三度目に歩いたバイパス沿いの騒々しい道。この側道を過ぎると、むかしからある田んぼ道に出る。少しの辛抱だ。
それが良かった。道の脇にある農園で、ご夫婦が働いていた。珍しい実がついている草(?)を見つけた。
奥さんがニコニコしてこちらを向いたので、「アレはヒマですか。ひまし油をとっていた」と訊いてみた。
奥さんはわざわざ近くまできてじっと見ていたが、
「ハメが出まっしゃろ。アレはハメが嫌うゆうてもらって植えたんですわ。名前はよう知りませんが、育って増えましてん」といってご主人を振り返った。
「うん、名前はなんですかね」
「ハメが出ますか」
「ここらでよう見ますよ」
「ヘッ、今もいますか」わたしは迂闊に田んぼの畦を歩くのが怖くなった。
むかし聞いたことがある、ゆったりした懐かしい言葉だった。ハメが出まっしゃろ。ってさらっと言われると。
ハメか。マムシか。それはマジか。
どこか近くでマムシ注意の立て札があったけれど、最近、あたりで見なくなった。住宅地が増えて蛇も山に行ったのだろうか。
あまり怖い生き物はないが、蛇だけは別、ぞっとする。形がいや、目つきが嫌、舌を出す、鱗まであって、その上跳びかかって噛むらしい。
調べてみると「ハメ」は古来からある言葉だが、今では方言として残っているそうだ。
どこの方言でも、独特の味わいがある。転勤族だったころは、耳を澄まして聞いたものだ。
ちょっと自慢だけれど、難しいといわれる鹿児島弁と東北弁は聞き分けられるし少しは話すことが出来る。大阪を離れて永住するなら、故郷の四国を除くと、鹿児島か東北に住みたいと今でも思う。
今日もいいお天気だ。空気も爽やか。
「ヤブミョウガ」
ちょっとアングルが悪かった。ミョウガにそっくりな葉の上に白いかわいらしい花が咲く。
藪に咲くミョウガに似た花、ということで所によっては群生していたりする。
「ヒマ」
ハメ(マムシ)が嫌うのだそうだ。小さい黄色いじベガ花火のように飛び出している。
よく見るとそれが雄花で、雌花は小さな棘についた玉がある。昔ひまし油(下剤)をとったそうだ。
可愛いなぁ、アゲハチョウがストローを伸ばして夢中で蜜を吸っている。
ヒガンバナは球根に毒があるというが花の蜜はおいしいのだろう。