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OH! ワンダフル神戸(第2話)

2015-12-07 16:00:00 | インポート

テーマ曲 https://www.youtube.com/watch?v=8bMRXassblw

 

 

「はい、豊田商事でございます。

あっ〇〇様ですか、いつもお世話になっております。」

 

「おい、××君か?例の商品は一体どうなってるんだ。

納品予定は一昨日だろうが!」

 

「△△商会さん。請求書がまだ来ないけどお金要らないのかい?」

 

年末を控えて朝から社内のあちこちで慌ただしい会話が飛び交っている。

 

八木の勤める会社は工具類を主に扱う小さな商社である。

金の地金を扱っているのではない。

文字にすると少し紛らわしいのだがあちらは「とよだ」でこちらは「とよた」。

 

おそらく社長の本田が世界最大の自動車会社の関連企業と思われるだろうと

つけた社名なのだが丸っきり関係はないし業績にも反映されてはいない。

社員10名でバラック2階建ての規模ではどこの町にもある

工具屋、金物店と表現した方が正しい気がする規模のところだ。

 

掻き入れ時の年末でも八木個人は暇を持て余している。

 

年功序列だけで中間管理職の課長になった八木には話を持っていくと

判断や処理が遅くなるのでいつの間にか自然と平社員と社長で直に業務連絡が

頻繁に行われるようになっているからだ。

 

もっとも数年前からのIT化で会社からパソコンを与えられてはいるものの、

たまのメールとネットサーフィンくらいしかすることがない。

厳密にはそれくらいしか出来ないのだが。

 

周囲もそれが判っているくせに係長の松田は腹いせなのか報告や相談は

エクセルシートやキャドデータなんぞで持ち込む意地の悪さなのである。

 

下手に手を入れて編集しようなんてすると余計におかしくなったり、

元にも戻せなくなるので殆ど彼に持ち込まれる書類はノーチェックとなる。

結果、八木がいてもいなくても同じで上下から完全スルーパス状態だ。

ある意味その精度は全盛時の中田英俊クラスでも到底足元にも及ぶまい。

決定率はほぼ100パーセントなのだから。

 

 mg_8472.jpg

 

今日も朝から小畑からの指令、

神戸でのG最高会議の場所をどうするかで八木の頭は一杯だ。

 

神戸は関西では大阪に次ぐ大都市だが案外こじんまりとした街で、

そのくせ大阪みたいにごちゃごちゃした猥雑さもなく

異国情緒のある独特の文化を持つところである。

 

食では和洋中なんでも揃い、特に肉は世界の神戸ビーフが有名だろう。

知っている者は知っている当たり前の話だが但馬牛を種牛とする牛肉は

実のところ例えば近江牛や松阪牛なんかも元を正せば同じ物なのだ。

ズワイ蟹の松葉ガニ、越前ガニみたいな物だな。

 

また元町を中心とする一帯は規模こそ小さいながらも横浜中華街と並び称される

南京町には中華料理の名店が並ぶ。

 

少し北に足を延ばせばこれも全国有数の温泉地、有馬が控えており

関西の奥座敷としてトップクラスの老舗旅館がズラリと揃う。

 

なんて考えながら一体彼らはどういうルートで神戸入りするのかを

全く知らないのに気がついた。

 

神戸は非常に利便性も良く、陸なら新幹線、空なら神戸空港、

また当然海からは神戸港がある。

また一旦京都や大阪などの近郊からは在来線、私鉄は阪急、阪神、神戸電鉄、

車なら阪神高速、中国自動車道、山陽自動車道もあり

可能性だけなら何でもアリという状態である。

 

これは困った。

小畑からは一方的に連絡があるだけでその都度こちらから聞ける立場でもない。

いや待てよ、ひょっとすれば限られた少ない条件、情報というのが

Gの構成員としての能力を問われているのではないのか。

 

だがこれも事前に気がついて良かった。

そこに着眼すると案外神戸でも場所自体は限定できそうだ。

 

答えはズバリ「三宮」。

 

一番遠い空港からでもポートライナーで15分、新幹線の新神戸から地下鉄で5分、

阪神高速からも5分、在来線、私鉄ならそこ自体に駅があるではないか。

 

幸いなことにまた神戸で一番の繁華街でホテル、レストランから小さな飲食店まで

一同に揃うのだからまず間違いはないだろう。

 

三宮周辺とある程度の限定が出来てホッとしたのもつかの間、

肝心のGサミット会場に相応しい場所とはどういう所にすれば良いのか?

 

単に豪華な接待というなら料亭のお座敷やステーキハウスの個室だろうか。

費用的には幸いある程度の貯金もあるので無理すれば何とかなるだろう。

 

だが待てよ、それではオリジナリティさが今一欠けるよなあ。

それよりも代官や小畑が女性だったりベジタリアンの場合も考えられる。

そんなある時また小畑からのメールが来たのである。

 

「Mr.Kへ

場所は決まったかね?

大寒様も私も超多忙でその日時に神戸で瞬間しか会うしかないチャンスはない。

貴重な時間のサミットの成功は君のセッティング次第に掛かっている。

またそれ故サミット終了後は各自現地解散とする。」

 

思わず返信し場所は三宮と書き込むと有難いことに再度のメールが。

 

「三宮でOKだ。但し服装はラフなドレスコードとするので考慮の事。

ゆっくりとリラックスして会談の出来る場所にするように。

待ち合わせは現地直接でも別途でもKの指示に従う。」となっていた。

 

性別までは流石に聞けなかったが堅苦しいセッティングはNGのようだ。

聞いてなければスーツにネクタイで行くところだった。

店も料亭にしなくて良かったぜ。

それなら経済的にも助かるってもんだ。

といって学生コンパやサラリーマンの忘年会みたいな場所では

騒がしくて打ち首覚悟の自殺行為だわなぁ。

 

八木にとって三宮は青春時代に過ごした思い出深い街だった。

当時付き合っていた彼女が神戸の娘で暇を見つけては連日のように通い、

三宮界隈もデートコースの定番だった記憶が懐かしく蘇る。

 

だが20年前あの阪神大震災で全てが大きく変わってしまった。

多くの知人、友人が被災し、メモリアルな場所の数々も壊れて無くなってからは

自然と足が遠のき最近はたまに車で通過する程度で駅周辺の界隈については

具体的に全くといっても良いほど知らないのであった。

 

ぐる〇びとか食べ〇グとかネット情報は幾らでも手に入る時代だが、

逆にそういう時代だからこそ参考にしたとしても過信は禁物、

ましてやこれを鵜呑みにするようではG構成員としては失格なのだ。

 

よっしゃ~!久々に直接三宮に出かけてこの目で調査してくるとするか。

シンプル イズ ベスト、現地現物が一番間違いない方法じゃないの。

 

ひょっとしてひょっとするアバンチュールもあるかも、ふふふ・・・いっひっひ。

そう思うと居ても立っても溜まらず定時の時報と同時に夜の三宮に繰り出して

いったのであった。

とは言え決してG構成員としての使命は忘れるものではない。

 

「隠密同心 心得之條 我が命我がものと思わず 武門之儀 あくまで陰にて

己の器量伏し 御下命 如何にても果たすべし 尚 死して屍拾う者なし

死して屍拾う者無し」

 

(まだ完結できそうにない・・・えらいこっちゃ。)

 

 

〇ご参考

ここまでお付き合いいただいた真摯な方には申し訳ないのでご紹介。

実は神戸については私の拙文を読むより少しの時間で実際の魅力はこれで一目瞭然なのである。

https://www.youtube.com/watch?v=xbhSRxf-5CU