小さな「ほんとう」を積み重ねて、大きな「うそ」を吐く。
それが、映画というもの―誰のことばなのかは知らんが、いい得て妙というか、映画とはなにかと問われた場合、こう答えるのが正解のような気がする。
リアリティを目指そうが、ツクリモノはツクリモノ。
それでも創作者は「ほんとうに起こった出来事」のように映画を創る。
(まぁこれは、映画にかぎった話ではないが)
実録モノと呼ばれる映画ジャンルがある。
ヤクザ映画が生んだ業界用語「の、ようなもの」であったが、現代では「実際に起こった話をもとに、リアリズムを重視して創った作品」を指すようになり、自分はこのジャンルが大好物だ。
前述したように「そうでない」映画でさえ、小さな「ほんとう」を積み重ねる努力を忘れない。
だから実録モノは、その3倍くらいの努力が必要なのだと思われ。
脚本家や監督はもちろん、俳優のリサーチがものをいうジャンル―そういえるかもしれない。
今宵は、そんな映画の10傑を選出してみた。
(1)『グッドフェローズ』(90)
友人コッポラの『ゴッドファーザー』シリーズ(72~90)に敬意を表しつつ、「ほんとうのギャングたち」を描いてみせたスコセッシの「アンチ・ゴッドファーザー」の物語。
主人公の妻はいう、「あたしの旦那は、ブルーカラーなのよ」と。
なるほど、と思った。
(2)『ヘンリー』(86)
数百人を殺害したと告白した、シリアル・キラーの物語。
「ヘンリー自身による殺害」が証明されたのは数件に過ぎず、「その数」がほんとうかどうかは分からない・・・のだが、「この子は殺されないだろう」と観客のほとんどが予想していたヒロインまで「あっさり」殺される―その展開が、ひじょうにリアルだと感じた。
(3)『裸の島』(60…トップ画像)
自給自足の家族を描く、新藤兼人の代表作。
実在のモデルが居るわけではないが、徹底したリアリズム描写で「ほんとうに居るのだろうな」と思わせてくれる。
(4)『キャプテン・フィリップス』(2013)
ソマリア海賊の人質となったフィリップス船長の物語。
演出云々ではなく、トム・ハンクスの演技がこの映画のリアリズムを支えている。
(5)『仁義なき戦い』(73)
飯干晃一の原作小説も熱いが、その3倍くらいの熱さで俳優たちが熱演、荒々しい手持ちカメラの効果も手伝って、当時の広島ヤクザを知らないものが観ても「嘘じゃない」迫力にやられる。
(6)『黒い雨』(89)
日記形式を取る井伏鱒二の原作が、すでに異色の記録文学のようなもの。
イマヘイは演出的遊びを極力避け、原作に忠実に、黒い雨を浴びたヒロインを見つめ続ける。
(7)『誰も知らない』(2004)
80年代に起こった「子どもの置き去り事件」を映画化。
実際には「もっと悲惨だった」末っ子の死をソフトには描いているものの、日常描写は「たぶん、こんな風だったのだろうな」と思わせてくれる。
(8)『アルゴ』(2012)
「映画の国」米国ならではの実話を、映画愛に溢れた演出で魅せるオスカー受賞作。
いろいろ脚色しているとは思うが、電話を取るまでのドキドキ感はリアリティに溢れていて素晴らしい。
(9)『戦艦ポチョムキン』(25)
1905年に起きた「戦艦ポチョムキンの反乱」を、凝った映像編集で表現する。
映画「技術史」的に重要な作品だが、物語も面白い。
(10)『ゾディアック』(2006)
全米を震撼させたシリアル・キラーの事件を、刑事とライターの視点から捉え直す。
なにかに取り憑かれた男の哀しき性はリアリティに溢れ、いろいろ考えさせられる。
※『グッドフェローズ』より、ジョー・ペシのキレ芸を
「昔の靴磨きに戻してやるぜ」
「もう靴は磨かねぇんだよ」
このやりとりで、ひとが死ぬ。
ギャングの世界はこんなものだよと、スコセッシはいっているのだ。
…………………………………………
本館『「はったり」で、いこうぜ!!』
前ブログのコラムを完全保存『macky’s hole』
…………………………………………
明日のコラムは・・・
『黄金週間特別企画(10)りっち』
それが、映画というもの―誰のことばなのかは知らんが、いい得て妙というか、映画とはなにかと問われた場合、こう答えるのが正解のような気がする。
リアリティを目指そうが、ツクリモノはツクリモノ。
それでも創作者は「ほんとうに起こった出来事」のように映画を創る。
(まぁこれは、映画にかぎった話ではないが)
実録モノと呼ばれる映画ジャンルがある。
ヤクザ映画が生んだ業界用語「の、ようなもの」であったが、現代では「実際に起こった話をもとに、リアリズムを重視して創った作品」を指すようになり、自分はこのジャンルが大好物だ。
前述したように「そうでない」映画でさえ、小さな「ほんとう」を積み重ねる努力を忘れない。
だから実録モノは、その3倍くらいの努力が必要なのだと思われ。
脚本家や監督はもちろん、俳優のリサーチがものをいうジャンル―そういえるかもしれない。
今宵は、そんな映画の10傑を選出してみた。
(1)『グッドフェローズ』(90)
友人コッポラの『ゴッドファーザー』シリーズ(72~90)に敬意を表しつつ、「ほんとうのギャングたち」を描いてみせたスコセッシの「アンチ・ゴッドファーザー」の物語。
主人公の妻はいう、「あたしの旦那は、ブルーカラーなのよ」と。
なるほど、と思った。
(2)『ヘンリー』(86)
数百人を殺害したと告白した、シリアル・キラーの物語。
「ヘンリー自身による殺害」が証明されたのは数件に過ぎず、「その数」がほんとうかどうかは分からない・・・のだが、「この子は殺されないだろう」と観客のほとんどが予想していたヒロインまで「あっさり」殺される―その展開が、ひじょうにリアルだと感じた。
(3)『裸の島』(60…トップ画像)
自給自足の家族を描く、新藤兼人の代表作。
実在のモデルが居るわけではないが、徹底したリアリズム描写で「ほんとうに居るのだろうな」と思わせてくれる。
(4)『キャプテン・フィリップス』(2013)
ソマリア海賊の人質となったフィリップス船長の物語。
演出云々ではなく、トム・ハンクスの演技がこの映画のリアリズムを支えている。
(5)『仁義なき戦い』(73)
飯干晃一の原作小説も熱いが、その3倍くらいの熱さで俳優たちが熱演、荒々しい手持ちカメラの効果も手伝って、当時の広島ヤクザを知らないものが観ても「嘘じゃない」迫力にやられる。
(6)『黒い雨』(89)
日記形式を取る井伏鱒二の原作が、すでに異色の記録文学のようなもの。
イマヘイは演出的遊びを極力避け、原作に忠実に、黒い雨を浴びたヒロインを見つめ続ける。
(7)『誰も知らない』(2004)
80年代に起こった「子どもの置き去り事件」を映画化。
実際には「もっと悲惨だった」末っ子の死をソフトには描いているものの、日常描写は「たぶん、こんな風だったのだろうな」と思わせてくれる。
(8)『アルゴ』(2012)
「映画の国」米国ならではの実話を、映画愛に溢れた演出で魅せるオスカー受賞作。
いろいろ脚色しているとは思うが、電話を取るまでのドキドキ感はリアリティに溢れていて素晴らしい。
(9)『戦艦ポチョムキン』(25)
1905年に起きた「戦艦ポチョムキンの反乱」を、凝った映像編集で表現する。
映画「技術史」的に重要な作品だが、物語も面白い。
(10)『ゾディアック』(2006)
全米を震撼させたシリアル・キラーの事件を、刑事とライターの視点から捉え直す。
なにかに取り憑かれた男の哀しき性はリアリティに溢れ、いろいろ考えさせられる。
※『グッドフェローズ』より、ジョー・ペシのキレ芸を
「昔の靴磨きに戻してやるぜ」
「もう靴は磨かねぇんだよ」
このやりとりで、ひとが死ぬ。
ギャングの世界はこんなものだよと、スコセッシはいっているのだ。
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『黄金週間特別企画(10)りっち』