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さあいざ本番スタート!(第4話)

2015-12-13 12:34:00 | インポート

​景気づけのテーマ曲

https://www.youtube.com/watch?v=B6QyxXq1PGA

 

この時期18時を過ぎると夜の帳が下りて辺りはもうすっかり真っ暗だ。

だが三宮駅に近づくにつれ眩くなるくらいのネオンはまるで不夜城だな。

なんて落ち着いて風景を眺める余裕はなく八木の心は地団駄踏むような気分だった。

「ほれ、特急やろもっとちゃっちゃと早う行かんかい。」

 

約束の時刻の15分前に駅に着いたものの直前の車中で大寒からの

「もう到着しています。小畑さんも既に合流して一緒です。」のメールがあったからだ。

 

「もうちょっと早く来るべきやったか。参ったぜ。」

この2日前に大寒、小畑より最後の連絡があった際、

携帯番号とメールアドレスの連絡を済ませていたのだった。

 

小走りで待ち合わせの場所、駅東改札を出てもそれらしい人物は見当たらない。

流石の主要駅で行き交う者は多くても一人一人を必死でチェックするしかない。

 

最高幹部とおぼしきお方を見過ごすなんて許されることではないが、

まさか拾い集めたようなボロボロのスポーツ新聞と週刊誌何冊かを持ってる

ジャージ姿のホームレス風のあの爺さんがそうなのか・・・?

それにしたって2名のはず・・・。

 

こりゃいかん!そうこうしてる内にもう数分過ぎてしまった。

最後の手段としては教えてもらっていた携帯番号に掛けるしかない。

 

店の予約まで済ませて安心したからじゃないだろうが、

最終連絡で指定した待ち合わせ場所「三宮駅改札東出口」を「西出口」と

書いてしまってたらしい。

東西方向に長く数100メートルある駅の真逆で待ってくれているのだった。

 

ターミナル外に廻ってお互い東西から合流してもらうよう案内をして、

速足で進むがもう必死のパッチ、やってもうたのシュン太郎。

 

すると真正面からゆっくりとこちらに向かってくる3名の人影が。

「ん?」

だが近づくにつれあちらは八木を認識している雰囲気に間違いない。

 

男性2人と女性1人。

八木と同世代くらいの男の一人が手を差し出し「K君かね。小畑だ。こちらは大寒様とご夫人だ。」

場所を間違えた非礼と最高幹部を目の前にして握手する手も震えてくる。

 

小柄で痩せた小畑は事前通告通りラフな服装で黒の革ジャン。

恰幅の良い大寒は少し年配に見えるがこちらも遠方から来たとも思えぬ軽装だった。

やはりドレスコードは告知通り、セーターに杉織のジャケットにしといて良かった。

 

奥方と紹介された女性はスラリとした美人でシックなコートを羽織っているが

どことなく品のある貴婦人だった。

本当は情婦、愛人かも知れないがそんなことはどうでもいい、

とにかく失礼があっては大変だ。

 

実のところそれぞれと挨拶をしながらも八木の心中は穏やかではない。

「もう今日はこれ以上の失態は防がねばならないぞ。

だが予約は俺を入れて3名分しかしていない、幸い店は4名でも行けそうだぜ。」

 

すると大寒が「Kさんへのご紹介だけでコレは先に帰すので心配は無用。

店には3人で向かうとしましょう。」

流石の大幹部、何でも御見通しのようだ。

 

駅から徒歩5分の場所までは駅前旅館の出迎えさながら揉み手でご案内。

そこは北野坂を少し上った雑居ビルの地下1階「K.S.」という居酒屋であった。

店の名前が「神戸サミット」をもじったようなのも気に入った理由の一つである。

 

当然彼らに来ていただくのに普通の居酒屋ではない。

座席は掘りごたつ式のカウンターだけしかなく目一杯入れても10数名の小さな店ながら、

割烹系で創作アラカルトとも言うべきなのか和洋中、肉、魚、野菜、

何でも揃う上、〆の茶漬け、ラーメンでもアリの品ぞろえ。

 

価格も良心的ながら安っぽさもなく上品でBGMもない間接照明が

落ち着いた雰囲気はデートにも向きそうだ。

 

そのカウンターの一番奥一席だけが膨らんだ形状になっていて

4人が向かって歓談出来るようになっているのだ。

 

大寒、小畑もまずまず気にってくれたようでちょっぴりホッとする。

取りあえずは刺身の盛り合わせで乾杯~!

 

それにしてもこの店を教えてもらってて良かった~ぁ。

 

 

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下見に来てパチンコ大勝ちした夜のこと。

ヘトヘトになり食欲もわかず駅に向かって歩いていた時、二次会を忘れているのに気がついた。

 

最初の場所で寛げればそれはそれで良し、だがもし腹一杯になり早々に河岸を変えるとか

アルコール類を飲まない場合も想定すべきじゃないかって。

それなら気の利いたバー、お洒落なカフェも探しておく必要があるだろうと。

 

その雑居ビルを通りすがりに漠然と眺めてると5Fに「BAR R50」という看板が目についた。

意味は判らんが50歳未満お断りだったら面白いじゃないかと入ってみようかと気になった。

ハズレだったとしてもまあ構わない程度の軽い気持ちだったしな。

 

08.jpg 

客もまだ誰も来ていない。

静かで落ち着いた雰囲気だが狭くて何の変哲もないどこにでもあるカウンターバーにバーテンが一人。

 

山崎のロックとミックスナッツを注文する。

だが座ってしばらくしてからあることに気づいて驚いた。

 

(イメージ動画)

https://www.youtube.com/watch?v=teVMLsHkV6E

 

 

バーテンはパチンコ屋で横に座った女性だったのだ。

 

もらった名刺には「鈴木 五十鈴」と書かれてある、本名だろうか。

さっきは開店前の時間調整だったようであの時の礼を伝え、

彼女にも酒を勧めて奇遇な再会にグラスを合わせる。

 

オーナーは別にいるものの店に顔を出すことは滅多になく雇われ店長らしい。

世間話などから始めて徐々にクダケタ話題などをして打ち解けた後に

大切なお客さんを招待するのに肩ひじ張らない良い店ないかと

聞いた時にもし良かったらと教えてくれたのが「K.S.」だったのだ。

無論組織Gについては一切話はしていない。

 

知る人ぞの店らしいが狭いところなので事前に予約しておく方が良いと

付け加えてくれたのもやはり優しい女だよな。

 

 

情報が氾濫する今の時代、グルメ情報サイトも山のようにあるが、

それより地元の知り合いからの口コミにまず間違いはなかろうと八木は思う。

 

 

「ひょっとしてこの店のR50ってのは五十鈴さんの名前からの由来かね?」

これについては上手にはぐらかされて結局判らずじまいだった。

 

次に頼んだ余市のロックと一緒に出されたチョコレートがまた美味しい。

口に入れた途端に溶け出すような感覚はコンビニチョコとは大違い。

これを飲み干して今日は帰るとしよう。

 

店を出てからポケット探ると例のライターが。

「返すのをうっかりしていたけど、まあ良いか。

今日という日が最後でもあるまいし結果的に当初の目的も果たせたことだし

今夜は大満足の一日でメデタシとするか。」

一人ほくそ笑む八木だった。

 

単に結果オーライの成り行き任せな性格に偶然ラッキーが重なっただけなのかも知れないのだが。

 

 

(いよいよ次回最終回)