万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

地下シェルターより核の抑止力では?

2024年01月25日 09時43分13秒 | 日本政治
 東京都は、北朝鮮によるミサイル発射並びに台湾有事に備えるために、地下シェルターの整備を進めるそうです。ミサイル攻撃に対する防御施設ですので、専守防衛の基本方針からしますと、国民の命を守る地下シェルターの建設に対しては、多くの国民が賛同することでしょう。しかしながら、その一方で、国民の命を守るという政府の基本的な役割を考えますと、作業の順番が違っていると思うのです。

 先ずもって、地下シェルターの設置は、他国、あるいは、外部勢力からのミサイル攻撃を受忍する政府の基本姿勢を示唆しています。有事になれば、ミサイルが飛んできますが、戦争なので致し方なく、国民の避難場所として地下シェルターを設置することで対処します、という、政府のどこか諦めたような、あるいは、冷めた心根が伝わってくるのです。地下シェルターを造るのだから、これで我慢して、という・・・。

 同地下シェルターの設置を報じる記事では、ウクライナやガザ地区にも地下シェルターが設置されている点を強調し、あたかも国民の命を守るための重要施設のように開設しています。しかしながら、地下シェルターの設置より先に政府ができることがあるはずです。それは、ミサイル攻撃を受けない、あるいは、戦争に巻き込まれないための努力です。こちらの方が、シェルター建設よりも、日本国民にとりましては何倍も何十倍も重要であり、必要としていることなのです(そもそも都心部の住民を全て収容できるシェルターを建設することは、不可能であり、一部の人々のみの避難所になるか、もしくは、圧死などの大混乱が予想される・・・)。

 戦争回避が最重要課題であるならば、合理的に判断すれば、すべきことは決まっています。それは、現時点で可能な手段で言えば、昨日の記事で指摘したように、抑止力を強化するための核兵器の保有・配備をおいて他にありません。将来的には、指向性エネルギー兵器等のミサイル迎撃を確実に実行できる先端兵器となりましょう。ウクライナもガザ地区も、NPTの拘束もあって、核兵器を保有もしていなければ、配備もされていません。ブダペスト覚書による核放棄がロシアの軍事的介入を招いた要因とされるように、ウクライナは、核の抑止力を持たない状態にありました。また、核保有国であるイスラエルが、非核地帯であるガザ地区に対して殲滅作戦を実行し得ることは周知の事実です。東京都の地下シェルターー建設について、喜々として国民の安全を強調する人々は、日本国が、ウクライナやガザ地区のような惨状となることを想定しているのでしょうか。

 安全保障上の危機が目前に迫りながら、NPT条約を遵守するとしますと、座して死を待つようなものであり、非合理・不条理この上ありません。たとえ、同条約を遵守し、中国等の核保有国が不使用に徹したとしても、通常兵器による戦争も凄惨を極めます。ウクライナのようにだらだらと戦争状態が長期化し、その間、自国民の犠牲と国土の破壊が続いていくのですから。しかも、通常兵器に限定した闘いで日本国が有利となった場合には、核保有国は、容赦なく核ミサイルを日本国に向けて発射することでしょう(戦局は、核兵器の使用によって簡単にひっくり返されてしまう・・・)。

 日本国は唯一の被爆国ですので、核保有には抵抗感のある国民も少なくありません。しかしながら、危機に遭ってこそ、合理性に徹するべきです。先の戦争では、世界権力によって合理的判断が歪められ、戦争に巻き込まれることとなりましたが、二度と同じ誤りを繰り返してはならないと思うのです。
 


この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 戦争回避兵器の保有・配備を | トップ | 地下シェルター設置の重大問題 »
最新の画像もっと見る

日本政治」カテゴリの最新記事