は対北融和に置かれていることは、最近の突出した親北政策の推進ぶりからも窺えます。平昌五輪が“南北共同開催”の様相を呈するのも、五輪開催が同国の政策プロセスに組み込まれたからであり、その主たる目的が、中国の路線に沿う形での、北朝鮮問題の“話し合い解決”への誘導であることは疑いなきことです。北朝鮮の核・ミサイルの放棄の実現は二の次である韓国にとりましては、本心では、対日政策として北朝鮮の核保有を望んでいる可能性を指摘することもできます(将来的には自国の核保有を意味するため…)。五輪という華々しい国際舞台で南北融和の既成事実を造り、それを内外にアピールすることで既定路線化することこそ重要なのでしょう。

 ただし、韓国側がこのシナリオを実現するためには、北朝鮮の協力を得ることが必要不可欠です。この条件を満たすためには、同国は、日米に対して敵対関係にある北朝鮮の立場に同調する必要があります。軍事大国の中国が韓国の融和政策を支持しているとしますと、なおさらのことでしょう。国内的にも、韓国国民の不満に応えるべく、日韓慰安婦合意の不履行を表明しておりますので、現時点にあって、文政権が支持率低下に繋がる親日政策に舵を切るとは思えないのです。

昨年のトランプ米大統領の訪韓にあっては、想像を絶する“底意地の悪い”反日接待を見せつけた文政権のことですから、安倍首相の訪韓を手ぐすねを引いて待っているかもしれません。中国や北朝鮮を喜ばせ、日本国を侮辱する絶好のチャンスとして…。反日パフォーマンスは、韓国では、支持率の低下に悩む政権にとりましては回復を約束する万能薬でもあり、北朝鮮に対する文政権の大幅譲歩に対する韓国国民の反発を打ち消す効果も期待できるのです。

一方、このように韓国側の政治状況や思惑を想定いたしますと、安倍首相の平昌五輪開会式の出席は、政治的なリスクに他なりません。何故ならば、“日韓慰安婦合意の履行を強く求める”と意気込んで訪韓しても、韓国側が素直にこの要望に応じる可能性は極めて薄いからです。にべもなく拒絶された上に、冷遇されたのでは、もとより首相出席に反対であった日本国民のみならず、多くの国民がいたく失望することでしょう。安倍首相は自民党の総裁の3選を目指しておりますが、平昌五輪開会式の出席は、支持率の急落をも招きかねない“危険な賭け”となるのではないでしょうか。

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